「ビジネス洋書”先取り”ガイド」、今月はネットの未来を垣間見るあの一冊

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日経ビジネスアソシエの連載「ビジネス洋書”先取り”ガイド」、今月はGoogle会長のエリック・シュミット氏と、ジャレド・コーエン氏の共著 “The New Digital Age” です。

発表があったときから注目されていたこの本ですが、開いてみるとすこし戸惑うところがありました。それは未来がいかにも予想外であるからにほかなりません。### 大胆で不安になる未来予想

まず最初の章を読んでみましょう。ITやガジェットが好きな人ならば、この二人の著者が未来にどのようなテクノロジーが実現していると考えているのか、そのビジョンにワクワクするとおもいます。ホログラフィ・ディスプレイ? 自動運転する車? そしてそんなものまで?

しかしいきなり第二章から、二人は不安で不安定な文体を紡ぎだしていきます。ネットと現実の二重化したアイデンティティ、それがもたらす国家というものへの変化、革命や戦争、テロリズムの未来はどうなるのか。

一方ではテクノロジーによる可能性を描きつつ、もう一方ではそれがもたらす見通しにくい変化について、本はぐいぐいと引っ張っていきます。詳しくはアソシエの書評の方でもご紹介しました。

大事なのは、この本の予想が当たるか当たらないかではありません。

むしろ、現時点でもっている技術力などでここまでは見えるが、この先は見えないという境界線を知ること。そして、変化を先取りする思考を身につける練習をすることです。

きっとこのデジタル化の変化はまだまだ始まったばかりなのでしょう。そしてその行き着く先を、いまの私たちは一生の間に体験しきれないかもしれません。それでも、未来について考えることは、今を正しく見ることでもあります。そのヒントを本書は与えてくれるのです。

味わいたいキーフレーズ

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ところでこの連載では、紹介している本のもっとも特徴的な、あるいは感じ入ったフレーズを選び出し、その翻訳とともに紹介しています。

この、ほんの数百字の欄が書いている側としては一番気を使う場所であったりします。本の本質を捉えながらも、曖昧過ぎないように、でも読んだだけでインパクトを感じないといけません。そうったフレーズを探しながら本を読むのはなかなか頭の体操になります。

今月は写真に微妙にみえていますが、まさに本書の予言的な一節です。数十年たった頃に、この一行がはたして正しかったのかどうかで、世界の歴史が辿る道のりも大きく変わるといっていいでしょう。

未来を垣間見て遊びたいという方には是非ともおすすめの一冊です! そしてアソシエの連載のほうも、どうぞよろしくお願いします。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。