Dropbox PaperとSmartSyncが登場。仕事場を抽象化する流れは本当に「来る」のか?
2015年に計画として発表され、それから長い間開発が行われていたDropbox Paperと、SmartSync機能がリリースされました。
前者はGoogle Docsや、Microsoft Wordを代替するようなオンラインドキュメントのサービス、後者は本当の意味でもクラウド上のDropbox機能です。
これまでクラウドストレージサービスという側面に縛られていたDropboxにとって、 この二つはただ単にストレージであることを卒業して、そのうえで仕事をするプラットフォームとなることを狙ったステップです。
Dropboxにとっては未来に向けた大きな一歩ですが、果たして本当に利用者にとってはこれまで以上のなにかを提供することになるのでしょうか?
その機能と、Dropbox の戦略がもつ意味について考えてみます。
キャビネットからオフィスへ: Dropbox Paper
Dropbox Paper は、Dropbox をウェブで開いたなら左側のタブの Paper というリンクから使用することができる個別のサービスです。
使用感としては、Google Docsというよりは、Evernoteのウェブ版に近く、文章、写真、タスクなどといったものを一つの文書のなかにすべて詰め込むことができます。
整形はMarkdownを意識した簡単な形式をとっており、表題(h1)、見出し(h2)、太字、打ち消し、箇条書き、チェックボタン、リンクを挿入することができます。
また、デスクトップから、あるいはDropboxから画像を、ファイルを追加することができますし、YouTubeやSoundCloudなどといったサービスのリンクは埋め込みとして表示します。
Dropbox Paper の大きな特徴として、右上にみえるように複数のユーザーがリアルタイムにコラボレーションすることが前提となっており、右側には他人のコメントが挿入できるようになっています。
文書のなかでユーザーを @ で呼び出すことができますので、文章自体が会話の場となって、アイデアを共同で作ってゆくのに便利です。
文書といってはいますが、どちらかというとクラウド上にあるホワイトボードを考えると良いのかもしれません、書き込み、画像を張り出し、タスクをユーザーにむけて出しておいておわったならチェックして消してもらうといったように、文書を軸とした仕事場を作ることができます。
ベーター版の頃から使っていたのですが、これらの機能については非常にレスポンスのよい、日本語の扱いも洗練された、よい仕上がりになっていると思います。
また、今回は説明を省きますが、iOS アプリ側もリリースされていて、閲覧と偏執をすることができます。
ハードディスク不足に悩まされない Dropbox SmartSync
Dropboxを使っていてネックとなるのが、手元にファイルを同期しなければいけないことから生じるディスクスペースの壁です。
最近はデスクトップではなく、ノートパソコンで仕事をしている人のほうが多いでしょうから、SSDでも256GBしかないひとが、Dropboxの有料プランで提供されるような大容量のDropboxにはあまり魅力を感じないのも当然です。
Dropbox SmartSyncはこの制限をとりはらい、パソコン側ではなく、クラウド側にファイルを同期して、必要に応じてダウンロードするという、いわばクラウド・ファイルシステムのような機能を提供しています。
ファイルを使いたくなったらそれが同期されて手元にやってきますが、必要がなくなったら手元では消してクラウド上に存続させるという使い方になります。また、SmartSyncを使ってWin/Mac間でファイル転送を行うこともできます。
これは、手元のパソコンのディスクよりも大きな仮想的な保管庫がクラウド上にあって、それを他人とも共有できるということを意味しています。SmartSync は有料のサービスで、最安でユーザー当たり月1250円という若干高めのプランで 2TB を使用することができます。
仕事場の仮想化。でも遅きに失したかもしれない
Dropbox Paper と SmartSync はキャビネット的に扱われているサービスに対して新しい価値をふきこむのには面白い試みだといえます。
過去の Word 的な世界観は doc や xls といったファイルをやりとりすることで仕事を進めるという形をとっていました。抽象化されているのは、そのファイルのやりとりの部分、つまりはメールの部分だけです。
Dropbox Paper 的な世界観は、クラウド上に仕事場を抽象的に作ることで、同一の仮想的な場所で作業を進めるというものです。
時間がないので、情報カードにまとめてみました。
ただし、Dropbox が誕生したときならいざしらず、現在はこれに似たようなことはさまざまなサービスで実現が可能です。
Evernoteは共有ノートブックという機能をもっていますし、Google Drive と Google Docsという強力なタッグも存在します。複数人数で作業するのならGoogle Docsもこの機能をもっていますし、Quip、Basecampといったサービスも同様のことができます。
ようするに、Dropbox Paper は遅くやってきすぎたわりに、あたりまえのことしかできていないというイメージがあるのです。
大きな流れとしては、ファイルをやりとりしていた時期はすでに過去で、これからはこうしたオフィスの抽象化こそが進むべき道でしょう。それは間違いありません。SmartSyncもそれを念頭においた設計でしょう。
というわけでDropbox が久しぶりに投入した新機能、しばらく使ってみたいと思います。