宴の支度 (4) これからのライフハック

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先日長年ためてきた手紙類を整理していたときに、自分の父から届いた一通の手紙を見つけました。

私の父は口で話している時にはとても不器用ですが、書く言葉に対してはとても繊細な人です。その手紙も、大学院を修了できるあてもなさそうな頃の先行き不安な息子に対する叱咤と激励とを、口で言えば小言になりそうなところをおさえて、何度もワープロで推敲してつづったものでした。

しかしすっかり忘れていたのですが、その手紙の中から Robert Ringer の「100万ドルの習慣」のコピーを見つけたときの驚きといったら。ライフハック・自己啓発本好きは遺伝だったのか…。

ライフハックなるものは最近になっての造語ですが、もともとはサミュエル・スマイルズの「自助論」に始まり、アメリカではフランクリンや、カーネギー、ナポレオン・ヒルなどの著者らが書いてきた伝統に則ったものでもあります。

父の時代に別の本があったように、時代にあわせて Self Help のテーマや本は変遷していきます。ライフハックもそういう意味では、インターネット時代の自助論というわけで、本質的な内容はあまり変わっていなかったりします。

あすなろ BLOG カンファレンスに寄せられた質問の4番目に「これからのライフハックはどうなる?」というものがありますが、私個人はあと数年はこのミームは存続するのではないかと思います。

ライフハックという言葉はしだいに使われなくなるかもしれませんが、便利なテクニックだけはちゃんと受け継がれてゆくことでしょうし、新しいツールと新しい状況には、新しいハックが当然編み出されてゆくはずだとも思います。

一方で、私個人の危惧はなんでもかんでもすべてが「ライフハック」と呼ばれることによって「ライフハックなんて意味のないもの」だという空気が蔓延するのではないかというものです。これは、欧米のことわざでいうところの、「たらいの水とともに赤ん坊まで投げ捨てる」ことになりはしないかというのが心配なところです。

そのためにもハックの数を増やすのではなくて、「自分に使えるか否か」という単純な論理で集約してゆき、ハック自体もダイエットしてゆく方がいいのではないかというのが今の私の考えです。

そんな思いで書いたシリーズが昨年末の「一歩進んだ〜」シリーズでしたので、ここでまた引用しておくことにしておきます。

一歩進んだライフハックへ (1) 一歩進んだライフハックへ (2) 一歩進んだライフハックへ (3) 一歩進んだライフハックへ (4) 一歩進んだライフハックへ (5) 一歩進んだライフハックへ (6) 一歩進んだライフハックへ (7)

集約化については、gihyo.jp の連載でも言及しています。

ライフハックの「今」、あるいは Life Hack 2.0 の可能性について

また欧米では Tim Ferris の The 4-Hour workweek に見られたような「ライフスタイル・ハッキング」という考え方も生まれつつあり、これはまだ日本ではまだ広がっていないもののひとつですので、これも紹介したいと思います。

p.s.

他のパネラーのみなさんもライフハックの未来について考えてくださっていますので、こちらもご参照ください。あすなろ BLOG カンファレンスの申し込みは金曜日18時で閉めきりですので、「行けそうだ!」という方は急ぎご登録ください。まだ若干席に余裕はあるそうです。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。