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一歩進んだライフハックへ (1) ボトルネックの解消



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2008年が足音高く近づいていますが、それにつれて一年間に雑多に書きまくってきたいろいろなハックやテクニックを、ここらでちゃんと体系化して取捨選択しないといけないなあと感じるようになりました。

書いてきたことの全てが実践できているわけでもありませんし、紹介した時点では「お、これいいなあ」と思いながらも実際には実用性が低かったものもあります。そんな多くを自分のために整理しておきたいと思う用意なったわけです。

でもどんな尺度でそれを行えばいいのだろうかと思ったことから、「一歩進んだライフハック」という発想が次第に生まれてきました。ここでいう「一歩進んだ」というのは、あくまで「自分にとってのライフハックの実践を一歩進めた」という意味であって、「他人に比べて」という意味ではありません。

先日 Gihyo.jp の記事でもたくさんあるハックをやみくもに導入するのではなく、Elimination / Unclutter を軸とした「一歩進んだライフハックの実践が必要だ」と書きましたが、それについてこれから数日間をかけて順をおって書いていきたいと思います。

新しい年を、より最適化されたよい習慣で迎えられるように、ぜひご一緒に考えてみてください。

何を変えたいのか?

ライフハックにはいろいろな定義がありますが、私はこのブログではいつもそれを「自分を変える習慣作り」とまとめています。ショートカットを覚えるのも、早起きをして資格のための勉強をするのも、方向性こそ違いますが「自分を変える」ための行動の導入ということになります。

でもそもそも自分は何を変えたいと考えているのでしょうか? たくさんの自己啓発書で書かれていることでもありますが、実現したい夢や希望を考えることなしに「もっと時間があれば」「もっとお金があれば」と考えるのは問題を明らかにしないまま解決方法を考えているのに等しい状態です。消火器を火事の方向に向けていないのに火が消えると期待しているようなものでしょうか。

自分がなんとなく感じている不満や、「もっとこうできたらいいのに」という漠然とした思いを問題意識として明確化する必要があるわけですが、ここで正しい答えを導くには、その答えに対する正しい質問を作ることが大事になります。

質問「自分の能率を悪くしている最も大きな原因はなにか?」
質問「自分が人生からより高い充実感を得るのを阻んでいる原因はなにか?」

もっと洗練された人ならマインドマップや高度な自己分析を駆使してこの質問に対して答えを考えてゆくのでしょうけれども、ここでは誰にでもできる穴埋め形式でやってみましょう。すなわち上の質問に対して:

答え「本当は○○がしたいのに、実際には△△ばかりしている」
答え「本当は○○と感じたいのに、実際には△△が邪魔になっている」

という簡単な答えを考えてみます。△△に入っているものが、あなたの主体的な行動・決断によって変えることができるものだったらしめたものです。

ある研究者の場合

白状しますが、私は自分のことをプロの研究者と口ではいいながらも、ここ最近新しい論文をちゃんと読めていない状況が続いていました。また、コンスタントに論文を作り出すプロセスを確立していないために、研究活動にとんでもない非効率が生まれているというのが2つめの悩みです。上の答えを当てはめてみるなら:

「本当は論文をもっと読みたいのに、実際は日々の忙しさを言い訳にして行っていない」
「本当はもっと本質的な研究をしたいのに、実際は枝葉末節で時間を使い果たしている」

というわけです。△△には「日々の忙しさ」と「枝葉末節への拘泥」という部分が対応しているのですが、これを他人だと思って読んでみると「論文がよめないほど忙しいの?」とか「細かいことを気にしすぎているから時間がないのでは?」というつっこみを入れたくなってきます。

ボスからの雑用などのように外からやってくる邪魔もありますが、それが論文を読む時間を 100% つぶしているわけではありません。それなのに、時間を作れない原因が何となく自分の外側にあると感じて、「こんな雑用がなければ…」と愚痴をいっていたのが、これまでの悪循環だったと気づいたときには慄然とせずにはいられませんでした。

しかしこのように「私」という1人称の問題を「ボスのせい」「あいつのせい」と3人称にすり替えている場所を発見できたなら、これまたしめたものです。それは自分だけで戦略的に改善できるからです。

行動を変えることで解消できる場合

自分自身を変えるために邪魔をしているものが判明したところで第二の質問、「7つの習慣」の第一の習慣「それに対してとることのできる主体的な行動(習慣)は何か?」を適用してみます。

しかしこれだと漠然としすぎているので、「この問題を完璧にとまではいかないまでも、かなりの部分で満足できるできるようにする習慣はないか?」と、自分への尋問を繰り返します。つまりは自分を変化させるための急所、クリティカルポイントをさがすための手続きです。

たとえば論文読みの方は、「単に時間を確保していない」というだけの問題ですので、行動を変えるだけで比較的簡単に対応できます。

最新の論文は月に何百と出版されますが、本当に自分の研究領域と関係している 自分的 A ランクの論文はせいぜい5本です。興味があるから読んでみたいという程度の B ランクが10本、気になったという程度の自分的 Cランクの論文50 本の要点が頭に入るなら、月に 65 本、年間 780 本ですので、自分としては大満足です。

時間の割り当てを考えるなら、A ランクの論文を読むのに1本1時間で5時間、B ランクには1本15分、Cランクは摘要だけを読むことにして 1本 3分くらいと概算すると、月に論文を読むのに 10 時間程度、平日1日30分でよいということになります。

この30分は毎日の蓄積によって自分をかならず救ってくれる大事な時間となりますので、あらかじめ「1日テンプレート」のなかで聖域時間として確保しておくことにします。

これはあくまで一つの例ですが、「○○できない」と思いこんでいることの多くは、小さな行動の変化で完璧にとはいわないまでも、比較的満足なレベルまで改善できるケースが多いという風に思っています。

価値観の実現も行動に落とし込む

もう一つの悩み、「本質的な研究ができていない」という方ですが、これは逆にいうなら「本質的に重要な研究をしている自分」というイメージの実現ということになります。これは価値観の実現ですので一見、どんな行動をとればいいのかわかりづらいのですが、どんな価値観にも尺度がありますので、これを使ってみることにしてみます。

  • 進捗・価値の尺度:この解析は論文の価値を何%ほど向上させるか? これを行うことで論文の進捗は何%進むか?
  • 相対評価の尺度:自分が越えたいと考えているベンチマークとなる論文、研究者は誰か?彼だったらこういう作業をするか?

進捗・価値の尺度は数字を持ち込みづらいところにあえて主観的な数字を持ち込むことで自分の行動をどれだけ自分で信じているのかの尺度とします。数字が低いからといってその作業をおこなわない訳ではなく、どれだけその作業に自分を拘束させる価値があるかの判断材料にします。たとえば行き詰まったときに「これはそもそも論文の価値をそれほど左右しない話だから追求をやめよう」とか「ここは論文の価値を非常に高めるところだから、しつこく頑張ろう」といった具合の判断を早めるための自分への問いかけです。

相対評価の尺度は自分のとるべき行動を明確にするための判断材料になります。他人の仕事との距離感を測っていないと、自分一人でいつまでも無用な作業に没頭していることが多くなるというのを嫌と言うほど経験してきたので「そんなことをしていても○○には追いつけないよ」という自分のための気づきの質問です。

問題はどのタイミングでこれらの質問を自分に与えるかですが、私はこれを週間レビューのテンプレートに加えておくことで、1週間を単位に研究活動の見直しができればいいかと考えています。人によってはこれが1日おきになるかもしれません。

まとめ

ライフハックの本質が「習慣作り」にあるのだとしたら、その対象は「自分の中の変えたい何か」となります。

自分の何を変えたいと思っているのか? この疑問に答えることからすべてが始まり、それを行動に落とし込んでゆくところがその実現になるわけです。

多くのライフハックの記事が「○○するための○個の方法」という具合に多くのテクニックを紹介していますが、これらの全てを実行していたとしても、自分の問題と直結していなければそれらは結果のともなわないダイエット法と何もかわりません。

良いと言われていることを全て行うのではなく、自分にとって一番良いことを行うこと、これがまずは自分ハッキングの最も大事な原則となります。

次回はここから話をつないで、敬遠されがちなミッション・ステートメントの話にもっていこうかと思います。


著者について

堀 正岳

「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jp 管理人として、仕事術、ライフハック、テクノロジー、文具、ソーシャルメディアなどについて執筆中。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Evernote ライフスタイルアンバサダー。ScanSnapアンバサダー。この他のブログに、ライフ×メモ 、Climate+を運営しています。