Wordpressの新時代を告げるCalypsoプロジェクト
全ウェブサイトの25%がWordpressで駆動されているという驚きのニュースがつい先日あったところですが、書き手にとってはさらに大きなニュースが飛び出してきました。
ウェブサイト管理者ならば馴染みがあるとおもいますが、これまでWordpressの管理者画面はサイトごとに個別に用意されていて、プラグインを書く人はPHP言語を利用して開発をおこなっていました。ブログの執筆も、管理も、すべてこの画面がおこないます。
この方法はもちろん便利なのですが、次の10年の開発を見据えると次第に重荷になってしまうことも予想されてました。そこで今日、新しい Wordpress.com のアプリとともに複数の管理者画面を一元管理し、Javascript ですべてを書き直すという野心的な計画が公開されました。
その名もプロジェクトCalypso。オデュッセイアー伝説に登場するカリュプソーは帰国を願うオデュッセウスを島にとどめたニンフで、「覆い隠す者」「欺くもの」といった意味があります。覆い隠されてた海の道が開かれたとき、壮大な帰国の冒険の旅路が始まるのです。
OS X用の Wordpress.com アプリを試してみる
プロジェクト Calypso はWordpressにとって擬似的な心臓移植に等しいことをしています。Wordpress.com にホストされたブログはもちろん、自分のサーバーにホスティングされたブログについても Wordpress.com アカウントと Jetpack の仕組みを通して、アカウントを一元管理しているのです。
まだまだ Ver1.0 の日本語への対応も未知数のアプリを試してみたいという方は、こちらのサイトからダウンロードしてみてください。現在のところ OS X のみが提供されており、Windows や Linux 版はまだ開発中です。
アプリを立ち上げると、Wordpress アカウントでのログインが求められます。それぞれのサイトの管理者アカウントではありません。それぞれのサイトでのログインはWordpressのセキュリティにとって最も弱い鎖になっていますので、ひょっとすると今後Wordpressアカウントを利用した2段階認証なども取り込んゆくのかもしれません。
ログインすると、管理していて Wordpress アカウントにひも付けされているすべてのサイトが閲覧可能になります。こちらは Reader 画面で、購読している Wordpress ブログのストリームを閲覧できます。tumblr のダッシュボードのようなものだと思えばいいでしょう。こちらで、人気の記事などがプロモーションされますので、ブログの元ネタとして使うこともできます。
Wordpress アプリ内部から記事を作成してみました。未対応とはいえ、日本語入力は問題なくできます。ビジュアルエディタ、HTML エディタ両方ともに有効で、恐ろしいほど高速です。また、執筆される記事は常にバックグラウンドでバックアップされています。スラッグの編集、複数写真のドラッグ&ドロップ、すべてがここからできます。
逆に、現在のプラグインでこの編集画面に手を入れているタイプのものは、まだWordpressアプリには対応していません。たとえば使っているテーマに固有のショートコードの編集窓や、プラグインに関連したコンポーネントは反映されていません。これらは、今後 Calypso に対応した開発を行わなくてはいけないわけです。
アプリ内のキーボードショートカットも数多く用意されています。構造化された文書をさっと入力する見出しのショートカットなど、多用しそうですが、現時点ではまだ私の環境では利用できないものが多くありました。願わくば、MarsEdit と同じくらい、そして TextExpanderと同じくらいの柔軟性のあるショートカットが実現してくれるとうれしいですね。
プラグインの管理も、このWordpressアプリ内で行うか、あるいは Jetpack を設定しておくことによって全自動で更新を行うように設定できます。プラグインの更新遅れがWordpressのセキュリティリスクとして高まっていますので、これを警戒した動きですね。
もちろん Wordpress.com を通したアクセス解析もアプリ内で閲覧することができます。一元管理というのは、本当に一元管理なんですね。
Wordpress の開発元である Automattic 代表のブログでは今回の新しい開発を、Wordpress の今後の10年を盤石にするためのものという表現をしています。
開発者よりの言葉になってしまいますが、すべてをオープンな API ベースにすること、軽量でレスポンシブにすることによって Wordpress.com アプリの開発がそのまま iOS / Android 版の開発に直結するようにデザインすること、テーマやプラグインの管理を Jetpack 経由でおこなうことで管理者の負担を減らすこと、そしてすべてのソースをオープンにすることで開発を促進してゆくことが挙げられています。
上記の記事からは、開発者視点の解説、GitHubレポジトリへのリンクなども用意されていますのでコードをみてみたいというかたは方は飛び込んでみてください。
最近、管理者画面が重すぎてなんだかなあと思っていたところに、こうした新世代のシステムを現在のものに組み込む力技を見せてくれた Wordpress の開発者たちの技術力に、そしてそれをオープンなまま提供しようというという心意気に感激します。その一方で、self-host されたWordpressブログでどこまでこれが使えるのか、Wordpress.comとはどういう関係になるのか、疑問点もわいてきます。
そうしたすべてを含んだ、新しいWordpressの始まりです。さっそく遊んでみることとしましょう。