心が傷つけられるからこそ、真の価値が生み出せる:Brené Brown 基調講演 #WDS
アメリカ、ポートランドで開催中のプロブロガー、マイクロ起業家たちの祭典、World Domination Summit からお届けしています!
WDSの土曜日と日曜日のメインイベントでは、いくつかの基調講演とワークショップが行われます。まず最初に登場したのが TED の “Power of Vulnerability” という講演で有名な Brené Brownさん。
彼女のトークのキーワードは「Vulnerability」傷つきやすさ・弱さです。それがなぜプロブロガー、マイクロビジネスに関係するのか。最後まできいたときにたいへんな驚きが待っていました。### The True Currency:人と人をつなぐ本当の「通貨」
私たちは経済的な世界に住んでいますが、その通貨は本物のお金だけではありません。ブログ記事にこめた「思い」や、製品・サービスが提供する「価値」もまた、一つの通貨です。
しかしこれは言うはやすし、行うは難しでもあります。ちょっと気持ちをこめた記事をかいても「そんなことは無意味だ」と言われてしまったり、「あなたの製品・サービスはクソだ」と言われてしまったり、傷つけられる瞬間はたくさんあります。
「だからこそ」と Brené さんは強調します。「そんなときでさえもあなたが人にしてあげられること」が真の価値、あなたを他の人につなぐ真の通貨として機能するのです。
Vulnerability を可視化する
これを目に見えるようにするために Brené さんは1000人の来場者全員に立ってもらって、全ての人に「腹の底から笑ってみてください」と呼びかけました。案の定、全員が身体を揺すって大笑いしてくれます(ノリがいい、というのでは済まないWDSの雰囲気です(笑))。
次に Brené さんは「私に続いて歌って」と有名な曲の出だしを歌います。するとサビまで歌わずには止まらない勢いでみんなが大声で歌います。
最後に「Don’t mess with me」「私に触るな」というメッセージを伝えたいときどうしますか? という質問がやってきたときだけ、反応がかわります。ほとんどの人がその場で立ったまま、腕を組み、どこか威嚇的な目で周囲をみたり、携帯電話を触っているフリをします。
(すみません、いろいろ深刻な誤解の末にジョジョ立ちしていたのを Brené さんに笑われたのは私です。でもある意味「私に触れるな」ですよね(笑))
何に心が傷つけられることを許すか
この実験が示していたのは、相手に「おまえには傷つけられないぞ」というポーズをとるとき、人は身動きせず、言葉をなくし、あるいは携帯電話に目を落としてコミュニケーションを拒否するということです。
しかし、ここで Brené さんは非常にはっとさせられることを口にします。「人は誰かに拒否されたり、傷つけられてもよいと思う程度によって、オープンであったり、優しかったり、喜びを感じたりできる。傷つけられても伝えたいと思うのものが、愛・喜び・クリエイティブさ、感謝だったりするのよ」
たとえば愛する子供の寝姿をみているときに、「この子に何かがあったらどうしよう」という気持ちがわき起こることがあります。
これは「この子に何かがあったとしても、不意を突かれて傷つきすぎないようにある程度考慮にいれておこう」と、Vulnerability に負けていま目の前にある幸せを割り引いてしまう行為なのだと Brené さんは指摘します。
逆に、愛する人が愛し返してくれない、愛する人の安全を100%保証することなどできないと受け入れるとき、心には現在に対する感謝や、おちつきが生まれます。
これは人生を変えたいと願っている人、あるいはプロブロガー、起業家にとってどんな意味があるのでしょう?
Scarcity よりも Gratitude + Joy
Brenéさんはこうした「傷つく心を認める」という作業からさまざまな変化を受け入れる気持ちや、人に価値を届けたいと思う気持ちが生まれるのだと説きます。
たとえば「Scarcity(足りない)」という気持ち、つまりは収入が足りない、分け前が足りない、ツイッターのフォロワーが足りないという気持ちからスタートするのではなく、それがもたらす気持ちを乗り越えて「足るを知る」ところからスタートができるようになります。
というのも、満たされてから人生が変わるのでも、製品を生み出せるのでもなく、その渇望から人は動き出すからです。
Comparison よりも Creativity
あるいは、人との比較をして「あの人ほど自分はできない」という場所にとどまるのではなく、「自分は下手なりになにができるだろう」からスタートした方が、クリエイティブになれます。
ひとはクリエイティブな人とそうでないひとがいるのではなく、それを使うか使わないかという Brené さんの言葉に私も完全に同意です。
Critisism と Cynicism よりも Contribution
または、批判やシニシズムに屈するのでなく、より貢献できる人間になるためにも、この「傷つく心」を意識することが役立ちます。
批判やシニカルな意見は、突き詰めれば「お前は何様のつもりだ」というメッセージを私たちに伝えて私たちを傷つけようとします。しかしそれを受け入れて、**「私は何様でもない。ただ挑んでいる人で、うけるべき批判は受け入れ、シニカルな意見は無視する」**というスタンスだってありうるのです。
Fitting in よりも Belonging
最後の比較は日本人にとってとても大きな意味があると思いました。それは、fit in する「その場になじむ」ことと、belong する「本当に属すること」は違うという点です。
ただ社会になじんだり、家族や組織からつまはじきにされないように努力していると、それはどこかで自分の個性に制限を加え、「なじむ努力」をしなければいけないということになります。
ある程度はそれも重要なのでしょうけど、しかしそれは、その規範を踏み越えると拒否されてしまうのではという不安を常にかかえることになります。
そうして群衆になじんでしまうよりも、「私はこういう人間だ」「私はこういう仕事をとどける人だ」というメッセージを明確化した方が心も楽ですし、ブロガー・起業家としても成功しやすい、というわけです。
Don’t Stop Believing
「傷つく心」からは逃れようがありません。「自分はここにいていいのか」「なんだか変じゃないか?」「浮いてない?」こうした疑念は次々わいてきます。
しかしこの「傷つく心」こそが、自分の人生を定義する最前線であり、人と人とをつなぐ価値を生み出すところであり、それを意識することで現実的なメリットも多いというのが、Brenéさんのメッセージでした。
「そして、最後には、私たちの考えや気持ちが相手に伝わることを信じるしかありません」ここまで 70年代の音楽への言及が多かったBrenéさんが首をかしげます。
「ふむ…信じることをやめない…やめない…Don’t stop Believingといえば…」
ここで彼女のキューを感じ取った観衆が「Journeyだ!!!」と大声で叫び、信じられない展開に。
最前列の私たちがステージの上にかつぎだされて Glee スタイルで “Don’t stop believing” を大合唱!
ええ、歌詞とかむちゃくちゃですけど歌いましたとも!
なんだこれ、すごすぎる!
というわけでまた初日の最初の基調講演ですけど会場は大興奮です。
まだまざ続きますよ!