インスピレーションを量産するワークフローとは

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いつも気になる事の一つに、「非常に多作な作家さんの頭の中」があります。

インスピレーションは、いつもふっとやってくるもので、そうしたひらめきは管理できないのではないかと思う反面、コンスタントに作品を作り続ける作家には、そうしたひらめきをも「ワークフロー」にしているのではないかと思える面があります。

43Folders の昨日の記事に、 非常に巨大な肖像画を描く画家 Chuck Close のインタビューが引用されいていて、画家にもこうした創作のためのワークフローがあることをうかがわせました。

What I found that one of the nice things [about] working incrementally is that I don’t have to reinvent the wheel every single day. Today I did what I did. You can pick it up and put it down. I don’t have to wait for inspiration. There are no good days or bad days. Every day essentially builds positively on what I did the day before. … Given my nature, I believe it was very good for me to be able to add to what I already had and slowly construct the final image out of these little building blocks.

インクリメンタルに働くことのいいところは、毎日車輪を発明し直さなくてもよいという点だ。 今日の作業を行い、それをまた明日も続けて、の繰り返しなのだ。インスピレーションを待つ必要はない。「良い日」や「悪い日」も存在しない。毎日はその前の日の上に積み重なってゆくだけなのだ。こうして現状に対して小さなブロックを追加してゆくことで最終的なイメージを作り出す作業方法は、自分の性格(怠け者で、落ち着きが無い)を上手に補ってくれたといえる。 この画家もそのスタイルと作風を作り出すまでは何度も悪戦苦闘していたのでしょうけれども、いったんそのスタイルが出来上がったら、それを維持するためにこうしたブロック型の仕事スタイルに変化したのではないでしょうか。

最近家内が佐々木譲の小説に傾倒していますが、佐々木氏は非常に多作であるだけではなく、毎日のようにブログ記事を投稿する執筆力の旺盛な方です(GMail 使いでもあるらしい…)。

佐々木氏のブログを見ていると、他の読書に触発された夢想や発想が生の形で時折ほとばしっているのが読めます。それは一瞬のインスピレーションですので必ずしも読み手には理解できない事もありますが、そこで説明のために立ち止まることなく、どんどんと考え事が書き付けられているという印象があります。

読んでいて、これも一種の I/O マネージメントなのかもしれないと思いました。指向する方向を定めて、毎日必要な情報を入手し、それに対して考えた事を頭の中から整理しつつ出してゆく。この一連の作業自体が創作のための仕掛けなのではないでしょうか。そうするうちに、インスピレーションがちょっとずつ加わっていき、新たな作品が生まれてゆくのかもしれません。

毎日書く事ではブログも似ていますので、自分の中でもこうした創造性が養われていると良いのですが。

p.s.

ちょっと旅に出ますのでコメント承認は帰ってきてから行ないます。温泉〜。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。