3つの「かわる」が常識を打ち破る「かわるビジネスリュック」のすごさ

「とれるカメラバッグ」「ひらくPCバッグ」のヒット作を生み出してきた、スーパーコンシューマーから、満を持して新しい製品「リュック」が登場しました。

開発に携わったのはブログ「ネタフル」のコグレマサトさん(@kogure)と、ブログ「みたいもん!」のいしたにまさきさんの二人。開発期間は実に三年半に及ぶ徹底したこだわりの成果なのだそうです。

その一風変わった製品コンセプトを名前にこめた「かわるビジネスリュック」というこの製品、「かわる」とは? どんな仕掛けが施されているのか? 製品発表イベントで一個いただいて試すことができましたので、その特徴と、誰におすすめなのかを解説したいと思います。

1. 使い方が「かわる」

私たちはふだん意識することなく「リュック」という言葉を使っていますが、これはドイツ語で**「背負う袋」**という意味があります。リュックは本来、上から物を入れてゆく「袋」なのです。

しかし「かわるビジネスリュック」ではそもそもこの前提が成り立ちません。というのも、形状は背負うタイプのバッグですが、上から物を投げ込む使い方を変えなくてはいけないからです。**使い方が「かわる」**のです。

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それを示したのがこの模式図です。左がよく知っているふつうの「リュック」ですが、右の「かわるビジネスリュック」は使う頻度の高い上のコアポケットと、利用頻度の低いメインポケットにわかれた2階建ての構造をしています。「袋」じゃない!

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マグネットで固定されている上部のフラップをとると、上から荷物を入れられない構造に最初は戸惑います。かわりにそこにあるのは、15 inch の MacBook Pro も楽に入るPCポケットです。

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この PC ポケットにもさりげない工夫がこらされており、うえからストンと落とすだけでベルクロ付きのベルトがパソコンを固定してくれます。

取り出す際もこのベルトに軽くてをそえてパソコンを引っ張るだけですので、ベルクロを意識せずともパソコンが安全にポケット内で暴れません。これは15 inch 以下のパソコンで特に効果をもつでしょう。

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また、上部には文庫本や小物をいれるのにちょうどいい、小さいポケットがあります。上から荷物を入れられないということで、普通のリュックだと思って触った人は驚くはずですが、少し考えてみると、もっともアクセスする頻度の高い「パソコン」と「小物」がチャックのないマグネットフラップの向こう側に数秒で手が伸ばせるようにしてあるのです。

2. 向きが「かわる」

「かわるビジネスリュック」のもう一つの「かわる」に、持つ方向が変わるというものがあります。

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こちらが背面からみた「かわるビジネスリュック」。背中があたる部分はやわらかいパッドとなっており、ここがメインポケットにアクセスするチャック付きの収納となっています。

ここで、写真左にふだんはベルクロで止めてある持ち手があるのがわかると思います。

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この持ち手をつかうと、「かわるビジネスリュック」を横持ちにして持ち運ぶことができます。荷物の重心次第では、縦置きは直立しにくくなるのですが、横置きだと安定しています。

リュックによくある、置く際に椅子や壁にもたせかけないとだらしないし、床の上だと踏みやすくなってしまうという欠点が解消されているのです。

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横置きの際に上に来る側、リュックとして背負った場合に右側にはもう一つの薄いポケットが。ここに iPad や携帯バッテリーをいれて持ち歩くことができます。

3. 収納のしかたが「かわる」

さて、さきほど「かわるビジネスリュック」は2階建てだという話がでてきましたが、そこはどのような構造になっているのでしょうか? ここに「かわるビジネスリュック」最大の特徴で、少々わかりにくい「コアポケット」という機能がやってきます。

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コアポケットは側面に用意された、カメラやレンズをいれても問題のない柔らかいクロスで内張りされた筒状のポケットです。こちらが、コアポケットを横からみたところ。しかしこれ、内部はどうなっているのでしょう?

「かわるビジネスリュック」コアポケットの仕組み。横からアクセスしやすい筒状のポケットあって、使わないときは畳んだ状態になってメインの収納が増える #かわるビジネスリュック pic.twitter.com/UtmGpvmu3s

— 堀 E. 正岳(ほりまさたけ) (@mehori) 2016年7月27日

動画をみていただくとわかるのですが、コアポケットに物をいれるかいれないかで、背中側からアクセスするメイン収納の一部がへこむようになっています。

「リュック」だと思って触っていると不思議に感じるこの構造ですが、「かわるビジネスリュック」はむしろトランクに近いのだと考えると納得できます。パソコンもiPadも小物もすばやくとりだせて、片手で持ち歩けるトランクなのです。

メイン収納の中の色はあざやかなスーパーコンシューマーのテーマ色の青ですが、これは入れた荷物を瞬時で見分けやすくするためのものなのだそうです。このあたりの発想も、とてもトランクのものに近いといえるでしょう。

コアポケットは、ほかの小物いれのポケットに入らないものの、常に出し入れしたい荷物に向いています。全体でみると、PCポケット、少ポケット、コアポケットと、秒速でアクセスできる収納が4箇所あり、相対的に手間のかかるメイン収納があるというわけです。

背負いやすさの秘密

テストのために、今回は二泊三日の荷物をメイン収納にいれて、二日間にわたって背負って行動してみました。

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衣類、パソコン、カメラ、バッテリー、電源アダプター、ケーブル、その他たくさんの小物などです。

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これらをすべて収納すると、衣類を少なめにしていることもあって余裕で入ります。コアポケットがふくらんでいるのがわかると思いますが、ここにカメラなどが入っています。

登山をしているひとには常識だと思いますが、重いものは上部にいれると重心が上がって背負いやすくなります。そのためにコアポケットを使うことができるのですね。

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充電ケーブルをしまい忘れて横からでていてカッコ悪いのですが、このようなかっこうでここ数日の用事で場所を転々としていました。背負っていてとても楽で、しかも涼しい。そこにも、「かわるビジネスリュック」の構造にかかわりがあります。

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写真では伝わりにくいのですが、「かわるビジネスリュック」は登山リュックでよくある、腰の支点を利用した構造をとっています。背中側はゆるやかにカーブしているので密着しにくく、それであのいやなべったり感がありません。

よくあるリュックだとパソコンは背中にそって入れてありますが、それだとこのカーブを作り出すことができません。しかも硬い板が背中に押し付けられて独特の負担感が生まれます。

「かわるビジネスリュック」では、あえてパソコンを背中から離した場所にいれることでそれを解決していますが、それはバッグの構造がしっかりとしていることが前提にあります。でなければ、背中側からパソコンの重みでバッグが型くずれしてしまいます。

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つまり背中のパッドは、そのバッグ全体の構造をささえる背骨でもあるのです。心地よい背負いやすさを生み出しつつ、バッグの形を崩さないという二つの役割を同時にこなしていることになります。しかもこの部分はメイン収納のカバーも兼ねています。

パッド自体には太い溝が入っていて通気を促しますし、中央には、キャリーケースに固定するためのベルトも仕込まれています。こまかい細工すべてに意味があるというのがすごいですね。

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使い方を「かえた」際の対応もさまざまに施されており、たとえば横置きに使う際に邪魔な肩紐はこうしてチェストベルトで束ねておくことができますし、余ったベルトを固定するための金具もついています。

こうした細かい部分について確認してみたいというかたは、ぜひ販売元であるSUPER CLASSICの直営店を訪問してみてください。週に2-3回、数時間ずつオープンしており、現物をさわることができます。

誰におすすめか?

さて、こうしてみてきた「かわるビジネスリュック」の特徴ですが、これまでのスーパーコンシューマーのバッグとは一線を画したデザインが施されています。

「ひらくPCバッグ」と「とれるカメラバッグ」はバッグの構造を工夫することで、中身に秒速でアクセスできるようになっていました。この二つは**「収納にアクセスする時間をゼロにする」バッグ**なのです。

「かわるビジネスリュック」は、すばやくアクセスできるPCポケット、コアポケットなどに対して、相対的に時間がかかるメインポケットに荷物を分けることが前提となっていて、そういう意味で、アクセスにかかる時間をデザインで織り込んだリュックとなっています。

そうすると、このリュックを使うシーン、便利に感じる人が自然に絞りこまれてきます。

このリュックは、1-2泊程度の荷物をかかえて移動や出張をすることが多い人には理想そのものです。一日に数回しかアクセスしない荷物と、すばやくアクセスするパソコンと小物をわけて、機動的に行動できるビジネスリュックとして最高です。思い出してください。これはよりトランクに近いリュックなのですよ!

逆に、リュックに対して伝統的な、うえからものをつっこんで取り出す「袋」の役割を期待している人には、ヘビーデューティーすぎるかもしれません。大きなバッグとして使うには少し大げさですが、小さいトランクとして使うなら最高なのです。

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カラーは二色、今回写真で紹介したブラックと、クロス地が心地よいグレーです。どちらもおすすめですが、少しだけグレーのほうが人気なのでしょうか? 価格はここまでこだわっているのに、19950 円と、なかなかの安さです。

このバッグにはまだまだ細かすぎて伝わらないさまざまなギミックが凝らされていますので、今後も何度かにわけてご紹介したいと思います。

追記: モバイルバッテリーの使い心地はどうか?

最近は Pokémon GO をプレイしている人も多いと思いますが、そうした人の懸念点はスマートフォンを充電するためのバッテリーはどこにいれて、ケーブルは使いやすく回すことができるのかというところだと思います。というわけで、自分の場合の使い方を追記しておきます。

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一番楽なのは、iPad Pro などがはいるサイズのサイドポケットにバッテリーをいれ、そこからケーブルを伸ばすパターンだと思います。チャックを上にあげておけばバッテリーがこぼれ落ちるということもありません。

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上部のポケットに入れ、Dリングを通してケーブルを引き抜けにくくするという選択肢もあるのですが、私はこちらの構成でケーブルが引っ張られることもなく、余裕があって楽ですので気に入っています。

この状態で、電池切れを気にすること無く長時間歩き、Pokémon GOや Ingressをプレイしています。いかがでしょう?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。