Evernoteの新CEO、クリス・オニールって誰?なぜこのタイミングでの交代なのか?
もう生活の一部分となった不可欠なツールEvernoteから、CEO交代のニュースが入ってきました。これまで会社をリードしてきたフィル・リービン(Phil Libin)にかわり、クリス・オニール(Chris O’Neill)がその任につきます。
フィルはEvernoteを辞めるわけではなく、今後もExecutive Chairmanとして、アクティブに経営にかかわるそうです。
なぜこのタイミングでCEO交代なのでしょうか?そして新CEOクリス・オニール氏とは誰なのでしょうか?
さらなる成長路線への前提条件
実のところ、フィルが新しいCEOを探しているという話は6月頃から公然の話題でした。
1億5千万人ものユーザー数に成長したEvernoteにとって、次の大きな節目はもちろんIPOです。しかしこの移行期においてCEOを続けることにフィルは抵抗を感じていたようです。Business Insider の記事によると、「自分はどちらかというとプロダクト作りの人間なんだ」というフィルはこのように感じていたようです。
I realised I wasn’t passionate about being the CEO who will take this company public and that I should find someone who will be passionate about it
自分はこの会社が株式公開をするプロセスをするさいにCEOであることにあまり情熱を感じられないと思ったんだ。そしてそれについて情熱を燃やせる誰かをさがさなければいけないと思ったんだ。
これはもちろん「面倒だなあ」という話ではなくて、株式公開を成功させるにはEvernoteがさらに収益性を高め、業界のなかで生き残る成長戦略を描く必要があることを前提とした話です。Evernoteを作る仕事と、それをMicrosoftやGoogleなどといった競合会社からシェアを奪い取ることができる成熟したサービスにするのは、根本的に違う仕事だからです。Evernoteブログにはこう書いてあります。
Fulfilling that potential means doubling down on making great products, and I’ll continue to focus on that at Evernote, but it also means building a great company that’ll go head-to-head with entrenched behemoths that dominate this space.
(Evernoteのもっている)この可能性を実現するには、もちろん素晴らしいプロダクトを作り続けることが必要で、私(フィル)はそれを続けるつもりだが、同時にそれはこの業界を専有している巨獣たちと真っ向から戦える会社を作ることも必要なのだ。
端的にいえば、それはEvernoteが「あると便利」なサービスから、仕事場における Word / Excel / PowerPoint のように、音楽における mp3 や aac のように、出版における pdf や epub のように、ユーザーがコンピューターを使うということはEvernoteを使うことと同義になるまで成長させることを意味しています。そこまでやってきたのです。
新CEOは先進的デバイス開発と大企業経営の経験者
では、新CEO、クリス・オニールさんとは誰でしょうか?
彼は Google において10年以上指導的な立場にあった人物で、Google Glassを生み出したGoogle Xに所属していましたが、さらに重要なのは、彼がその任に着く前はカナダにおけるGoogleの責任者だったという点です。
彼のもとでGoogle Canadaはビジネスの規模と従業員を2倍にまで成長させ、カナダにおけるトップ企業として認知されるようになりました。この辺りのながれは、かれの LinkedIn ページをみるとわかります。
Glassのような先進的なプロダクトに触れた経験をもつ、巨大企業の運営経験をもつ人物というのは、いまのEvernoteにとって最高の選択肢といっていいわけです。
というわけで、今回のCEO交代は、Evernoteにとってこれからがもっとも難しい局面であることを予感させつつも、とてもよいニュースなのではないかと思っています。
ぜひ日本のユーザーがこれまでEvernoteと培ってきたよい関係を継続できるように、私も協力できればと思っています。
最後に Phil と Chris へ。
Personal note to Phil and the new CEO Chris,
Phil, thank you very much for your effort in bringing Evernote to where it is today. I know it must have been an exhausting few years. I wish that Evernote will continue to grow into something that everyone will use every day, something that defines the very meaning of our use of computers and devices for a better life.
And to Chris, congratulation for your new role in Evernote. I cannot wait to see what the future holds for this fantastic product and team of people that create it.
Masatake E. Hori (@mehori)