世界をつなぎとめる接着剤のような会社、3Mの凄さの源
しばらく前になりますが、ポストイットで知られる株式会社3Mのブロガーイベントに参加してきました。
第一回目のテーマは「意外と知らないテープの歴史」で、マスキングテープ、セロハンテープの誕生秘話や、接着剤全般についての面白い話をうかがってきました。
これだけだと「3Mってテープと付箋だけのありふれた会社でしょ」「接着剤? テープ?そんな当たり前のものの話をきいて何が面白いの?」と思うかもしれません。
でも以下をみたら、すこし興味がわかないでしょうか?
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3Mの創業は1902年、もともとはMinnesota Mining & Manufacturingの頭文字をとったことからもわかるように採掘ベンチャー会社で、その後化学・素材事業を始めたいわゆる「100年企業」!
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世界有数のコングロマリット、つまり複合企業体で、その独特な経営方法は世界中の企業の参考にされている
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3Mが生産する製品の数はなんと55000種類。接着剤、研磨剤、ラミネート、防火材、歯科用品、電気用品、医療製品、自動車関連製品、電子回路素材、光学製品などあらゆる場所にある
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製品の開発はときとして数十年にわたって続けられ、世界中65の3M関連企業のうち35が現地のラボをもつ世界的な研究企業体という側面も
スマートフォンの液晶画面から、車の内装にいたるまで、たいていの人の3メートル以内にかならずなにか3M製品があるというのだからすごい。
でも、これほどまでに社会に浸透しているのに、実際のところはあまり聞いたことがない空気のような存在、それが 3M という会社の面白さです。
今回のブロガーイベントでは「テープ」を題材にその会社の100年企業たる秘密について取材してきました。
最後に第2回イベントの情報もありますよ!### 接着、テープの意外な広がり
ひとくちに「接着」「テープ」といっても、用途に応じてさまざまに接着力も、剥離性も、性質も変えなくてはいけません。
セロハンテープは手軽に紙や壁や表面につかないといけない一方で、マスキングテープは剥がれなければ困ります。強力に接着して水をよせつけなくする必要がある場合もあれば、医療用テープは空気や水蒸気を通過させる必要があります。
たとえばこの、工業用の VHB (アクリルフォーム構造用接合テープ)は、サンプルで使いましたが、およそ信じられない接着力をもっています。
サンプルの、アルミ板に塗布された VHB を使ってみます。
剥離紙をはがし、アルミ部分を曲げて軽く接着面をアルミにつけると…。
うんうんと両手でひっぱっても剥がれないほどです。アルミは滑らかなのに、どうしてこれほどくっつくのか。いったいどういう仕組なのか…。
この VHB はボルトやリベットを使いたくない、曲線的な建物の外装を貼り付けてしまうために利用されていて、風雨や侵食に対しても強い強度を保つのだそうです。
家庭でなじみがあるものとしてはこちら、はってから剥がすことができる「コマンド」ですね。
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これもつかってみないと信じられませんが、下からびょーんと伸ばすときれいに剥がれてしまうという製品です。最初に使った時、信じられずに予備の分を全部使ってどうなっているのか観察した覚えがあります。
マスキングテープから始まった 3M の接着の歴史
3M の接着の歴史は1922年に、マスキングテープの発明から始まったといっていいでしょう。
1920年代に流行ったツートンカラーの車の塗装をする際、色の境目をきれいに塗るためにつかわれていたテープが塗装そのものを剥がしてしまうのをみた3M社員のリチャード・ドリューが、低粘着のテープを考案したのが、マスキングテープです。
そもそもこの発想がおかしいわけです。テープといえば、接着させるためのものですから、粘着性は強ければ強いほどよいというのが普通の発想です。
しかしあえて低粘着で、はがしやすいテープによって「マスキング」という、それまで難しかった用途をあぶりだしたという風にいえるでしょう。
最初のマスキングテープは圧力で粘着性をもつ接着剤がテープの両端にあって、まんなかにはありませんでした。
そのため、テープが簡単に剥がれ落ちてしまい、イライラした塗装工がドリューに「このテープをお前の Scotch な(ケチな、の意味の差別的なスラング)上司にもっていってもっと接着剤をつけろといえ!」と悪態をついたという伝説があります。
3M の人も諸説があるということでしたが、これがのちのcellophane製のテープ、つまりはセロハンテープのブランド名、Scotchとして定着したというわけです。(ちなみに「セロテープ」はニチバン登録商標なのだとか…みなさんセロハンテープと言うようにしましょう…)
100年企業を支える「地の塩」のような製品群
このマスキングテープとセロハンテープの歴史の話には、面白い側面が2つあります。
一つは、3M の社員であるドリューが街でニーズをみつけ、それを自社のラボで開発したという自発的なものだったということです。実際、ドリューはサンドペーパーを試験するために自動車工場に出入りしていて、接着は彼の専門ではありませんでした。
マスキングテープの開発にのりだしたドリューを当時の社長はたしなめたそうですが、一方で彼が隠れて開発を続けるのを見逃していたふしもあります。
それがいまに至るまで3Mで実践されている、**就業時間の15%を自由な研究開発に使って良い、そのためには社のリソースも使えという「15%ルール」**の元になっているそうです。
もう一つの側面は、3M がこのテープの開発によって、研磨剤から接着剤という多角的な分野へと進出した点です。
現在では3Mは医療用のテープ、建築用テープ、電子機器や自動車の内部で利用される特殊な接着など、さまざまな分野に広がっています。
3M といえば「ポストイット」といったように、完成された製品で語られることが多いわけですが、実際のところ 3M にこれほどの力を与えているのは見た目でわかりやすい完成品ではなく、そこに使われている接着技術なのです。
見た目にわかりやすいところに実は本質がなく、もっと基底に近い部分に力の源がある。100年続く企業ってこんな感じのものが多いですよね。
基底に近い技術を追い求めることは、一見してわかる完成品の見栄えの良さからは離れてしまいますが、もっと長いスパンでの成功を呼びこむことができます。
たとえば先程のVHBですが、いまはボルトや釘が前提となっている建築技術や建築に関する法律が、次にはこのテープが使われることを前提として進化したとしたら? どんな建築や芸術がうみだされるのでしょう?
でも、ものとものを貼りあわせたいというニーズは、人類が物を作り続ける限り存在するはずです。3M はその部分に膨大なリソースと、発想を呼びこむ社風を保っているというわけです。
英語には The world is held together by duct tapes「世界は粘着テープでつなぎとめられている」という冗談めかした表現があり、どんなものが壊れたとしても、たとえば会社が倒産しても「壊れたって? テープがあれば大丈夫」というジョークを聞くこともあります。
3M はこの表現を地でいった、まさに世界をうらでつなぎとめているような会社なのだと、今回の取材で知ることができました。
第2回目のイベントも!
さて、テープと接着剤は 3M の持ちネタのほんの一部分に過ぎません。
55000種類の製品、そのすべてがなんらかの形で先ほどのべたような「世界の基底」につながっているというのが3Mの恐るべき点であり、それを知ることができると、見栄えのする完成品ばかりをみていた視点が切り替わって、本当のイノベーションとはなんなのか考えが深まるのがこうしたイベントのよいところです。
【第2回「ざ・3Mセミナー」参加者募集!】今回のテーマは「着て、かぶって、守る、3M!」 日時:6/24(火)19:00~20:30(@住友スリーエム本社) http://t.co/9TWXgEug7b (締切:6/16) #3mjp pic.twitter.com/VvfQr4MXJq
— 住友スリーエム (@3M_jp) 2014, 6月 3
というわけで第2回目もすでに企画されていて、今度のテーマは「着て、かぶって、守る、3M!」です。ああ、あそことあそこの話か…これまた奇跡のような技術の話が聞けそうです。
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