予約台帳サービス「トレタ」とGoogleの連携は新しい検索ビジネスを生み出す
飲食店向けのオンライン予約台帳サービスのトレタが、Googleの提供する「Googleで予約」に対応し、すでにサービスが開始しているというニュースが入ってきました。
トレタ代表の中村仁さんはいつもお世話になっている友人であることを開示した上で、ここ数年の努力がこのサービスの形で実現したことをお祝いしたいと思います。
でも、これって一般ユーザーにはどういう意味のある出来事なのでしょうか? それが実は大ありなのです。
ユーザーからは見えにくいトレタとはどんなサービスなのか?
トレタは飲食店向けにクラウド上で予約の一元管理をするサービスです。いつもの店に電話で予約をするとき、昔ならば紙の台帳があって席の埋まり方を管理していました。
トレタを使えば、紙の台帳がなくてもiPadで管理を行えるだけでなく、支店などを横断して空き席の状況を調べることもできますし、電話をかけてきた人の名前や電話番号でその人が馴染み客なのか一瞬で把握できます。
これは本来ユーザーから見て透明な仕組みだったのですが、今回の機能はトレタの存在をグッとユーザーに近づけてくれます。
検索窓からすぐに予約できる「Googleで予約」機能
たとえば、いまや飲食店を探す際にはGoogleマップなどで検索するのが自然になりましたし、パソコンでも検索窓に直接「渋谷 焼肉」といった具合で探すことが多いと思います。
しかし実際にヒットした店を予約したいと思った場合にはこれまで回り道がありました。
この図の上の段のように、良さそうな店があったとしても、予約は店の情報を公開しているグルメサイトへといったん飛ばないといけなかったわけです。
こうしたグルメサイトは非常にSEOが強いので検索するとトップにやってきますが、本当におすすめかというとわかりませんし、星評価も信頼できるかはあやふやです。
それが下の段のように、Googleマップや検索を離れることなく直接予約できるようになるのが、今回の仕組みです。
たとえばGoogleマップで店を検索すると、店の名前の下に大きく「店を予約する」というボタンが表示されます。
そこから日付と時間と人数を指定して、店側に伝える名前と電話番号などを入力すればGoogleアカウントで即座に予約が完了するのです。
以前は必須に思われたものの、今ではだいぶ情報が飽和しているポータルサイトをバイパスできるわけです。
Googleが予約台帳を持っている状態の衝撃
ユーザーから見ると一段階のステップの簡略化ですが、システム全体としてみるとこれはGoogleと店の予約台帳がつながった形と解釈することもできます。
すると、新しいタイプの予約もできるようになります。
たとえば「ねえGoogle、いまいる場所から徒歩15分以内に、予約の絶えない人気店で、今日たまたまキャンセルが生じて席の空きがある店はある?」といった検索ができるのです。
「徒歩15分以内」はGoogleマップがスマートフォンの位置情報と紐付けて提供している情報のフィルターです。そこに「キャンセルのあった人気店」というトレタの情報がクロスできる可能性が生まれます。
単に「この近くのイタリアン」という検索ではなく、より動的に人間の行動に合わせた検索フィルターをこれまでより少ないステップで生み出せるところが、この取り組みの素晴らしさと言えるのです。
黒子となってユーザーに寄り添うトレタ
こうなると、トレタの存在はこれまで以上にユーザーから見て透明になってるのに、ユーザーにはむしろ寄り添っているという、実に理想的なクラウドサービスのありようになっていることがわかります。
この仕組みは「Googleで予約」という、Googleが世界的に提供しているサービスに基づいた機能で、参入できるのはトレタだけではありません。
しかし店の台帳と繋がっているトレタだからこそ、この上で構築できるサービスがあるのは見逃せません。大げさにいうなら、これはGoogleの上に構築されている新しい検索の仕組みといってもいいのです。
もちろん、中間のグルメサイトやポータルサイトがない分だけ、Googleには情報のクオリティやレビューの公正さを保証する責任が生まれます。
ユーザーとしては「どの店を選ぶか」という選択がより主体的にとれる分、何も考えずにグルメサイトで一位の店を選ぶといった選び方よりもハードルが高くなる可能性もあります。飲み屋なんて、そんなに吟味しませんものね?
でもこうして、店のなかにあったデータがクラウドに流れ出し、Googleのなかで整理されてユーザーに届くことの素晴らしさをらいまはかみしめたいと思います。
いずれこの機能で予約した店についても、その流れをリポートできればと思います。