誤解されやすいけれども実は本質的な、「目標をもたない」という生き方

Goal

新年を一つの機会として一年の目標を立てることは、何の問題もなさそうですし、当然のことのように思えます。そもそも目標がなければ、どこにも到達できません、よね?

しかしこのことを考える時、もう3年も前に行われた第一回目の World Domination SummitでのZen Habits管理人Leoの講演を思い起こします。

なにか明確な目標を抱くのではなく、毎日やらずにはいられない行動だけを繰り返すところまでいけば、いわば「目的地のない、旅そのものが目的」の境地にまで人生を簡単化できると Leo は語ります。

人生を簡単化すれば、どんな風にでも変わることができる。Zen Habits の Leo Babauta 基調講演 [WDS]

Leoのいう「目標をもたない生き方」は、たとえば「2014年は収入を◯◯万円にしよう」といった未来に対してかかげられたハードルを外して生きようという提言です。**いま自分がそうでないものを思い描いて、その幻想を達成できたら幸せ、達成できなかったら残念に思うという枠にはめられた思考を外してみないか?**という挑発でもあります。

しかし一方でそれは方向性がないということでも、計画性がないということでもありません。誤解を受けやすいこの微妙な話題について、すこしまとめておきましょう。### 目標がないということ

あるいはこの、「目標をもたない」という表現自体に多少問題があるのかもしれません。しかし Leo が何度かブログで書いている内容は次のようなことを指しています。

  • 「ここまで達成できたら幸せ」という目標は、必ずしも「今」を幸せにしてくれないことがあり、途中経過がつらいという傾向もある。

  • 未来をこのようにしたい、という願望によって現在が束縛されてしまううえに、実際に達成できたとしても次の目標へと息を切らしながら突き進むことになりかねない

  • 目標にとらわれるあまり、予想外のできごとや脱線がもたらす豊かな未来に対して盲目になってしまうことがあり得る

つまり未来の自分をこうしたいと願うあまりに、現在の自分が人質にされてしまうことを避けようという試みです。では具体的にどうすればいいのでしょう?

ブレイクダウンよりはボトムアップ

実際のところは、「本を書く」「旅行にでかける」など、計画性をもって達成にむけて試みなければいけないことは多々あります。そうしたことを否定しているわけではないというのが、この話題の誤解しやすいところです。

それは「本を10冊書くぞ」「年収を◯◯にするぞ」というハードル的な目標を立てて一喜一憂するよりは、むしろ「本を出し続ける生活を維持するには?」「年収が増えるようにするために毎日できることは?」という質問を立ててみて、楽しくそれを維持する方法を探すという具合に、主客を転倒させた考え方なのです。

随分前に拙著「情報ダイエット仕事術 」で、大目標を立てて中目標・小目標へと分解(ブレイクダウン)した時に、必ずしも行動可能なアクションに落とし込めないという問題について書きました。

しかし毎日やっていることが中目標を満たす方向性をもっているというボトムアップ式なら、それは明確なハードルを設けずとも、ゆるやかな航路でそれを達成することができますし、途中の進路変更も楽なのです。

毎日やっていることを充実させれば、未来はいずれやってくるだろうというわけです。

実は Lift のようなサービスと親和性が高い

この考え方は昨日紹介したLiftのようなサービスと矛盾するのでしょうか?

いいえ。それどころか、Liftのような「毎日習慣にチェックイン」するという考え方こそが、ボトムアップ式の目標達成そのものだったりするのです。

「体重を ◯ kg減らそう」が不必要なハードルをもし生み出すなら、「毎日 ◯ 分運動してみる」という行動に置き換えて、あとはそれを少しずつ増やすなり、運動をハードにするなどして調整してゆくわけです。

こうしてみると**「目標をもたない」という生き方は「目標がない」生き方ではない**というのがお分かりいただけると思います。

それは目的地についたところを想像しながら航海をするのではなく、コンパスを手に、辿り着く岸は多少思い描いていたのと違ってもきっとよい場所だと期待しつつ、旅路を楽しむ態度なのかもしれません。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。