内向的でも成功するために必要なもの: Jonathan Fields・Susan Cain対談 #WDS

wds2012-552 World Domination Summit 初日午前中最後の講演は、Jonathan Fieldsさんと、Susan Cain さんの対談形式でした。Jonathan Fieldsさんといえば不安を力に変える方法について書かれた “Uncertainty ” などの著作で知られており、Susan Cainさんは「内向的な人の力」のTEDトーク、そして同じテーマを扱ったベストセラー “Quiet ” でいま注目されている人です。

私も高校の心理学の授業で、マイヤーズ・ブリッグズ性向指数(MBTI)のテストを受けた経験があり、しっかりと「内向的」であるという結果が出ていますので、この対談はとても期待して聞いていました。### 内向的なことは、人が嫌いなわけではない

Introvert =「内向的な人」というと、「根暗」「人付き合いが嫌い」という具合に理解されることがありますが、実際はそうではないと Susan Cain さんは説きます。

「内向的な人は、anti-social なわけではなく、外向的な人と比べると刺激に対する反応の仕方が違うだけなの」

Susan さんはこのことを子供の頃のサマーキャンプで初めて意識したといいます。読書好きで、家族がたがいに静かに読書しているような家庭に生まれた Susan さんは、サマーキャンプもきっと小さな女の子たちが寝袋を並べて読書する場所だろうと想像していました。

しかしキャンプの大人たちは子供たちを集めて「さあ、キャンプ魂を燃やそう!」「アグレッシブになろう!」と号令をかけはじめ、そのことに Susan さんは衝撃をうけます。チームワークをしなければいけない雰囲気のなかで、彼女は一人で本を読むことが「恥ずかしいこと」といわれたのも同然だったのです。

声を上げ、競争の爪を研ぎ、目立つことを要求する世の中のなかで、内向的な人は息をひそめて生活していると Susan さんはいいます。その数は、世界人口の3割とも、4割ともいわれています。

100%内向的な人はいない

「自分も内向的な方だけど、こうしてスピーチをする仕事をしていたりするんだよね」と Jonathan Fields が質問をします。「でもスピーチが終わったあとに逃げたくなったり、その日によって波があるみたいだ。これは普通なのかな?」

もちろん、と Susan が答えます。「100%内向的な人なんていないわ。それは狂った人間に違いないとユングも言っている」

たとえば仕事と家庭では反応が違ったり、相手を知っているか知らないかで反応が変わることもあり、多分に文化的な背景でも内向的な人の挙動は変わるというわけです。特に、目立つことがよしとされる西洋文化に比べて、和を保つことをよしとするアジア的、儒教的な文化圏では内向的な性質がより尊ばれることさえあるのだとも。

「たとえば韓国ではクールな人と周囲に思われていたのに、アメリカに留学したらとたんに逆に思われるようになったと私に打ち明けた人もいるわ」

つまり「内向的なこと」がいけないことでも恥ずかしいことなのでもなく、「何が受容される」のかによって内向的な人の宿命は大きく変わるわけです。これは社会一般でも、オフィスや家庭といったミクロなスケールでも同じです。

ブレンストーミングは無意味?

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「でも、社会は常に目立つ人を要求するよね?」と Jonathan が質問します。「こうした人が会社で成功したり、昇進をするために必要なものってなんだろう?」

Susanはこれを2段階で攻めなくてはいけない問題だと答えます。「内向的な人も、自分の提供できる価値を伝えるために声を上げるべきポイントがある。自分にとってそれはどこかを把握するのはとても大事なの」その上で、会社や組織が内向的な人の力を引き出せるフォーマットを作ることも非常に大事だと説きます。

たとえば、いま一つの潮流になりつつある「オープンオフィス」という形式があります。複数の階や部屋にオフィスを分けるのではなく、一つの巨大な部屋に全スタッフを集めて会話を促進しようという動きで、これを実践している代表的な例として Pixar が挙げられます。

しかしこうしたオープンオフィスは結局コミュニケーションを生み出すどころか、外向的な人の独壇場となってしまって、本来ありえたこぢんまりとした会話も不可能にするかもしれないのです。

また、ブレンストーミングのようなグループ内の対話によってクリエイティブになろうとする試みも、たいてい無駄に終わるのだと Susan さんは指摘します。

「ブレンストーミングは外向的な人の机上の空論に過ぎないわ。その後の研究で、グループでアイデアを考えるよりも、各自が一人で持ち帰って考え、それを統合した方がクリエイティブな結果が生み出せるという結果が複数あるのを知っている人は少ないの」

たしかにそれは知りませんでした。

内向的な人に必ず必要なもの

さらに、内向的な人はおとなしくて勇気に欠けるという先入観もあるかもしれませんが、むしろ逆だと Susan さんは指摘します。内向的な人は、この外向的であることを要求する世界に、そこにそうしているだけで勇気を振り絞っていることがよくあるわけです。そうした内向的な人に「もっと発言しなよ」「もっと外向的になれよ」というのはいかにも酷なのですね。

「これは僕の専門である『不安』とも大いに関係がある」と Jonathan が言います。「内向的な人が感じる恐れ、これは social-rejection 社会的拒絶に対する恐れなのだけど、これは脳の『不安』を感じる部分と共通する部位が支配しているんだ」

逆にいうと、内向的な人であっても「不安」を御するために利用できるテクニックを駆使することで、その不安を管理することはある程度可能だというわけです。具体的な例として、ネガティブな意見の頻度や質を管理するだけでも、この不安のレベルを上げ下げできるといいます。

「この会議の主催者、クリス・ギレボーはあきらかに内向的な人だけど、彼の秘密はなんだと思う?」という Jonathan の質問に Susan は即答します。

「Conviction、信念よ」

「内向的な人が違いを生み出すには、外からどんな風にみられてもよい、どんな風に否定されてもかまわないと思えるほどの信念がなければいけない。それを持てば、内向的な人だって世界を変えることができるのよ」

内向的で、いじめられた経験ももつ私にはそれは力強い言葉でした。私はこの世に fit in するだけの存在でなくてもよい。はみ出しものであってもいいのだという励ましの声だったのです。

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。