ハードが語り、アプリが歌う。SnapLiteから読み解くPFUの遺伝子
ScanSnapを生み出したPFUから新製品、SnapLiteが登場して大きな注目を浴びています。
学会があったためブロガーイベントには参加できなかったのですが、それもあって生でこの製品に触れていない人が感じるであろう「は?」という気持ちは少しわかります。
「iPhone を上においてスキャンできるデスクライト?」「自分には必要なものだろうか?」
デスクライト的な形状のものが必要で必要でたまらないという人は少数でしょうから、これは当然の反応といってもいいのですが、一方でこの「必要なものだろうか?」と一瞬感じる隙間の部分に、本製品の狙いがあるのです。
PFU という会社の凄み、それは製品に二重化した価値を持たせることができる技術力と発想のDNAなのです。
SnapLiteの機能をおさらい
SnapLiteの機能だけを並べてもその狙いは見えてきにくいのですが、まずはおさらいしておきます。
SnapLite を使うには、本体とiPhone上にインストールしたアプリが必要です。
普段はデスクライトとして機能しますが、アプリを起動してiPhone を上に置くと、SnapLiteはコンパクトなスキャナーに返信します。
レーザーガイドが机のうえに投影されますので、その範囲内に紙や、多少ならば立体的な物をおいて撮影できます。
撮影されたものは台形補正されてとりこまれますが、数あるスキャンアプリと違い、複数の名刺やレシートも、個別の画像として保存できます。
大きすぎるものは重なりをもたせるようにして2回にわけて撮影することで自動的に一枚の画像にしてくれます。
使っていないときはデスクライトになりますが、その光量や色調もiPhone アプリの側で設定することが可能です。
SnapLite Introduction from SnapLite on Vimeo.
ハードが語り、アプリが歌う
実はこの SnapLite、ScanSnapアンバサダーとして金沢にあるPFU本社を訪問した際に、プロトタイプをみせていただいていました。
そこでも「スキャンできるデスクライト…はて」と思ったのを覚えているのですが、今回のSnapLiteの動画やサイトをみていて、ようやく頭のうえに電球が灯りました。
つまりこれは、机のうえ、私たちがさっと手を伸ばせる半径50cmのなかにある「スキャンできるもの」を発掘する製品なのです。
思い出していただきたいのは、ScanSnapはもともと個人向けのドキュメントスキャナーとして発売されましたが、そのときは本をまるごとスキャンするという使い方は一般的ではありませんでした。「自炊」はScanSnapによって発掘されたユーザーの行動といっていいのです。
しかしScanSnapはA4サイズのスキャンを強く意識していますし、机のうえのような専用の場所を専有しますので、私のようなデスクワーカーにはぴったりでも、女性の身の回りや家庭の片隅にいつもそばにいてもらうのには多少鈍重なところがあります。
そこでSnapLiteは:
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スキャンしない時でも、ふだんから身の回りに置く意味を与える → デスクライト機能
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小物を手間なく撮影できることで、スキャンされるのを待っていたものを発掘する → アプリ側の機能
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だれでも美しく撮影できるようにすることでハードルを下げる → 本体のデザインとアプリの共同
をハードとアプリのデザインで一度に解決しようとしているわけです。
置く場所は机の上とは限りません。居間のカウンターの上、玄関先、台所、子供部屋。これまでScanSnapが侵食できていなかった場所にSnapLiteは置かれます。
撮るものは紙や名刺とは限りません。小物、子供の拾ってきたどんぐり、いっしょに描いたラクガキ、ふとでてきた一枚の写真、「ちょっとこれみてよ」と誰かに教えたくなるすべてのもの。ScanSnapがこれまでスキャンできていなかったすべてのものがSnapLiteには開かれています。
そう、SnapLiteはデザインはこれからスキャンされるものを発掘するために最適になるようになっているのです。今の便利だけでなく、次の便利がきっとここから生まれるのです。
あまり知られていないかもしれませんが、PFUはScanSnapだけでなく、キオスク端末や、半導体製造機など膨大な数の製品を製作する「縁の下の力持ち」の一面もあります。
その技術力が結晶しているのが、PFU のProDesサービスで、これは企業側が必要としているニーズから設計、開発、生産、保守までを一手に担います。
そしてここでのPFUの持ち味が、機能性の高いハードの力をソフトウェアで引き出すというスタイルです。
ScanSnapの便利さもそうですよね。精度の高い紙送りとスキャン技術だけでなく、Evernoteとの連携や、名刺の読み取りに発揮されるソフトの力があってこそのものです。
ハードとアプリの味のあるバランスを知っているおかげで、PFUの製品は現実においても様々な境界を超えてゆく性格をもっています。
アナログとデジタル、手元に置きたいものとクラウドにアップしたいもの。いま必要なものと後で要るもの。人と機械。境界をぼかし、乗り越えるのがPFUの遺伝子なのです。
この点については、金沢に行った際にも恐れ多くも本社の皆様の前でお話しさせていただいたのですが、問題さなそうですので公開しておきますね。
SnapLiteをみて「自分に必要だろうか?」と少し引っかかりを感じた人は、まさにこの境界のふちに立っているといっていいと思います。
そんな人は手元を見回してください。いまはスキャンされていない何かがありませんか?
「自炊」前夜のときとこれは同じです。それを写真にして誰かに見せてみたら、ブログに書いてみたら、Evernoteに保存してみたらなにが起こる気がしませんか?
それはSnapLiteから「次のなにか」への誘いかもしれませんよ!
p.s.
今回SnapLiteを開発したのが女性中心のグループというのも個人的には大注目です。
このチームでこれからSnapLiteのような製品をシリーズ化してゆくそうですので、継承されて新しくなるPFUのDNAに期待してます。
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