一流の研究者とのお別れ:10分で人生を変える方法

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伝説の研究者と部屋をともにして2ヶ月、ついに先生とのお別れの日がやってきました。このシリーズも、ひとまず最終回です(またお会いする予定もありますので、また続くかもしれませんが)。

この2週間ほどは、私自身が先生との対話に慣れてきたということもあって、敢えて先生の論理に食ってかかったり、別の視点を指摘したりして頭脳での戦いを挑んできました。結果はまあ、散々たるもので、やはりまだ自分程度では及ぶものではないということがよくわかりました。

しかしそれによって得られたものもありました。それまで「大先生のいうことだから」と、どこかで拝聴していた気分が次第に薄れ、議論の良い点、悪い点を整理して意見を言えるようになってきたのでした。それがさらに深い議論へとつながって、私にとって、そしておそらくは先生にとっても楽しいひとときになったような気がします。

最後の午後、開け放した窓からさわやかな空気が流れてくる素晴らしい昼下がりに、これまで何度となく議論してきた問題をもう一度総ざらいして、今後の研究の方針や戦略について時間をかけて話をすることができました。宿題もいくつももらいましたので、今後も折に触れて結果をメールでやりとりしましょうということに落ち着いたところで、「おや、もうずいぶん時間が経っている。ではまた!」と先生はいつものように颯爽と帰られました。

それが昨日。

今日、研究室にいくと、いつも先にやってきて一心不乱にノートパソコンを打っていた席は空になっていました。今日は一日中気が抜けたようになって、なんだか夢のようだった二ヶ月間を、静かになった居室で振り返るばかりでした。

メンターの大切さ

自分と同じ道を歩んできた先人のメンターを持つことはビジネスの世界であれ、研究の世界であれ等しく重要です。それは単に知識や経験の伝授という点だけではありません。自分をはるかに越えた経験をもつ先人と話しているうちに、知らない間にこちらのレベルが引き上げられ、自分が今まで考えたこともなかった発想が次々と生まれてくることがあります。まさしく、「巨人の肩の上に立つ」といういうのはこのことです。

また、こう申し上げては生意気かもしれませんが、年の離れたメンターの持つ利点に、「越えてゆくべき目標が明確になる」というのがあります。いかに先生がすごい研究者であっても、それはやはり先生の時代のことで、今現場で働いている人にはまた別の課題が山積しています。いみじくもアイシュタインが言ったように、「問題は、それが生み出されたのと同じレベルの考え方では解決することができない」わけです。メンターとの対話は、ここをさらに強化しなければブレイクスルーはない、という最低限の越えるべきハードルを明確にしてくれる気がします。

二ヶ月の滞在で私が盗もうとしていたのは、まさにこうした高いレベルの思考でした。それが成功したかは、今後の仕事で証明しないといけません。

一流の研究者の楽しい人生

別れ際の議論の中で特に印象深い対話がありましたので、最後にこれをご紹介します。まだ上手にまとめられないのですが、対話そのものが何かのヒントになると思いますので、あえてそのまま掲載します。

仕事というものは難行苦行をしてはならない、一瞬一瞬を楽しまなければ、という先生の持論がまた登場しましたので、私はあえて「今苦労をすれば未来にいいことがあると考えて、歯を食いしばって頑張る人もいますが、どう思いますか?」と聞いてきました。

頭のなかには今自分を取り巻いている状況、働き過ぎで倒れてしまう人々が出てくる日本の現状がありました。

しかし先生はいやはや誤解している、という顔をされてこう言いました。

「mehori さん、『今が楽しい』というのは、別に『今楽をしている』ということではありません(漢字は同じですが)。未来について真剣に思い描いて、それに向かって今を楽しみながら必死でやる。この二つはなんら矛盾しないのです」

「先生の言われる、End to End plan ですよね」

「そうです!でも今の人は忙しすぎる。10分でさえ立ち止まって長期計画を立てたりしない。『ああ、10分くらいじゃ長期計画を立てられない』と、こう言うんです。でも忙しいときほど、10分でもいいから長期的なことを考えてごらんなさい。頭がはっきりしますし、無駄なことをしなくてすみますからやりがいが出てきます!その方が楽しいでしょう!」

「10分で人生について考えられますか!?」

「10分も考えない人よりはよっぽど考えられます!」

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