Evernote は時間とともに価値の増すサービス

ソーシャルメディアを中心に最新の話題を紹介する Mashable! で Evernote の CEO Phil Libin 氏のインタビューが掲載されていました。短いですが、これまでの Evernote の道のりと、今後について紹介されています。

面白いのは、最初に「Evernote とは何?」という疑問に対して Phil が答えているところです。


「Evernote は『外部の脳」なんだ。あなたのいく先々についてきて、何か覚えておきたいとおもうことがあるなら、何年先でもそれを代わりに覚えてくれる。そうすることで、けっして忘れることがないという安心が手に入るんだ」

新しいウェブサービスを紹介するのに、こんなディープな表現はちょっと珍しいといえます。普通は機能の紹介や、「クラウド」といったバズワードが入ってきそうなところなのですが、あえて「記憶」「安心」「忘れない」というキーワードが入っているのです。

先日サンフランシスコに、Evernote の本社を訪ねた際、この「Evernote の哲学」について詳しくお話をうかがうことができたのですが、ここでもこうした「いつまでも使うことができる外部の脳」ということが強調されていました。

それは Evernote の独特なサービスモデルとも関わっています。

使えば使うほど価値が増すサービス

多くのウェブサービス、たとえば Remember The Milk のようにタスクを管理するものや、Google Docs のように文書を管理する物は、その場その場でのタスクや文書が片付けば価値がいったんゼロに戻ってしまうという性格をもっています。データは入れた分だけ取り出されるわけで、「使い込み」によって価値は増しても、データそれ自体の価値は増していきません。

Evernote と、あるいは Flickr のような「人生の断片を積みおろす」タイプのサービスはまったく逆の性格をもっています。使えば使うほど、価値が増すのです。

たとえば Phil が口にしていた話で面白かったのが、Evernote を利用する人で、1ヶ月目でプレミアムに移行する人は 0.5% 程度、2ヶ月目ではそれをほんのちょっと超える程度なのだそうです。しかし1年も使い込んでいると、プレミアムへの移行しているひとは格段に多くなります。それだけデータが蓄積され、価値が増しているからです。

ビデオのなかでも説明されていますが、そんな Evernote の目下の課題は、ユーザーインターフェースを洗練させて、もっと広いユーザーを獲得できるようにすることだそうです。このために、著名な UI 開発者もチームに加えて、いま大きな見直しがおこなわれているそうです。

日本語も含めて、今後の進化から目が離せませんね。

Evernote 定期連載開始!

ユビキタス・キャプチャーの話題も連載化しましたが、今年は手持ちのネタをすべて使い尽くすことを目的として複数ラインの連載形式の記事を作成するつもりでいます。

その2番目として、これまで Evernote で試してみたこと、うまくいったことなどを、最近の話題と織り交ぜて紹介する不定期連載を始めようと思います。

連載を通して、Evernote を使いあぐねている人向けに Evernote を長く使い続けるには? ユースケースは? といった話題を掘り下げられればと思います。

Happy Notetaking!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。