取り違えてはいけない「時間管理 vs タスク管理」

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放っておいては、時間は常に手の中から滑りぬけてしまいます。しかし管理すべきなのは、時間なのでしょうか? それともタスクなのでしょうか?

ブログ Stepcase Lifehack で「時間管理とタスク管理」という記事が投稿されていて、いつも自分が陥りがちな管理の「裂け目」がみえるようでしたのでご紹介したいと思います。

いつも混同しがちな時間管理と、タスク管理とはどのように異なり、どんな罠がひかえているのでしょうか。

時間 vs タスク

時間は当然ながら有限です、それに対して与えられた時間でやらなくてはいけない「タスク」は多くの場合無制限で、与えられた時間を大きくこえています。

そこで誰でもまずやってしまうのが、与えられた時間の中にできる限りのタスクを詰め込むという形での「時間管理」です。というのも、時間は残りがどれだけあるかわかりやすく、管理可能であるという幻想を与えてくれるからです。

しかし、と元記事では警告します。それでは実際にタスクをこなすために必要なリソースであるところの時間を使い果たしてしまうことが頻発してしまいます。

時間を相手に戦っても勝つことはできません。しかしタスクを時間に対して管理することならばできます。実際に必要なのは時間管理ではなくて、タスクの量や大きさを調節するタスク管理なのだというわけです。

アテンション管理という第三の道

この記事には半分だけ同意します。午前中にどれだけのタスクを詰め込めるか悩むのは時間の(そしてタスクの)管理方法としてはあまりに無計画ですが私たちは往々にしてこの罠にはまってしまうのです。

「午前中に a, b, cを片付ける」という形で考えていると、どうしてもタスクを完璧にこなそうという形をとってタスクはその時間を埋めるように膨らみます。そこでタスク自体を「30分でしあげるとしたら何を削れるだろうか」「どれかをやらずにすますとしたらどれだろうか」と管理してゆく発想が必要になるのです。

しかしそれでは時間管理はタスク管理にたいして二次的かというと、そうでもない気がします。たとえばいまこの記事は電車のなかで iPad を広げて執筆していますが、その前の段階でiPhoneを利用して元記事を読み、歩きながら論旨を組み立てて、「次に15分座れた場所で文章にしよう」というパイプラインで組み立てています。

この、タスクを細かく分割するところがタスク管理なら、「次に15分あるのはどこだろう」と探すのが時間管理です。この二つが手に手を取って回転している時が私にとっては一番能率が高い時です。

もちろん、こんなに上手にタスクが回せるのはそれだけの集中力が残っているときで、この、時間に次ぐ第二のリソース「アテンション」が足りない時にはいくら時間があっても空回りです。

少なすぎる時間にタスクを詰め込むのを実現不可能な「超人の時間管理術」とするなら、その人その人のアテンションの残量にあわせてタスクを短くしたり、時間を短くしたりという調整を行うのは「アテンションの管理術」としてもっと注目する必要があるのではないでしょうか。

越えられない壁に頭を打ち付けるためにこうした管理術があるのではなく、可能なことを増やしてゆき、満足を増やしてゆくのが目的なのですから。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。