Lifehacking.jp

オバマ上院議員の演説に達人の技を見た!

Friday, 4 January 2008 · View Comments · Leadership

speech.jpg

オバマ議員のアイオワ州での勝利スピーチがすごい。

政治的な中身は別にしても、構成とメッセージ性でこれほど秀逸に作られたスピーチはここ最近なかった気がします。スピーカーで聴いていたら、英語をほとんど聞き取れない家内が興味を持ってやってくるほどでした(笑)。

今回オバマ議員が制したアイオワ州党員集会は今後の候補者指名の重要な通過点となっています。アイオワを制したとしても最終的な候補になれるとは限らないのですが(実際、クリントン元大統領はアイオワでは3位でした)、5日後のニューハンプシャー州の予備選挙を前にオバマ議員がこのチャンスを最大限活かそうと努力しているのは明らかです。

たった14分間のこのスピーチには、キング牧師やケネディ大統領のスピーチを十分に研究した構成、候補者指名と大統領選挙を見越した戦略性、そして浮動票に訴える強いメッセージ性のすべてが入っていてうならされます。

政治的な内容はさておき、この完璧なスピーチの何がすごかったのかを分解してみます。

構成

約 14分間のスピーチは全部で4カ所に分かれています。

1. 最初の6分ほど:「みなさんは今日、アメリカは分裂しているべきではないと声を一つにした」「みなさんは今日、大企業やロビイストではなく、普通の人が主役なのだと言ったのだ」という具合に、「私が」ではなく、票を投じた「あなたたちは」という聞き手を主役にすえる文章が続きます。「あなた」= 「聴衆」に主眼をおくことで、聞き手を引き込むテクニックです。 また、ここでは時勢は「完了形」であることにも注目です。

2. 中盤の2分ほど:「今日票を投じてくれた人、スタッフ、家族に感謝する」と、感謝の言葉をいれて話をいったん切っています。これはスピーチの最後にもごもごと謝辞を言わなくてすむようにするためであるとともに、観衆に声援を送らせて話題を切り替えるチャンスを作る、構成上の一石二鳥のテクニックです。

3. 後半の4分ほど:「みなさんはいつか今日、この日、この場所で、歴史がかわったことを思い出すだろう」と繰り返し同じメッセージが繰り返されます。ここから文の主語が少しずつ「あなた」から「私たち」にシフトしています。また、聴衆に私が大統領になれば未来はこうなるだろう、という具合に文の時勢が「未来」にシフトします。これはもちろん、ニューハンプシャー州と大統領選挙をにらんだ未来形です。

4. 締めくくりの 2分ほど:「希望とは、アメリカの礎である。それはよりよい未来を作れるという確信であり、共和党と民主党に分裂したこの国を、そして世界をより正しい方向に導けるという信念なのだ」という「希望」に関するメッセージで締めくくります。感情に訴える表現は、(事実であるかどうかは別として)これまで共和党支持者だった人と、若い人々を動かすためのものです。事実、今回のアイオワでは30歳以下の党員の65%がオバマ議員に投じているので、自分は分裂したアメリカをまとめあげる人間なのだと言うイメージを植え付けることで、浮動票を取り込む戦略です。

4カ所に分けてあるのは一つの話の流れを長くても3、4分にして、流れをつかみやすくするための工夫だと考えられます。 主語が「あなた」から「私たち」に、時勢が「完了形」から「未来形」にシフトしているのは、まず今日の成果をおさえて、次に5日後に向けて自分が「私たち」の統率者だというイメージを作り上げようとしているのだと考えられます。

戦略性とメッセージ性

途中で、「自分はケニア出身の父とカンサス出身の母をもち、この国以外ではありえない道を辿ってここにきた」と韻を踏んで呼びかける文がありますが、これは自分がワシントン官僚寄りではなく、中産階級寄りの人間だというイメージを植え付けようとしてのものです。暗に、いつもワシントン寄りだと言われているヒラリー上院議員を落とす効果を狙っているようです。

「いつかこの日を○○の始まった日だと思い出すだろう」という文脈は、自分が未来の大統領となることがあたかも予定調和であるかのように印象づける効果をもっています。論理的に解きほぐすと、そうでなければいけない理由は何もないのですが、アイオワ州での逆転勝利が実は予定調和なのだと印象づける戦略は、それを聴いているニューハンプシャー州の党員に強い効果を持ちそうです。

また「 いつかこの日を○○の始まった日だと思い出すだろう」という文章を繰り返すのは、キング牧師の有名な I have a dream のスピーチにもみられる技法で、単純なメッセージを繰り返すことで共感のクレッシェンドを高めていき、最後に一気に結論になだれ込むというものです。聴衆がのってくるときには、これはものすごい大きな効果があります。

よーく論理的に読んでみると、オバマ議員のスピーチには論理の飛躍や、現時点で保証できるはずもない約束をしている部分がたくさんあるのですが、人は見た目が9割という理屈でいくなら、このスピーチをきいて心を動かさない人はなかなかいないでしょう。

見た目9割のイメージ喚起力と、首尾一貫した論理的バックアップを併せ持っているスピーチが最強のものだとあらためて思いました。

ヒラリー上院議員に対して劣勢だといわれていたオバマ議員の躍進でずいぶん面白いことになってきました。オバマさんは私の出身地のイリノイ州の議員なので、単にそれだけの理由で応援したくなるのですが、これからどうなるのでしょうか。

Tags:

Currently: View Comments

  • 1 kabin // Jan 5, 2008 at 8:53 pm

    毎記事、熟読させてもらってお世話になってます。
    今回の記事の内容については触れませんが、
    いつもの包括的な説明とは違うスタイルだったのがとても印象に残りました。
    Lifehack.jpさんのそれぞれの記事は参考になり座右の銘にでもしたいくらいなのですが、今回のような具体的な解説を盛り込んだ記事もおもしろい!と感じました。
    コメントにならないようなコメントで申し訳ありませんが更新がんばってください^^

  • 2 え? // Jan 5, 2008 at 9:22 pm

    他の候補者も同じようなテクニックは使っていますよ。
    というか、米国大統領選の演説って昔からこのようなテクニックはあたりまえです。 普通すぎてテクニックとも言わないと思います。

    結局のところ重要なのはそんな小手先のテクニックではなくて政策ですよ。 (選挙資金は無視すると仮定しての話ですけどね:p)

    - johnny

  • 3 mehori // Jan 5, 2008 at 9:54 pm

    kabin さん:

    > 今回のような具体的な解説を盛り込んだ記事もおもしろい!と感じました。

    ありがとうございます!
    時事ネタなのであまり熟考もせずにだーっと書いたのですが、そう書いていただけてうれしいです。

    そうですね。もうちょっとこういう記事も増やしてもいいのかもしれない…。いまだに試行錯誤中です。

    johnny さん:
    > 普通すぎてテクニックとも言わないと思います。

    いやあ、奇をてらわずに「普通」に情熱的なスピーチで観衆をひきこむのが一番難しいと思いますよ。

    大統領候補ともなれば、この程度は「普通」にやってほしいとは思いますが…(笑)。

    > 結局のところ重要なのはそんな小手先のテクニックではなくて政策ですよ。 (選挙資金は無視すると仮定しての話ですけどね:p)

    その通りだと思います。このスピーチはすばらしいですが、そのことはオバマ議員が最も大統領の資質があることの証明にはなりません。最終的にはちゃんとした政策論争と、時の運が大統領を決めるはず。

    でもそれでも良い大統領が選ばれる保証はないんですよね。G.W.ブッシュの就任演説も見事だったのを思い出します…。

  • 4 artschi // Jan 6, 2008 at 1:42 am

    初めまして。
    興味を持ったけれどあまり聞き取れない人のためにCNNによる書き起こしを。
    http://transcripts.cnn.com/TRANSCRIPTS/0801/03/se.04.html

    選挙の時ばかりはアメリカが羨ましいですね。

  • 5 Ayana // Jan 7, 2008 at 11:56 am

    オバマ氏のスピーチは他の大統領候補が真似したくても真似出来ない様な(ブッシュ大統領のスピーチの場合は間違いばかりで真似したらお笑いのネタになったスピーチが多い)人々の心に残るパワフルなオーラを持ったスピーチでした。オバマ上議員は人を引き付ける魅力を持った方なのでこれからも頑張ってほしいですね。人種を超えて新しい世界を開くプレジデントになってくれると嬉しいです。

  • 6 nom // Jan 7, 2008 at 5:28 pm

    オバマ氏のスピーチの迫力にヤラれて、「オバマ 演説」でググってたら、すでにブックマークに入っていたココがヒットしました。
    ナチュラルな英語が完璧に聞き取れるレベルではない私でも彼のスピーチはJFKに匹敵するものがあると感じてしまいます。

    余談ですが、米国でクリスマスから公開している「The Great Debaters」という映画(オプラ・ウィンフリー制作、デンゼル・ワシントン主演、フォレスト・ウィテカー助演)が結構面白そうなのですが、これはひょっとするとオバマ氏のイメージUPを狙った映画なのでは?と思いました。
    http://www.thegreatdebatersmovie.com/
    http://www.apple.com/trailers/weinstein/thegreatdebaters/

  • 7 e // Feb 5, 2008 at 12:21 am

    上でもどなたか指摘されていますが、オバマが他の候補と異なっているのは、小手先のディベートテクニックではなく、ケネディやキング牧師のようにアメリカのビジョンを国民に直接訴えかけた事です。反戦だの福祉だの有権者の望む事をポイント押さえて効果的に演説するのはヒラリー他の候補がやってることです。

  • 8 nb // Feb 23, 2008 at 2:32 pm

    初めて記事を拝見しました。このサイトはポリティカルなものではないと思いますが、コメントさせて頂きたいと思います。Johnnyさんのおっしゃる通り、要は政策です。オバマ氏のスピーチの耳触りが良いのは、クリントン前大統領のようにオーディエンスが聞きたいと思うことをスピーチにしているからだと言われています。夢物語と言っても過言ではありません。非常に簡単な単語と短いセンテンスで話すのは、候補者によく使われるテクニックですが、オバマ氏の目的として、特に低所得者、教養のない人、ブルーカラー、「政治」「選挙」「投票」とは無関係な人たちにも、メッセージを届かせるためでもあるからです。それは彼の選挙活動をみても明らかです。しかし、政治に興味の無い人達、今まで投票をしたことが無い人たち、新聞が読めない人達が、一体、世の中の何を知っていて、誰が大統領に適任で、誰がどんな政策を打ち出していて、誰が矛盾を言っているか、分かるのでしょうか。オバマ氏は、この、今まで眠っていた票も狙っているから、政策がどうの、というより、こういった耳に残るスピーチを好むのです。アメリカが建国された当時、一般の市民に選挙権が与えられなかったのは、地域や国の代表を選ぶに値する知識を持ち合わせていなかったからです。民主党を好む人達には、俳優、歌手などを含め、マテリアル主義な、自由な、そして無責任な発想を持った、表面的に物事の判断をする人が多いので、こういった類の票を少なくするためにも、選挙権を得るために試験があっても良いのではないかと、言われています。オバマ氏のスピーチに戻りますが、彼は国民が「そうだったら良いのにな」と思うことを演説しています。ホワイトハウスで議案が出るたびに、殆どの場合、賛成でも反対でもなく”present”とだけ投票して、後から非難を浴びないようにと努力してきた、政治家として全く経験の無いオバマ氏が彼のスピーチにあげている目標を実現できる方法を、誰もが知りたがっています。彼は、①イラクからの撤退と軍事費を減らすことを約束し、同時にテロリストを許さないと言い、②ブッシュ大統領の軍事予算が多いと非難しておいて、「アメリカ軍はイラクでタリバンの兵器を使わざるを得ないほど武器不足だ。」とコメントをし、③国民全員に健康保険を与えると約束し、同時に減税をすると言い、④中流層の税金を低所得者層に回すと言い・・・。オバマ氏のスピーチの行く先は、社会主義国家です。大学を出て真面目に働き将来の計画を立てて生きている中流層から多大な税金を取りあげ、ヒスパニック系や黒人の多くに見られるような、教育も受けず仕事にも付かず税金も払わずに生活している人たちに生活保護を与える、要するに、頑張れば頑張るほど、損をする社会です。資本主義では全くありません。国民全員に保険を与える予算は何処にあるのでしょうか。クリントン上院議員を含め民主党候補のスピーチは素晴らしく夢に満ちていますが、残念ながら実現からは程遠い、矛盾だらけの夢物語です。倫理問題をとっても、妊娠28週を過ぎての中絶を認めたり、同性愛同士の結婚やマリファナなどの合法化など、子供達の将来まで不安です。私は、共和党の保守的な古きアメリカの伝統が私達を守ってくれると信じています。ブッシュ大統領のスピーチはコメディーに使われたりしていますが、少なくとも、彼はクリントン前大統領のように「スピーチ上手で嘘つき」ではありません。ゴア元副大統領は地球温暖化の対策に躍起になっていますが、彼の生活ぶりを知ったら驚きです。ブッシュ大統領は、京都議定書にサインしませんでしたが、不言実行、彼のテキサスの自宅は省エネ、そしてエコ生活を送っています。CO2削減!と言っている政治家やハリウッドのスター達の生活ぶりは、みなさんもご存知でしょう。・・・長くなっていましました。保守派のニュースやレポートは日本ではNHKでもほとんど取り上げられませんが、私が尊敬するTony Snow, Neal Boortz, Glenn Beck, Bill O’Reilly氏の現実的な、真に迫る意見をぜひ参考にして頂きたいと思います。名前の後に.comをつけるかGoogleでサーチしてみてください。

  • 9 nb // Feb 23, 2008 at 9:47 pm

    訂正。前文の「「ホワイトハウスで議案がでる」は「議会で新案がでる」の間違いですね。失礼しました。夜遅くに投稿してしていると、こういうことになる・・・。

  • 10 davidia // Jan 19, 2009 at 10:38 pm

    日本人都是傻逼

  • 11 ●内田恭子ラブホテルでの卑猥動画【流出】 // Jan 20, 2009 at 12:05 pm

    ●内田恭子ラブホテルでの卑猥動画【流出】

    元フジアナの内田恭子ことウッチーのプライベート映像が流出!

    http://uttykyouko.blogspot.com/

    ベッドの上での艶かしいポーズの写真や、はめ撮り映像まで。

    http://uttykyouko.blogspot.com/

    テレビでは見れないエッチなウッチーの画像・映像の数々をご覧ください。

  • 12 ●松たか子アワだらけの全裸入浴シーン【期間限定動画】 // Jan 20, 2009 at 12:06 pm

    ●松たか子アワだらけの全裸入浴シーン【期間限定動画】

    松たか子が映画で”泡まみれ全裸入浴シーン”を披露して話題になっている。

    http://matutakako.blogspot.com/

    この後ろ姿の”泡だらけ全裸”は、まさに目を釘付けにさせるほどの絶品ぶり。”ソープの泡踊り”を妄想してしまうほど。

    http://matutakako.blogspot.com/

    その入浴シーンと撮影ハプニング映像を期間限定で公開!

  • 13 追撃コラム // Jan 31, 2009 at 10:13 am

    トラックバックできないようになっているので、コメントしますが、オバマ演説をほめるのはアメリカに対するコンプレックスからではないでしょうか。
    http://tuigeki.iza.ne.jp/blog/entry/882338/

  • 14 mehori // Jan 31, 2009 at 10:52 am

    私は半分アメリカ人だからコンプレックスというのは、ないです(笑)

    この記事は「演説」としてのテクニックについて述べているものですので、その政治的な内容、具体性などは別に論じる必要があるとおもいます。とはいえ、演説として秀逸なのは多くの人が認めると思います。

    オバマさんの施政方針についてでしたら、ぜひ彼が大統領選出馬前に書いた Audacity of Hope をお読みになってください。良きにせよ悪しきにせよ、彼の民主党的な「大きな政府」の考え方と、なぜそんな考えに至ったかがわかりやすく書いてあります。

  • 15 くろかめ // Feb 1, 2009 at 2:22 am

    文句なしの名演説でしたね。ABCのステファノポロス氏の「皆が大統領の言葉を聞こうと静まり返っていた。200万人集まって、一人も逮捕者がいなかったのは奇跡だ。」という内容のコメントをしていたことが、あえていうなら、その証拠だと思います。今の日本にあのような演説ができる政治家がいないというのは残念ですが。それがコンプレックスという表現にあてはまるかといえば、違うと思います。追撃コラムさんは、オバマ大統領の演説をNHKの同時通訳に頼って聴いていたのかもしれませんね。あの通訳ではまるで政策の羅列でした・・

  • 16 mehori // Feb 1, 2009 at 10:03 pm

    コメントありがとうございます。就任演説はハードな口調で、技巧もあまりないストレートなものでしたね。でも大勢の人が静粛に聞いていたのはたしかに感動的でした。

    この記事はアイオワ州の予備選挙時の演説についてですが、就任演説に比べるとちょっと軽薄なまでに技巧がこらしてあります。状況が違うと、ここまで演説の形式は変わる、いや、変えるものなのかと感心しています。

本記事へのコメントを入力してください

blog comments powered by Disqus