「いいえ」その拒絶の、本当の意味
言語というのはいつも非対称なものです。
言ったことは言われたことと同じ意味に受け取られるとは限りませんし、好きだから嫌いとも言いますし、嫌いだから別の言葉を選んで拒絶することもあります。
ただ、拒絶される痛みだけはいつも同じなんですよね。
セス・ゴディンのブログに「いいえの意味」というリストがあって、人が「いいえ」と相手を拒絶する際の、実際の言葉の中身について書かれています。
頼りにしていたのに断られた時、応募したのに拒絶された時、声をかけてほしい時に無視された時。そんな拒絶は自分という存在への「No」としてつきつけられますが、本当にそれはあなたという存在の全否定なのでしょうか?
あなたが拒絶された理由は、実はあなたが思っている理由とは違うかもしれないのです。### 「いいえ」の中身を解体する
セス・ゴディンは簡単なリストで、相手の拒絶が、実はこういうことなのではないか?と分析します。
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私は忙しすぎてあなたに時間を割けない
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私はまだあなたを十分に信頼していない
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この話は自分がやるべきこととは思えない
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上司が許してくれない
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この話を前に進めるのが怖い
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私はあなたの思ったような人ではない
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あなたが思うほど私には能力がない
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私はこうしたことをできる性格を持ち合わせていない
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この約束に長い間拘束されたくない
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このことは、私に別の嫌なことを連想させてしまう
たとえば急に冷たくしてきた人がいたとして、あなたの側では理由がまったく思い当たらないので、相手の側に原因があるのだろうと思ってすれ違いが大きくなることがあります。しかし実際は、「私はあなたが思うほど能力がない」「だからあなたとの付き合いにストレスを感じている」ということを言葉で表現しきれないために表面化した冷たさかもしれないのです。
なかなか言葉で本当のことを言えないのなら、やってきた「いいえ」という拒絶が見た目のとおりであるという保証ももちろんありません。たとえば一枚の不採用通知は受け取った側には自分という人材の否定に映るかもしれませんが、それを送った側にはそれと異なる理由がいくらだってあり得ます。
セス・ゴディンのリストには最後に一つの追加があります。それは「いいえ、とはたいていは次を意味してはいない」という項目です。
「私はあなたが何を言ってるのかちゃんと理解していて、あなたの提案の全ての要素を注意深く検討し、あなたと同じくらい理解した上で言いたい。あなたの提案も、あなたのことも大嫌いだ」
でもどれだけ多くの非対称な言葉のやりとりが、「嫌い」「大嫌い」として解釈され、相手を嫌う理由として、より深い問題を追求しなくて済む代理解答として採用されてきたことでしょうか。
あなたが拒絶される理由。それはえてしてあなた自身とは何の関係もないか、あなたの側で現時点でどうすることもできないことであったりするのです。
それならば、「いいえ」への返答はどうなるでしょうか?拒絶には拒絶という一面的な反応よりも、より多様な選択肢がうまれるのではないでしょうか。