「パッション」と「型」。ライフハックについて考えるほど気になる2つのこと

仕組みを作ればなんでもうまくいく。やる気があればなんでも可能。

この2つが、共に片方だけでは嘘で、両方があれば真となることについて、長い間考えてきました。

たとえば、**どんなに ToDo リストが完璧にできあがっていても、指一本動かない時があります。**それは自分にとって大事な何か、心の軸となるものが抜け落ちていて、それを取り戻さなくてはいけない場合や、自分を衝き動かす根源的な情熱が一時的に弱まっている場合などです。

「パッション」と一言で言い表せるそれは、何か天命のようなものが下れば二度と自分を疑うことなく情熱をもち続けられるといった単純なことはありません。その都度その状況にあわせた薪をくべながら燃やし続けなくてはいけないものです。

ライフハックが一部で「(笑)」などと付け加えられて揶揄されるもの、この「目的の内部化」とその維持という段階を経ていないのに「この文具で ToDo リストを作るとすごくいい感じですよ」というレベルで話が止まってしまうからなのでしょう。パッションに言及のないライフハックは虚しいことがよくあります。

「型」について

しかしそもそものライフハックの語源的な、何かものごとをうまく片付けるための「型」のようなものがなくては、仕事は油のきれた機械を回すが如くで、無駄の部分が全体をつぶしてしまうことになりかねません。

「型」、あるいは「ハック」は、パッションを前提として、いかに自分を排除してものごとを片付けられるかで善し悪しが測られます。だからこそ、型は他人に移植が可能だし、極端にいえば自分自身を完全に排除する(外注する)ことさえも可能となるわけです。そして「型」は無限といっていいほどあります。というのも、適用すべき状況も、適用する側の人も千差万別だからです。

必殺技の修行

ではどのようにこの2つのバランスをとるのでしょう?

答えは簡単で、「自分のパッションを実現するための型 = 必殺技をたくわえる」これに尽きます。本に書いてあるどんなに小さな改善点でも、自分の今の状態にあわせてカスタマイズすることです。

[kirin_title.jpeg

たとえば最近シゴタノ!の大橋さんと佐々木さんが出された「マンガでわかる!スピード仕事術」を読んでいましたが、その中に「一日でやることが多すぎる場合は、時間別に区切る」という項目があり、なるほどタスクシュートの考え方だなと思って深く考えずに読み飛ばしていたところ、あとになってこれが昨日紹介した「一日に2つだけの ToDo を装填する」という方法と本質的に同じということに気づきました。

そうして気づいてみると、なぜこの手法が今の自分にとって有効なのかがわかるとともに、どのようにカスタマイズすれば自分にとってちょうどよい作業量になるのかがみえてきました。

現在の私の仕事は途中の中断なく2時間ほどのまとまった時間がないとなかなか進まない種類のものが中心です。そのことに照らし合わせて考えると、最近調子がいまいちだったのは雑用と研究の時間が混じることでどこかで研究の時間が削ぎ落とされていたせいなのだとか、それならばメールチェックの時間をこちらに移動して、雑用の時間をこちらにして、「区切り目」をここにいれないと駄目だな、という思考に達して、初めてこの項目が心の底から理解できたのでした。

仕事や作業は人それぞれで、どこにやる気を感じるか、どこを踏みにじられると精神力が消えるのかといった場所も人によって異なります。だからこそ、ハックをそのまま導入するのではなくて、いちいちカスタマイズすることでしか、ハックの効果を発現することはできなかったというわけです。

自分にとってパッションを維持する「勘どころ」はどこにある?

それを維持するためのしくみとして、既存のハックを自分にあわせてカスタマイズして、「自分の必殺技」にまで高められるか?

何を試してもうまくいかない、大きな壁にぶつかっているというときにこそ、この視点は大事になります。

p.s.

ちなみに上記の「マンガでわかる!スピード仕事術」は漫画でポイントをおさえたハックが散りばめられているために、「ふむふむ」とわかったつもりになって読み飛ばしかねませんが、それぞれの項目でちゃんと立ち止まって導入方法を考えてみると一筋縄ではいきません。

大橋さんと佐々木さんの必殺技集、というわけなのですね。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。