成功は GTD と7つの習慣の出会うところにある?

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週末に Works4Life さんの主催した GTD 勉強会に出席しました。

私などはアナログツールでミニマルな(適当な)GTD の実装を OmniFocus で支援しているだけですが、他の参加者の実践方法にはもっとリアルタイムで機動力の高いものがいろいろあって勉強になりました。

もう一つ気になった事、それは参加者のなかに(私自身も含めて)フランクリン・プランナーを使っている人が多かった事です。

これにはずいぶんと考えさせられました。

GTD は不完全です。それは間違いありません。でもそれを補うのが、GTD の仮想敵といってもいい、「価値観ベースの仕事術」「7つの習慣」という事なのでしょうか?

コヴィー博士によれば GTD は…

数日前に Zen Habits の Leo が「7つの習慣」の著者にしてフランクリン・プランナーを生み出した一人でもあるスティーブン・コヴィー博士にインタビューをしていました

そこで Leo は「GTD について知っているか? それについてどう思うか?」という鋭い質問をしています。それに対する答えは、

I have read these books and have enjoyed them and believe they contain elements of wisdom and practical suggestions. But for me and my world they are too simplistic and superficial.

これらの本は楽しんで読みましたし、実際的な知恵と助言が載っていると思いましたが、私にとっては簡単で、表層的すぎました。 コヴィー博士は単に自分の「7つの習慣」を売りたいからこういったとはとても思えません。この方はアメリカ建国以来の古今東西の自己啓発書を研究している大家です。

なにが「簡単すぎる」というのでしょう。

GTD の壁

私にはそれが、GTD の利点でもあり、欠点でもある強固なワークフローのことを指しているのではないかと思います。

GTD ではすべてを「アクション」に分解してゆく事を是としています。たとえ非常に大きな人生の目標があった場合でも、GTD で実行しようとした場合、まず最初に Outcome Focusing を行なって「目標設定」を行ない、マイルストーンなどの中間的なプロジェクトを作成して、最終的にはアクションまで分解していきます。

さて、人生の目標からマイルストーンまで作り終えて、ようやく現実的なプロジェクトが見えてくるのですが、このあたりで急に難易度が上がります。「一千万円の貯金を貯めたい」というのが目標だと分かっていても「じゃあ、毎日この目標のために何をするのか?」という、設定したハードルとアクションの間のギャップが思いのほか大きいためです。

今のままではその目標は実現できないと分かっている。でも何をすればいいのか見えてこない。こんなとき GTD 本を開いても書いてあるのは「ブレンストーミングをしてアイディアを残らずキャプチャーしよう」(原書70p)ということだけです。

私自身の、目標をブレイクダウンする能力が低いだけかもしれませんが、ワークフローだけでは「次になるをするには答えられても」「何をすべき?」には答えられないのです

「価値観」ののばす影

もちろん「『何をすべき』かが全て立ちどころにわかる仕事術」などというおいしいものは存在しないのですが、少なくともどのような道を通ればその理解に近づけるかという、価値観のワークフローは必要なのだと思います。

GTD は現実世界のタスクと時間のワークフローです。GTD は「すべての時間スケールで何事かが進行しているようにする」というベルトコンベアーの部分で卓抜していますが、そのベルトの上に何が乗るのかは、間接的にしかコントロールしていません。

それに対して「7つの習慣」はそれに対して第1から第3の習慣で「何が自分にとって重要か」「何が最優先か」をまず定義しています。GTD のような複雑なコンテキストを駆使した ToDo リストをもっていなくても、頭のなかに「緊急性」「重要性」の2軸がしっかりとイメージできていれば「何をすべきか」という答えに比較的簡単に答えが出るわけです。

だからといって、何百ものメールと電話とプロジェクトにせき立てられているときにいつも正気を保ちながら「最重要事項は…」と言えるかというとそうとも限りません。

忙しい人がタスクを最適に管理しつつも長期的なビジョンを維持したいと考えるとき、あるいは ToDo リストの次の項目を「本当にこれをするべきなのか?」と首を傾げるとき、答えは GTD と 7つの習慣の交点からやってくるのかもしれません。

簡単な能率アップのテクニックや、小さなライフハックにも心引かれますが、それらを知れば知るほど根源的な「何をすべきか」という問いの投げかける影は大きくなるばかりです。一方で GTD がたとえ「簡単で表層的」だとしても、それは自分のなけなしの力をレバレッジするのにどうしても必要なワークフローなのです。

この二つのバランスは、これまでも書いてきましたが、今まで思っていた以上に深くて重要な話題なのかもしれません。

このテーマは今後このブログの中心の一つとして今後も継続して考えていきたいとおもいます。

(あまり禅問答にならない範囲で…)

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。