GTD の欠点(?)を狙い撃ちする新システム、Zen To Done

[zen-garden.jpg 、略して ZTD。GTD の欠点を簡単なメソッドで乗り越えてゆくための手法の提唱です。

GTD にかわる新システムだというと、なんだかうさんくさく聞こえてしまいそうですが、著者の意図は必ずしも 「GTD をやめて私の ZTD にすれば良い」と言ってるだけではなく、GTD の理想を追い求めるための成長ステップを示すのが狙いのようです。

Zen Habits が指摘する GTD の欠点と、それを段階的に補うための成長プロセスについてブログからかいつまんで紹介します。

GTD の欠点(?)

Zen Habits の著者は GTD のシステムがもついくつかの問題点を指摘しています。それらは、

  • タスクのオーガナイズに力をかけすぎていて、本当に仕事を「する」部分がおろそかになりがち

  • GTD のシステムを作り上げるまでに無駄な労力がかかりすぎるのと、維持するための労力も半端じゃない

  • 長期的な目標形成をするプロセスが入っていない

といったものです。これが GTD の欠点であるかは別として、たしかに 1,2 番目の点は GTD がうまくいかないときにありがちな症状だと言えそうです。

3番目は David Allen がちゃんと本の中で 「プロジェクトの垂直的な見方」という節で触れていることですので、欠点というのは言い過ぎな気もします。しかし GTD は常に現前の仕事に注目した手法である以上、長期的な目標形成は Someday / Maybe の中に後回しにされがちになる傾向があるという話なら、確かにそうだと思います。

ZTD は何が違うのか?

Zen Habits が提唱している ZTD は、GTD のシステムを一気に完璧に作り上げようとはせず、簡単な習慣から少しずつ慣らしてゆくことで、最終的に GTD を同じ状態へもってゆこうという、プロセス指向の考え方をしています。最初のいくつかのプロセスを紹介すると:

  • ユビキタス・キャプチャー:

この用語は 43folders の Merlin あたりから最初に聞いた気がするのですが、ようするに一日の出来事や考え事のすべてを手帳やノートに書き込んでゆくという手法です。こうすることによって、ものごとに「忘れる」余地を与えないことができます。私も Moleskine ノートでここ2年くらいやってますが、これがもたらす心理的な効果は非常に大きいです。

  • inbox の中にあるものに対する決断を速くする:

GTD だと、ここで「2分以内にできるものならやる」「2分以内に出来ないならプロジェクトか、レファレンスか、他人に差し向けるか、別の日にスケジューリングする」といった複雑な思考が入りますが、これがつまずきの石だというわけです。まずは、手に取った一枚の紙や、仕事のタスクをどうするつもりなのか「その場で決断する」という習慣を作るだけにとどめる。

  • 毎週「最重要事項」計画する:

大掛かりなウィークリーレビューをやるのではなく、「来週は何をするべきか」だけを決める習慣を作る。日々のタスクは最初のユビキタス・キャプチャーの習慣で捕捉していますので、わざわざここでやり直すことはないというわけです。

こんな調子で、ZTD では30日ごとに一つの習慣を作り上げてゆき、全部で10の習慣を作ることで完成するプロセスを提唱しています。

これは多かれ少なかれ、GTD を実践してみようと考えた人の誰もが実践してきた成長プロセスを、一つのプログラムにまとめてくれたものなのだと思います。私も、原書を読んでいきなり GTD の実践ができたわけではなく、まずは「頭の中を毎日空にする」という習慣作りから始めた覚えがあります。今まさに GTD を始めようとしている方は、ぜひこのユビキタス・キャプチャーから始めることをお勧めします。

また、GTD と「7つの習慣」の共存について、私も最近よく考えます。GTD が現前の仕事にバイパス道路を建設するような効果があるのだとしたら、「7つの習慣」はその行き先を決めるための手法として矛盾なく組み合わせられるなあ、というようなことです。

これについては、近いうちに別のシリーズを立ち上げて書いてゆく予定です。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。