グランフロント大阪・ナレッジキャピタルは「人・技術・アイデア」のるつぼとなるか [AD]
大阪・うめきたにオープンして話題になっているグランフロント大阪の中核施設、「ナレッジキャピタル」はコワーキングスペースや事務所スペース、会議スペース、展示、商業スペースなど、さまざまなピースが集まってできた複合施設です。
今回、いつもお世話になっているAMNを通して「ナレッジキャピタル」のオープンに先行する内覧会にご招待いただき、大阪まで足を運びました。
ナレッジサロンとナレッジオフィス、そしてコラボオフィスという人と技術をつなぐ交流スペースの存在がとても気になったからです。### ナレッジサロン・ナレッジオフィス・コラボオフィス・
まずご案内いただいたのがこちら、ナレッジサロンです。普通のビジネスマンから、行政、研究者、クリエイターなど、分野を越えた人々を集めることを目的とした会員制サロンです。
サロンというと殆どの人は縁遠い感じのする言葉だと思いますが、ここは人と出会う場所ということに主眼がなされていますので「オフィスの外のオフィス」という表現のほうが良いかもしれません。
写真からも分かる通り、様々な種類の机、椅子が多少ランダムに取り入れてあるのも特徴です。オフィスのような画一性を持ち込まないための工夫なのだといいます。
また、場所によってはカーテンで仕切られるなど、視線を引き込む場所と、もっとプライベートになる場所とが区切られています。
その最も顕著な例がサロンスペースの一角に設けられたこちら。渦巻き型のスペースは周囲からの視線を遮っており、プライベートな「特別」な空間を作ります。なるほど、これは「舞台」なのだなということがわかってきました。
サロンには多彩な文献や雑誌などを読むスペースもあり、スタッフが施設の利用方法について案内してくれます。色とりどりのユニフォームに、スタッフの身長が多様なのも、あえて不均一な個性をとりこむ工夫なのだということでした。
サロンスペースから歩を進めると、今度は「コラボオフィス」になります。ここはスタートアップ企業のように、明確なオフィスをもたなくともよい規模の小さなビジネスがわいわいと作業をするコワーキングスペースと考えるとよいでしょう。
コラボオフィス利用者は、階下のナレッジサロンを利用することもできますので、サロンからスタートアップへの導線ができているというとらえかたもできます。
一角には住所登記の可能なオフィススペースも存在し、本当にオフィスだとか、規模といったものを無視してアイデア先行でスタートする会社などはこうしたところから始まるのかと思いました。
そしてさらに先には、ナレッジオフィス、貸事務所のスペースも存在しており、なるほど出会い、コラボレーション、スタートアップ、成長に至るまでのインフラを一同に集めたという具合です。
展示、商業スペースもコンセプトのもとに設計
さて、ちょっとわかりにくいのですが「ナレッジキャピタル」はこうしたコワーキングスペースやオフィススペースだけではなく、展示スペースや会議施設、あるいは商業スペースも含んでいます。
展示としては「アクティブラボ」「カフェラボ」「イベントラボ」といった場所に企業や大学などの展示がされています。たとえばこちらは NTT の展示で、動画の好きな場所にズームインして操作できる映像技術の展示をしていました。
商業施設の例としてはこちら、サントリー・ウィスキーハウスがあります。奥にウィスキーと、それに合う食事を提案する珍しいタイプのバーがありますが、手前はウィスキー樽を利用した家具の展示販売など、店舗という以上にテーマ性をもった作りをしています。
これも一般店舗ではなくて、ナレッジキャピタルの一部であることの条件なのだそうです。
THE世界一展などのイベントスペース
ナレッジキャピタルの一部であるイベントラボは展覧会やイベントなどに利用できるスペースも含んでおり、今回は9月1日まで開催中の「THE世界一展」日本が誇る世界一を展示しているイベントに立ち寄りました。
ここに展示されているのはかつて世界一だった日本の製品、いま世界一の日本の技術など、さまざまな切り口からの「世界一」です。
「日本ってすごい!」という自画自賛だけとは言えない面白さのある展示が多かったのと、実はこの世界一展がナレッジキャピタルを読み解くのに重要なヒントを与えてくれました。
ナレッジキャピタルと大阪の未来
「THE世界一展」に足を踏み込むと、まずパネルで表示されているのが日本の主要産業の国際競争ポジションという図です。これが興味深い。
横軸は市場における占有率、縦軸が市場の規模を表しています。たとえば大きな赤い丸は自動車産業をあらわしていますが、市場規模が大きいわりに、近年では中国や韓国の自動車メーカに押されてシェア自体は縮小気味です。
しかしグラフの右側、市場規模は1兆円規模で、日本の技術が独占している箇所に、デジカメの素子や、ハイブリッド車の技術、内視鏡などといったものが存在します。完成品よりも、こうしたなくてはならない技術に、日本の競争力はいまシフトしつつあるというわけです。
もちろん経済をご存知の方ならこれは周知の事実だと思いますが、こうしたスケールのシフトは人材、ビジネスのあり方にもいま世界中で起こっていることでもあります。
先日、アメリカのITジャーナリストの Robert Scobleは「全米のモノ作りにとって最も重要かもしれないスタートアップ」として Techshop を紹介していました。
Techshopはなかなか施設や技術、ソフトウェアといった資産をそろえることができない小規模のビジネスに対してそのインフラと技術支援をそろえる企業です。Techshopにいけば、工場をもっていなくてもモノ作りのスタートアップが可能なのです。
なにより重要なのは、Techshopがただの企業というだけでなく、退役兵をトレーニングしてこうしたスタートアップに斡旋するなど、コミュニティとしても機能している点です。
今回訪問したナレッジキャピタルも、**同様のビジネスのスケール変換の必要性を感じた人々によって生まれたのだという気がします。**そしてそれが大阪・うめきたであるのも象徴的と言っていいのではないでしょうか?
ナレッジキャピタルの試みがうまくいけば、「THE世界一展」に展示があったような世界的な競争力のある技術 ーしかしあくまで技術であって最終製品ではないー をもった企業と、それを活かせるアイデアをもった人々が出会い、オフィスも持たないところから何かが始まるのかもしれません。
また、個人の働き方が企業への依存のみとは限らなくなっている現在、さまざまなスケールへの才能とアイデアの流入を促進するのではないかと期待しています。