Happy Hacking Keyboard 30周年を記念して「押下圧30gモデル」が登場
同じ道具をずっと、長い期間使っていることがあります。
私は手帳はずっとモレスキンの横掛ポケットサイズを使っていますし、ボールペンは uni-ball Signo の黒 0.38 mm を選びます。最適な道具を求めてさまざまな製品を試すのもよいですが、手に馴染んだものを意識せずに使いこなすのもまたよいものです。道具は自分の一部分だからです。
Happy Hacking Keyboard は自分にとってそうした道具で、いま書いているこのブログ記事も、ほとんどの書籍も、このキーボードを叩くことで生まれました。
その Happy Hacking Keyboard、略して HHKB が今年で30周年を迎え、それを記念して特別に押下圧が45gから30gに改変された記念モデルを発売しています。馴染みがあるのに、馴染みのない、ちょっと不思議な体験ができるのではないかと思って早速一台を購入して使ってみました。
(関係性明示:私は Happy Hacking Keyboard アンバサダーですので、本記事の内容は PFU 様への事前取材の内容を含みます。キーボードは自分で購入して試しています)
押下圧の問題
キーボードの押下圧、つまりはキーを押すときに必要な力は、普通の人ならばあまり意識することがない細かいこだわりかもしれません。
一般的な大人がキーボードに指を置いた場合の圧力は大雑把に 30-50g 程度などと言われますが、それに対して HHKB を含む多くの売れ筋のキーボードは入力するときの圧力が 45g になるように調整されています。
これは手を休めているときにうっかり入力せず、押さないように手を浮遊させとくと気にかかる力、実際に押す際の力などを考慮したときのバランスから Cherry MX メカニカルキーなど、さまざまな前歴があってこのあたりに収束してきた経緯があります。
一方、最近の MacBook やノートパソコンのキーにはもっと軽い 30g 程度の圧力のものも多いですし、軽いタッチで入力したいというニーズに答えて REALFORCE には 30g キー荷重モデルや果汁を変更できるもでるなどもあります。HHKB にもこの軽いキータッチのモデルを期待する声は一定数ありましたが、30周年という節目で登場したわけです。
限定3000台。ただしモデルや色によっては、早めに売り切れの可能性も
今回の記念モデルは限定3000台で、PFU ダイレクトのみでの販売になります。Amazon などでは購入できませんのでご注意ください。また、英語・日本語がそれぞれ1500台で、墨750台・白300台・雪450台と、モデルによって台数が異なりますので、希望のモデルが早めに無くなる可能性もあります。
というわけで今回選んだのは白さが目に眩しい「雪」モデルの日本語キーボード…って、あれ?
うっかり間違えて英語配列を買ってしまいました…。
日本語キーボードのキーをさまざまにカスタマイズして使っていたのですが、仕方ないですね…。
若干のキーバインドの変更のあとで姿勢を決めて触ってみると、当然なのですが、軽い!
言葉で伝えるのが難しいのですが、重いスニーカーを履いて出かけたあとでそれを脱いだときのような、急に身軽になったような開放感があります。
何度も 45g の HHKB Classic Type-S との間を切り替えながら試してみたのですが、自転車のギアが変わったように意識に変化が起きる軽さです。
本当に必要か? 姿勢や手の位置も検討して考えてみよう
このように書いてしまうとキーボードが好きな人は飛びつきたくなるかもしれませんが、それなりに値段する買い物ではありますので、ふだんプログラミングや、大量の文章も書いている立場で少しだけ補足を試みたいと思います。
ヘビーユーザーなら言うまでもないことかも知れませんが、キーボードを使っているときの疲労感や、手をかざしているときの引きつった感覚は、押下圧だけではなくキーボードの傾きや手の位置、姿勢にも大きく左右されます。
また、文章を書くときのように、ずっとタイピングが切れ目なく続く場合にはプログラミングをしているときと違った緊張も生まれます。そうしたときには、BIRD電子さんのタイピングベッドなどを使って手首を少し高くするだけでも疲れ具合は大きく変わります。
押下圧だけで疲れ方が決まるわけではないので、そこまで文章を大量に書くわけではないという人には 30g の押下圧が必要かどうかは微妙かもしれません。
しかし、一気に3000-5000字ほどの執筆を日常的にしているという人ならば、姿勢やパームレストの問題も加味したうえで、さらにこの軽さを追求したくなる瞬間があるのは感覚的にわかるかもしれません。
頭のなかのアイデアを一刻でも早く入力するために、この数分だけちょっとタイピングを加速させたい。そのためにはふだんのキー押下圧が邪魔で、手の甲に疲れがたまってしまう、あの感覚です。
こうした状況に覚えがあるなら、この 30 周年モデルを試してみる価値はあるといえるでしょう。
人気が出れば定番化もあり?
担当の人の話によれば、もちろん HHKB も時代に合わせるべきところは合わせてゆく予定だそうです。この30周年モデルがどの程度受け入れられるか、その反応をみて、今後 30g モデルを定番化するかどうかも検討されるようです。
実際、以前は左上が定番だった HHKB のキーも、HHKB Classic のオリジナル白以外は中央印字になっています。これも時代の変化ですね。
私は 1998 年に大学の研究室で最初の HHKB が導入されていた頃から、30 年の歴史のほとんどをさまざまなモデルの変化とともに過ごしてきました。
その間、HHKB はまったく変化しないのではなく、キー内部設計や、静音性や、Bluetooth 対応や、HHKB Studio のように大胆な変化も、その都度時代に合わせて行ってきました。
不変ではなく、このゆるやかな変化こそが本当の伝統なのだと考えると、今後の HHKB の開発と変化にも、期待をしたくなります。
今後も、あてになる道具として、長く使い続けられればと思います。
