セミプロブロガーの憂鬱:#06 マネタイズはゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと

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「セミプロ」と名乗るからには、私はブログを仕事として扱っています。もちろんそこには収入も含まれます。

それは書くことがなにより楽しいという一面と、読者に面白い価値を届けたいというもう一面とが結びつく場所で、さまざまな手応えを感じる反面、落とし穴も数多く存在します。

収入になることが必ずしも自分やブログのためにならなかったり、あるいは逆に読者のためにならないことがあるからです。

今回は悩みがちなブログのマネタイズについて、簡単にまとめておこうと思います。### パッシブな収入

ブログには大きくわけてパッシブな収入源とアクティブな収入減があります。

ブログにおけるパッシブな収入とは、たとえば AdSense 広告による収入のように、書き手が追加で労力を投じなくても得られるものです。

通常は「パッシブ」というと本の印税なども含まれますが、本は書くのに多大な労力がかかりますし、放っておいても増刷がかかるようなことは稀ですので、ここでは含めません。

パッシブな収入のよいところはもちろん手間がかからないところです。ブログのアクセス数にある程度比例しますのでやる気にもつながるという面もあります。

一方で、収入を増やそうとするとどうしても PV ばかりにとらわれてしまいますので「とにかく記事を増やせばいい」「とにかく話題にとびのればいい」という流れに陥りやすくなります。

「プロブロガー」という言葉は、こうした広告収入だけで暮らしている人というイメージを喚起しますけれども、そうしたブロガーは少ないのが現状です。

アクティブな収入

ブログを通して得られる収入の二番目に、本を執筆する、イベント登壇、記事執筆、アプリや製品の開発といったものもあります。

これらは書き手がブログを書くことに追加で作業をしなければいけませんので、それだけ苦しいことは確かなのですが、実行すること自体が一つのキャリアとなるというメリットもあります。

誰かに自分のブログを紹介する際に、本などのように人に渡すことができるものがあると話が早いものです。

しかし一方のデメリットとして、本当に自分のブログの読者につながる仕事ができることは稀で、注意深く選ばないといけないという側面もあります。

たとえば Evernote やモレスキンについてブログの記事にしていて、その結果として「Evernoteオールインワンガイド 」や「モレスキン本 」のようなプロジェクトに参加させていただけたのはとても幸せなことでした。

しかしそのかげで、いくつかの執筆の依頼、取材などを断らせていただいているものもあります。引き受ければもちろん何かの仕事になるのですが、ブログの方向性とアライメントがとれていない場合は引き受けるとおかしなことになりかねません。

ブログを続けていて、ある程度の筆力があればこうした依頼などが舞い込んでくることでしょう。しかし本当にそれを引き受けることでブログが前進するかはシビアに考えないといけません。

直接課金の誘惑

そして最近よく、メルマガは是か非か、電子書籍はどうかといったような話題を耳にすることがあります。たいていこの手の論争は肝心の「中身」についての考察が抜けているために本質の周囲をぐるぐると回っていることがあります。

同じことをしていても有料メルマガで成功できる人もいれば、まったく誰も呼んでくれない場合があるのは、書き手と提供するコンテンツがそのモデルと合致しているかという、実に個々のケースに依存した問題なので、一口にメルマガなら、電子書籍ならという話にならないわけです。

しかし一ついえるのは、これらがどれも読者を直接課金しようという方法である点で、これにはとても注意深くなる必要があります。

自分のコンテンツに自信がある人は、こうした直接課金の道も、利益のための有料セミナーなどといった道もあります。それは悪いことではありませんし、それが合っている書き手もいます。しかしそれが一方の読者にコンテンツを提供し、一方には提供しないという印象をあたえてしまっては読者を遠ざけることになりかねませんので、こうなることは避けたいところです。

ゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと

時間があまりない、副業としてブログを書いている人はこれらをどのように組み合わせればよいのでしょうか?

これはどんなブログを運営しているかと直結するので、ただ一つの答えはありません。90% 近くパッシブな収入で固める方法もあれば、さまざまな仕事を組み合わせることで読者にとって「収入源がわからない」という状態にすることも可能です。

個人的にはこの後者こそが目指していて楽しいものです。ブログそのものと収入源とを意識的にずらしてゆくことで、人間関係も広がりますし、さまざまな仕事の可能性が開きますし、それがブログ本体にも記事の活力となって戻ってくるからです。

いずれにしても、小手先の手法や短期間の PV よりも、ブログのもっている only one な特色や、読者との間に流れている信頼感や期待感をゆっくり、ゆっくり、ゆっくりと醸成するほうが、多少のことでゆらがない基盤をつくることができますし、パッシブな収入もアクティブな収入も増えていきます。つまりブログのマネタイズは、後回しにするくらいでちょうどいいということでもあります。

英語のことわざで “You Reap What You Sow” 「自分でまいた種から生まれるものを刈り取る」という言葉があります。これは「自業自得」という意味で使われることが多いのですが、むしろここでは字の通りの意味のほうが通るでしょう。

どんな種をログとしてまいているのか、それは読者のためになっているのか? おもしろい記事なのか? 結局はそれが将来刈り取るものにつながるのです。

(付記:木曜日更新の記事がだいぶ遅れてしまいましたが、次回は予定通りまた木曜日を予定しています)

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。