SmugMugのFlickr買収は、写真共有サービスの終わりか新しい始まりか

オンライン写真共有サービスのくさ分けであり、いまや昔話といっていいWeb2.0的なサービスの代表格だったFlickrが、SmugMugに買収されたというニュースが入ってきました。SmugMugにも特設サイトができています。

「Flickrってなんだろう?」という人は、2004年から続いている「写真のYouTube」という表現をすればわかりやすいかもしれません。

すべての写真をオンラインで管理するだけでなく、友人同士でフォローし合うことで写真がタイムラインに沿って表示され、すべての写真を共有、あるいはエンベッドしてウェブサイトで利用可能になるところが当時はとても先進的で、いまもユーザー数と写真の量という点では巨大な存在です。

米Yahoo!に買収されてからは開発がストップし、そのYahoo!が去年Verizonに買収されてからはその先行きが不安視されていたところに、このニュースです。

一方、SmugMugはもともとFlickrの競争相手で、Zooomr、Webshots、Adobe Revelといったオンライン写真サービスが終了してゆくなかで、500pxとともに最後に残ったサービスといってもいいでしょう。SmugMugはFlickr同様にすべての写真をオンラインで保存できるだけでなく、写真をサイト上で販売するといった機能も提供しています。

写真共有サービスというジャンルの終わりか、それともまだ続くのか

昔からのFlickrのファンは、長い長い停滞の時期が終わって、ようやくサービスに動きが始まる可能性に期待が高まるかもしれません。しかし、写真共有サービスというジャンル全体にとっては、これは終わりの始まりの可能性もあります。

そもそもFlickrが衰退した理由は、Yahoo!がアクティブな開発をやめたことが原因の一つですが、もっと大きな流れでみると、Facebookがその座をとってしまったからというものがあります。

Flickrのなかで写真のコミュニティを作るよりも、Facebookというコミュニティのなかに写真をアップするというほうがより自然でしたので、一般にとっての写真共有とは写真サービスを使うことではなく、Facebookを利用することと同義となり、それがいまはInstagramを使うことになったわけです。

この8年くらいの流れをみていても、FacebookがInstagramを買収したのは技術的な理由というよりも、「写真を共有する」という行為の行き先をFacebook傘下で独占することが目的だったというのがわかります。

Vergeの記事によれば、Flickrの買収元であるSmugMugは、技術的にはむしろFlickrに追いつけていない存在で、今回の買収によってFlickr自体に発展があるかは微妙なところだという評価です。

私も同じ気がします。写真をオンラインに蓄積できたことが価値であり、驚きだった2004-2008年とは違って、いまはそれが当たり前で選択肢も多数ある時代です。

写真をシェアするという行為も、ツイッターとFacebookのようなSNSがその本質的な部分を奪い取っていってしまいました。写真共有サービスには、プロの写真を販売するといった、比較的小さな市場しか残っていないかもしれないのです。

というわけで、Flickrがしばらくは存続しそうなことに喜びつつも、この先行きがどのようになるのかについては、注意深く見てゆく必要があると思います。

p.s.

Adobeが8年まえにFlickrを買っていれば世界は違ったのだろうか…結果は同じだっただろうか…。私はもうLightroom CCに移行してしまったわけですが。その続報もまた近日中に。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。