GTD 見直し (1) ブートプロセス Part3
朝の儀式だけで長々と書き過ぎですが、ここまでの順序はいろいろと考えた末にこのように収まってきました。朝の脳みそはまっさらな状態ですので、まず 1) スケジュールを参照して近い未来についての情報を思い出します。これで空き時間についての目安がイメージできます。次に 2) メールを見て、新しいスケジュールや懸案事項が生じていないかを確認します。次に、3) inbox を処理して、やりかけの仕事はなんであったかを思い出しつつ、いらないものを排除します。ここまでは基本的に手を動かしたりしていましたが、最後は頭の中だけで行う作業でありながら、一番重要なステップ、つまり優先タスクの定義です。
6つのタスク
小山龍介氏の “TIME HACKS!” でも紹介されていましたが、アイビー・リーの 25000ドルの提案という簡単な方法で ToDo を整理しています。それは:
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前の日に、明日やるべきことを6つ書き出し、優先順位に従って番号付けしておく
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次の日の朝に、優先順位を見直して、上から実行
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優先順位が高いものから実行し、その日のうちは順位を決して変えない
というものです。アイビー・リーが鉄鋼会社社長のチャールズ・シュワブに提案し、確かに効果があると認められ、報酬として 25000 ドルを得たという、伝説的な手法です(もっともアイビー・リーは一部のサイトで紹介されているような経営コンサルタントというよりは企業広報の人でしたし、この逸話自体がせいぜい 1972 年の本の孫引きまでしか遡れないので、信憑性には疑問が残るのですが、それでもその哲学の重要性は今も有効だと思います)。
ようするにこれは「7つの習慣」の第三の習慣「First thing First」を別の形にしたにすぎないのですが、この手法が私の性に合っているのは、「前の日にタスクを定義し」「次の日に再検討」するという点です。
私にとって、その日の仕事時間を何に一番費やすかを決めるのは、その日の朝では遅すぎます。朝だと、なんとなく手近な雑用から初めてしまう癖があり、午後になるころに「緊急ではなく/重要でもない」最悪のタスクをしていたことに気づいたりして自己嫌悪に陥ったりします。逆に、重要なタスクを決めるのを「前の日」のうちにやると、明日の自分の苦労は関係ないとばかりに頭の回転が速くなり、「明日はこれをやればいい」というビジョンがすうっと出てくるのです。
また、やるべきタスクさえ紙の上に書き出してあれば、一晩寝かせることによって、朝になってから「やっぱりこっちの方が重要」という優先順位の再検討も比較的スムーズにできます。
この6つのタスクはどれも重要な部類になる傾向がありますので、ロディアの方ではなく、家に持ち帰る Covey 手帳の方に書いておきます。いってみれば、「未来の自分との約束」というわけです。
本当に6つできるの?
他の人はどうかわかりませんが私はここで書き出した6つのタスクを全てできた日はあまりありません。そもそもタスクが6つではなく、3つの日もありますし、その3つのうち最初の一つもできないまま一日が終わることもままあります。邪魔が入ったり、急な連絡でタスクが主滅することもしばしばです。
最初はこうした現状に「自分はなんて仕事が遅いのだろう」と嘆いていたのですが、どうもそれは違うのだということが時間が経つにつれてわかってきました。6つのタスクがあるのは、実は全部を行うためではなく「今自分がしている作業は、今自分が最もやるべき作業だ」という確信を持つためなのです。他の5つは、「今これをすることで後回しにしているのは、これらのタスクだ」という Opportunity Costを意識させるためのものだということです。
それに気づいてからは、「早く二つ目にいかなきゃ」というプレッシャーを感じることなく、最初のタスクを全力でつぶそうという心理が働いてむしろ能率があがった気がするので不思議です。
And one more thing…
上のルーチンの中で +α とあるのは、毎日時間があったら行う「オマケ」の作業です。
毎日忙しくしていると忘れてしまう、中長期的な自分/他人への投資を思い出すために、Someday/Maybe の中から第二領域 Quadrant 2 に属するものだけを選びます。たとえば「○○くんと会って調子をきく」「新しいアルゴリズムの勉強」、「専門書を読む」「最新の論文を探す」「普段使いのアプリの習熟度を高める」といったものが入ります。
忙しい日には +α には手が届かないことが多いですが、それでもシステムの中にこのオマケをいれておくことで、なんというのか、一日のムードを変えることができたことがよくあります。不意に背を伸ばして空を眺めたときに感じるような充実感というのでしょうか。目の前のタスクだけではなく、遥かにある目標を遠望する一瞬が、落ち着きを取り戻させてくれる役割をもっているようです。
書き出すと長かったですが、この朝の儀式は4ステップ、時間にして 20 分以内となっています。当たり前のことが多いですが、それでもあえてルーチン化することで、なんとなく雑用に手をつけてしまうという悪癖の糸口を与えないようになっています。この4ステップは私の仕事に最適化してありますし、今後も修正を加え続けるものですので、お読みになった方はヒントにとどめてご自分のブートプロセスをプログラミングしてみてください。
本当はこのあと、個人的な「第5のステップ」を行うのですが、それはまたいずれ。