GTD の創始者、David Allen のプロフィール

hourglass.jpg Wired Manazine に GTD の創始者 David Allen の詳しい来歴、GTD の簡単な要約と、現代のナレッジ・ワーカーにとっての重要性をまとめた見事な記事が載っていました。

David が若い頃にヘロインの常用をしたり、精神的に不安定になって精神病院に短期間入院したこと。彼がその後 MSIA という新興宗教に入信し、いまもその会士であることなど、GTD ファンにとっては意外な David の私生活の来歴などが、意地悪にではなく、ちゃんとジャーナリスティックにまとめてあります。

43folders のフォーラムなどには一部「こうした新興宗教の人を信じられるのか?」という疑念の声もあるそうですが、David は自分の信条を隠すつもりはないものの、自分の教えている GTD のメソッドとは区別してほしいと説明しているそうです。「マリオット家はモルモン教を支持しているけど、だからといって彼らのホテルに 泊まらない、なんて人はいないだろう?」

記事にも詳しく書かれている通り、70年代から80年代にかけては、ニューエイジ的なセミナーにビジネスマンが送り込まれて訓練を受けるなどと言うのは、ありふれた話でした。私も子供のころ「ダイアネティクスで心の汚れを一掃しよう」という L. Ron Hubbard の広告を繰り返しみて、これは何だろうかと思っていたものです。後に、トム・クルーズも入信することになるサイエントロジーの自助努力本のことです。

David Allen も、そうした流れから企業コンサルタントの道を歩み、後に GTD として知られるメソッドを少しずつ作り上げていったことが記事には詳細に書かれています。

特に面白かったのは、なぜ GTD が現在のナレッジワーカーや、いわゆる「ライフハッカー」たちに受け入れられたのかという下りです。

The life-hackers like it because it stimulates their ingenuity. They have optimized versions for the iPhone, for Entourage, and for sets of manila folders. Once self-management has been broken down into a set of routines, it can be implemented in any number of high tech or low tech systems.

ライフハッカーたちが GTD を好むのは、それが彼ら自身の器用さに刺激を与えるからだ。彼らは iPhone であれ、Entourage であれ、個別フォルダーであっても、自分用に改良して最適化したものをつかっている。自己管理術がルーチンに解体されたあとは、それはどのようなハイテク・ローテクなシステムにでも実装することができるのだ。 ここでいう自己管理術は「価値観」から始める「7つの習慣」のことを意識して書かれています。つまり GTD は、こうした一種の哲学的な自己啓発本の教えを、一連のフローチャートに置き換えることで多くの人に自由な解釈を許しつつ広まったというわけです。

見事な論考だと思いますし、7つの習慣が GTD と対置されているのはおそらく当たっているいるのでしょう。でも私は、この二つは理論と実践の関係にあると思いますので、 同時に別々の方法で私たちの人生を豊かにしてくれるものだと思っています。

David の書斎には2分の砂時計があるそうです。中世には死を暗示していたそれは、今は新世紀の仕事術の旗印になっていると記事は結んでいます。

私も机に砂時計を置いています。そして David が若い頃に道を踏み外してくれていたおかげで今の私たちはなんて運がよかったのだろうかと、驚きをもってこの記事を読みました。

近いうちに日本語訳されるはずですので、ぜひご覧下さい。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。