仕事を投げ打つ勇気、あるいはヒーローにならないこと

Signal vs Noise で 「ヒーローになるな、仕事をやらないのも時にはよい」という話が紹介されていました。現場レベルの知恵だなあと思いましたので紹介します。

あるプログラミングをしていて、「2時間で実装できるよ」と口約束をした仕事が4時間経っても四分の一しかできていなかったとします。そのときの典型的な反応が「いまやめるわけにはいかない。だってもう4時間も費やしてしまったのだから。なんとかこれを仕上げてしまわなければ」というものです。約束の種類や状況にもよると思いますが、これがけっこうワナだったりするという話です。

So you go into hero mode. Determined to make this work, but also embarrassed that it isn’t already so. So the hero grabs his hermit cape and isolates himself from feedback. “I really need to get this done, so I’ll turn off IM, Campfire, email, and more for now”. And some times that works. Throwing sheer effort at the problem to get it done.

そういうわけでヒーローモードに突入するわけです。この仕事を仕上げてしまおうと心に決めて、そして心のどこかでまだ仕上がっていないことを恥ずかしいと思いながら。そしてヒーローの孤高な装束を身に着け、他のものから自分を閉め出して、「これを仕上げなきゃ」と考えながら IM も切り、メールも確認せず、他のことにかまけないモードに入ります。それで解決することもあります。意思の力だけで難局を乗り切るわけです。

But was it worth it? Probably not. The feature was deemed valuable at a cost of two hours, not sixteen. Sixteen hours of work could have gotten four other things done that individually were at least as important.

でもそんな必要があったでしょうか? たいていはなかったでしょう。その機能は2時間のコストなら価値があったかもしれませんが、16時間なら無価値で、他の仕事を4つほど仕上げられたかもしれない。

37Signals の開発の現場で同じようなことがあったのでしょうか。過ぎ去ってしまった時間はもうコストとして換算できないのだから「もう×時間やってきたのだから、ここでやめるわけにはいかない」という発想にとらわれないことが、時間のおしているプロジェクトでは重要という話です。

これは勇気が必要ですし、周囲との信頼関係がないとこういうこともできないですね。何よりも、自分の現状の不完全さを受け入れることが不可欠です。何か一つのことに意固地になっているときには、「自分はヒーローになろうとやっきになっているのではないか」と自問自答してみるのも、打開するためのヒントになるのかもしれません。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。