ホームガジェット活性化する時間と空間で、キングジム「ポータブック」を考える
ガジェット

活性化する時間と空間で、キングジム「ポータブック」を考える



あの携帯型入力デバイス、ポメラを開発したキングジムから、格納型のフルサイズキーボードを搭載した小型のWindows10デバイス、Portabook (ポータブック)XML10 が発表されています。

キングジムはこれを「パソコン」と呼称して、小さなボディにフルサイズの使いやすさを実現とうたっています。また、記者会見の様子をみていると、「ビジネスの未来は変えられないが、明日の出張は変えられる」というキャッチフレーズも踊っているようです。

本当にそうでしょうか?

こうしたデバイスには無条件で心が踊る方なのですが、今回ばかりは出てきた情報を注意深くみてみないといけません。すると、ポルタが目指して、結果として選ばれることがなかったあのニッチが再度見えてきます。

ポータブックの仕様をみてみる

ポータブックの仕様を概観してみましょう。204x153x34mm の筐体はちょっと小さめのお弁当のようなサイズで、ここからフォールドアウトするキーボードは横幅266mmと、Apple のMagic Keyboard 2 を横に13mm縮めた寸法をしています。キーピッチは18mmと、Magic Keyboard の19mmと同等ですが、やはり少し小さなフルサイズというところです。

portabook-image

このサイズで Windows 10がちゃんと動くのですから、これは本当に頑張って開発したなと思います。さまざまな妥協を受け入れ、製品として実現したキングジムには敬意を表したいと思います。

img-view-12

最も利用価値が高そうだったのは、背面端子が多い点で、HDMI、VGAが装備されていてアダプタ無しでプレゼンができるというのは魅力かもしれません。しかしあとで触れる点を並べてみると、これも必要なのかは自信がなくなってきます。

キングジムによれば、ポータブックはあえてスペック至上主義を排し、外出先での簡単な資料作成や情報のチェックを行うために十分な機能だけを搭載しているとのことです。

しかしこれ、7年前ならば通用する謳い文句だったのですが、今もこれは有効なのでしょうか?

どの時間を活性化するためにあるのか? という視点

7年前にポメラについてこのブログで扱った際に、「パソコンが目の前にないときにパソコンと人間をつないでくれるインターフェース的なガジェットにはまだまだ可能性があると思います」ということを書きました。

これはまだ iPhone が日本で登場せず、クラウドサービスもなかった時代の話です。机のうえのパソコンの情報は出先に持ち出すことができず、出張でのった新幹線のうえで作業をするには多くのハードルを飛び越えないといけませんでした。このハードルをハードウェアで飛び越えようとしたのがポメラだったわけですね。

結果はその後の歴史が示していて、このハードルはスマートフォンとクラウドという近道によって風穴が空いてしまいました。実際、簡単なビジネス書類ならばつり革をもったまま片手でスマートフォンで作成するほうが速いという若い人も多いでしょう。

skitched-20151209-102245

そこでポータブックをあえて iPad Air 2 と iPhone 6 Plus にぶつけて仕様を比較してみると、このようになります。これは正直いって厳しいと言わざるをいえません。

いくらスペック至上主義を排しているといっても、同等の価格帯においてストレージ、画面解像度、重量、バッテリー駆動、無線LANの速度のすべてで負けてるのは、他の面で何倍も便利でなければ9万円のデバイスを買う理由になりません。

portabook-target

これをデバイスを使う「時間」と「空間」で考えてみましょう。歩きながらのスマホはいけませんが、届いたメールを歩きながらさっと確認できるかという意味ではiPhone は歩きながら秒速で情報を確認できるスケールからスタートして、つり革につかまって文章を書くスケールまでが一番活性化できます。

もちろんカフェで腰掛けて文章をiPhone で書くこともできますが、そこだと iPad も光り始めますのであえて iPad をここにすえてみましょう。それよりも生産性を求めるなら、デスクで周辺機器もそろったPCを使うというというところまで、このスペクトルは伸びてます。

そうなると、ポータブックが活性化したいと思っている場所が、ほかの同等価格でより高いスペックをもったデバイスですでに活性化されているのがわかります。

フルサイズキーボードは売りですが、膝の上で使うのに無理があるのですから(実際、キングジムの動画ではすべてのシーンで机のような表面が登場しています)、せめて新幹線で席に座っているシチュエーションか、喫茶店での1時間ほどの時間と空間を想定しないといけません。

それならば、iPhone とキーボードという組み合わせにするだけで、つり革スケールからカフェスケールまでをシームレスに活性化できるのですから、そちらのほうがよくないでしょうか? プレゼンテーションは、Apple Digital AV アダプタをデスク専用とカバン専用に二つ買うのでも安くすみますし。

もちろん、これは私がポータブックの想定顧客ではないというだけのことかもしれませんし、私にはみえていない面もあるのかもしれません。

しかしそのデバイスを使うことで活性化し、生産性が高まる時間と空間を計算に入れずに、そして他のデバイスに対する相対的な有利性に触れることなくレビューはできないのではないか? 私にはそう思えます。

購買時の、あるいは不買時の参考になれば幸いです。

素直にフォールディングキーボードかっこいい!さわってみたい!とは思っていますので発売は待ち遠しいです(笑)

キングジム・たためるパソコン、『ポータブック』


著者について

堀 正岳

「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jp 管理人として、仕事術、ライフハック、テクノロジー、文具、ソーシャルメディアなどについて執筆中。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Evernote ライフスタイルアンバサダー。ScanSnapアンバサダー。この他のブログに、ライフ×メモ 、Climate+を運営しています。