私たちは思った以上につながっている。だから「こんにちは」というんだ: Daniel Noll & Audrey Scott 基調講演 #WDS

Dan audry1 World Domination Summit 2012 二日目にはまだアナウンスされていない講演者のスロットがありました。当日になるまで、それが誰かはわからなかったのです。

登場したのは Uncornered Market の旅する夫妻、Daniel Noll と Audrey Scottでした。

二人はサンフランシスコでの快適な生活をあとにして5年間で世界中の70ヶ国を常に旅する生活をしているという、職業的な「旅行者」です。

いったいどうやってこんな生活が維持できるのかは聞かないでください。私にもさっぱりわかりません。しかし彼らが携えてきた話題は単に遠い国の写真と土産話以上に、興味深いものでした。### 好奇心が旅へと突き動かした

なぜこうした「旅」を続けるのかと聞かれると、夫妻は「好奇心を満たすため」と答えます。見たことがない国があり、会ったことのない人がいて、どんな場所かを知りたいという欲求が彼らを突き動かしています。

しかし普通なら「いつか行けたらいいね」と考えるのに対して、二人は「決して後悔を残さない」生き方を選択しているといいます。十数年後になって「あのとき行動していれば」と考えないように、常に行動を優先するポリシーをとっているのです。

不安がないかというと、旅の途上では不安は24時間続くものだとダニエルはいいます。さまざまな不安に襲われながらも旅を続ける意味について、彼はチェコの初代大統領ヴァーツラフ・ハヴェルの言葉を引用して説明します。

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希望は、もちろん楽観とは違う。それは何かがうまくいくはずだという確信ではない。むしろ、どんな結果になっても納得ができるということなのだ

「うまくいく」確信があるからやるのではなく、「それが正しい選択だと信じる」から実行するというのが、二人の選択した生き方なのです。

私たちは思った以上につながっている

二人はいくつかの旅の物語を紹介してくれましたが、そのどれもが「こんな国にいったぞ」という自慢話というよりは、その土地にいる人との偶然の出会いがいかにすばらしかったかという話題でした。

どんな料理かも知らずにグルジアの市場で現地の豆スープを片言の言葉でお願いしたら、市場の女性たちがいきなりその場でその料理を作ってくれた逸話や、中央アジアの聞いたこともないような土地でアメリカのふるさとの田舎町を知っている人物に偶然出会った話題など、会話を初めてみると意外なつながりが見えてくることばかりだといいます。

「だからどんな国にいても、環境にいても、周囲の人に「こんにちは」と勇気を出して言ってみよう。そこからどんな偶然が待っているかわからないのだから」

グルジアの市場の女性については、ロシアのグルジア侵攻の際にとても彼女の安否が心配になり、ソーシャルメディアで情報を流したところ、彼女のすんでいる街を知っている人がどこからともなく現れて無事を伝えてくれたということもあったそうです。

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そしてこのブログ記事を書くために彼らのブログにアクセスすると、なんとこの二人はいま日本に滞在中だということです。滞在中どころか、私が住んでいる場所から30分の鎌倉での写真をアップしています。

偶然について書いている最中に、3週間前に世界の反対側で会った人が偶然近くに来ていることに気づくのですから、おそるべき話じゃないでしょうか。

こうした旅を人生とした人を「幸運」と片付けるべきではありません。希望が楽観ではないように、偶然が必然の双面であるように、ときには「きっとこれが正しい」という思いに自分をゆだねるべきなのでしょう。

■ 常識からはみ出す生き方

講談社特設ページ

WDS
堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。