[Habit1] 言葉の力で自分を変える -言霊ハック-

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月曜日は「第一の習慣」の日です。ここでは「主体性を発揮する」ために日常に導入することのできるテクニックについて紹介していきます。

先日紹介した「なぜか仕事が速い人の習慣」であったような、「締め切りを前倒しにする」、「緊急性ではなく、重要性で仕事の優先順位を決める」といった考え方も、その根底にあるのは主体性だということをこの連載の初めで書きました。

でもこの記事に関するコメントをみていて気になったのが、「自分には無理だ」、「できるものならやってるよ」というものが多かったことです。私も仕事がばりばりできる仕事術のエキスパートというわけではありませんので、これらの習慣を完璧にできるわけではありませんが、入り口はやはり 「自分にも少しはできるかもしれない」、「できることからやってみよう」という自己暗示ではないかなと思います。

今日は自分が自信がなくしそうなときにいつも基本に戻って気をつけている習慣、「言葉の力で自分を変える」習慣について紹介します。

言葉を換えれば自覚も変わる

スティーブン・コヴィーは「7つの習慣」の中で主体性とは、「外からやってくる刺激にたいして、自分で反応を選び取ること」と定義しました。仕事上のストレス、思い通りにならない状況、病気や怪我、自分自身に対する不安。そうした状況に対して受け身になるのではなく、自分から行動を選び取ってゆく行動モデルです。コヴィーはこの「選択の自由」を勝ち取るには、Self Awareness 「自覚」、Imagination 「想像力」、Conscience 「良心」、Independent Will 「自由意志」の4つが必要であると説いています。

このうち「自覚」、いわゆるセルフイメージを改造するのが一番とっかかりやすく、いつでも始めることができます。「自分って駄目なやつだ」、「なんでこんなことができないんだ」、「なんでうまくいかないんだろう」「orz」という言葉が出てしまいそうになるときに、使っている言葉を換えて、強制的に自己批判の言葉を跳ね返します。それこそ頭の中のイメージの中では、絶対に攻撃を通さないバリヤーをはっているようなイメージを作りながらやっています。

「7つの習慣」の原典にはすでにいくつかこうした言い換えの実例が示されています。

  • どうしようもない
     → 代替案を考えてみよう

  • しなくてはならない
     → そうすることに決めた

  • 〜でないとだめだ
     → 〜の方がいいと思う

Neil Fiore の “The Now Habit” には、さらに仕事の現実逃避をしそうになるときに唱えることのできるいくつかの呪文が紹介されています。

  • やらなきゃ、やらなきゃ
    どこから始めればいいかな

  • この仕事はあまりに大きすぎる。無理だ
    とりあえずは最初の一歩だけでやってみよう

  • これじゃ駄目だ。もっと完璧にしなきゃ
    これが等身大の自分。あとで手直ししよう

  • 遊ぶ時間なんてない
    遊ぶ時間を忘れないようにしなければ

4番目の「遊ぶ時間を作らなきゃ」というのを著者はさらに推し進めて、罪悪感なしに遊ぶ時間をあらかじめスケジュール帳に確保する、という Unschedule という方法論を提唱しています。

仕事がうまくいかなかったり、不十分だったりするときに、まじめな日本人はとかく自分を責める体質があるように思います。謙虚でよい側面もあるのですが、それが自分を追い詰めていかないようにするのも、現代の仕事人には大切な自己マネージメントのような気がします。私は個人的に自分が失敗したり、うまくいかなかったときのだめに、自己批判をかわす問答表をリストにしています。恥ずかしいですが一部を公開すると、

  • 無理です
    方法を変える必要がありそうです

  • 駄目じゃん
    どんまい

  • 私は○○ができません
    私はそれを身につけているところです

  • 自分って駄目なやつだ
    さあ、そろそろレベルが上がるぞ

  • やってみたけど駄目だった
     → 「もう一度やってみます」
    「自分には合わないみたいなので別の方法を試してみることにします」

などです。さらに気分がのってきたら、自分だけの言語ゲームですが、否定形なしにどこまで話すことができるかに挑戦してみます。つまりは「ない」を使わないといわずに一日中行動してみるという遊びです。やってみるとわかりますが、これが非常に難しいのです。

何の意味があるの?

まじめな人ほど、自分のなかにあるハードルの高さや、理想像とのギャップの中で「自分はもっとこうあるべきだ」というイメージを作りがちです。このイメージが健康的に機能しているときにはいいのですが、そのイメージ自体が敵となってしまったら、自分の敗北はすでに保証済みです

自己批判の言葉を跳ね返す、あるいは切っ先をそらすのは、自分自身の「自覚」を健康的なイメージで満たしておくための一つのコツといえます。周囲の状況がどうあれ、自分の心だけは聖域として守るための基本条件がこれでそろいます。

次にやってくるのが、「想像力」です。悪いセルフイメージを払拭したなら、現状と周囲の状況をどのように変えられるだろうかという発想のための心の余裕が生じてきます。これについてはまた来週。

ほかにもふだん心がけがけている「言霊ハック」はありますか? コメントにぜひ書き込んでみてください。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。