このへんで基本を総ざらい「できるポケット+Dropbox」(インプレス)

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ふだん仕事であれ、ブログであれ、作業をするときに「接着剤」となっていて外すことのできないサービスがいくつかあります。

ブログ記事であれば Instapaper が RSS とブログ記事、Evernote の間をつなぐリレーとなっていますし、スクリーションショットであれば Skitch が画像の整理と共有をワンタッチにしてくれます。接着剤のサービスは、ある場所での「やりたいこと」を別の場所の「やりたいこと」につないで、大きな効率化を実現してくれるのです。

Dropbox もまさにそうした「接着剤」のサービスです。単なるファイル共有を越えて、その用途は「iPhone とのファイルのやり取り」「同期機能のないアプリを複数マシンで同期させる」「共同作業のプラットフォーム」と、多岐にわたります。

Dropbox のこうした数々の機能を一つの本にまとめた、ネタフルのコグレマサトさん(@kogure)、和洋風のするぷさん(@isloop)の新刊、できるポケット+Dropbox が出版されましたので読んでみました。### Dropbox のすべてを一望する

本書は Dropbox の機能を「基本」「モバイル」「共有」「応用」の4つにわけて解説しています。

「基本」の部分ではDropbox の導入と設定、使い方、そして履歴管理といった話題がまとめられていて、Dropbox のホームページをみるよりも手軽になっています。

「モバイル」「共有」の章では、Dropbox とiPhoneをつなぐことでiPhone から電子書籍を読んだり、写真や動画をアップロードする方法などがまとめられています。

しかしやはり本書のキモの部分は、最後の「応用」篇で、「Windows のマイドキュメントを Dropbox で管理する」「Dropbox を用いた共同作業の流れ」といったDropbox ライフの楽しみ方がまとめられています。

コグレさんとは、他の本でも Dropbox + Skype で一度も会わずに本ができていくという体験を変だとも思わずに実践していますが、その道のプロが解説をしているのは安心ですね。個人的には MacDropAny の使い方や、PortableApps.com との連携といった話が新しくて役に立ちました。

一方で、もうちょっと難易度の高い使い方、たとえば iTunes ライブラリを同期する方法や、コマンドライン経由で設定するシンボリックリンクの使い方は触れられてませんでしたので、ギークには少し物足りない面もあるかもしれません。自分は 1Password と Dropbox の連携をもっとも使うので、ここにも触れてほしかった気も。

しかし Dropbox の写真ギャラリーやメディアを扱う機能など、自分がふだん使っていない部分についても解説がいきとどいているのは大変ありがたかったです。Dropbox は周囲に利用する人が多いほど便利ですので、本書は家族で読んで全員でファイルを共有できるようにしておきたいです。

セキュリティについて

ところで最近なにかと批判の多い Dropbox ですが、セキュリティに関して。

すべてのファイルは「ウェブ上にあるか」「ウェブ上にないか」のいずれかで、「ウェブ上にある」なら、それが Dropbox 上であろうが、SugarSync上であろうが、ZumoDrive上であろうが、box.net上であろうが、その他多くのどのサービス上でも、「絶対」に安全ということはありません。

サービス側のセキュリティーの問題だけでなく、自分、あるいは他人の人為的な間違いでファイルが流出することは十分に考えられるからです。

本書のなかにも書かれていますが、個人情報、クレジットカードの情報、パスワードを置かない、あるいは自分が安心出来る程度に保護するのは、利用する側の防御策といえるでしょう。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。