ツールを覚えることは未来の時間をたくわえていること

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ひとつのツールを長く使うことも大事ですが、ある日、えいやっと新しいツールに乗り出すと大きな成長を生み出せる可能性があります。

これまで長い間、私は自分の本業である気候データの解析を、十数年前の修士の学生のときに学んだ Fortran と、若干の ツールだけですべてを行ってきました。

長い博士課程の時代、博士論文、その後就職してからのさまざまな業務にも、ほとんど同じツールの組み合わせを利用していたのです。その結果、これらのツールについて他の人には理解不能なくらい独自色の強い使い方が定着して、それが自分の武器になっていました。

しかしここ1年ほど、やってくる作業がさらに多くなるなかで、やり方が決まっていて手数が多いだけの解析をなるべく少ないステップでできないかという悩みに直面していました。たとえば数十年のデータの平均や相関をとるプログラムも、いくらでも手持ちはありましたが、それらを直面する仕事に向けてカスタマイズする時間は、全体の効率を下げていたのです。

そこでここしばらく、この十年間の蓄積されたライブラリをまったく異なる解析ツールに移し替えるという膨大な作業に取り組んでいました。

ツールを変える時間コスト

今回の乗り換えは、プログラム言語でいうなら fortran から java に乗り換えたようなもので、便利な半面、API の知識が蓄積するまではなかなか使いこなすというところまではいかないものでした。

ここ最近になってやっとマニュアルをみなくともある程度のプログラムがかけるようになってきましたが、それまでに使った時間はゆうに 150 時間ほどだったと思います。

しかしこの 150 時間を投入したおかげで、これまで複雑すぎて手をだすのが面倒だった解析や、時間がなくて手控えていたような作業がこれまでの数分の一の時間で実現するようになりました。

つまり、現在時間をかけてツールを新たに学ぶ、あるいはツールについてより深く理解することによって、未来の時間をたくわえることができたともいえるのです。

「ツールを学ぶ」というのは仕事を先送りするかっこうの口実になりかねませんので、いつもは避ける傾向にあります。しかしこれほどまでにリターンが大きい時間投資がないかどうかは、定期的に自分に問いかけて、投資を惜しまないようにしたいですね。

5% の時間をかけてツールを学び直すことで、将来何十倍ものリターンが期待できることはありませんか?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。