よく誤解されるEvernoteとSpringpadの違いと活用法
Evernoteと同じ「記憶のツール」としてよく挙げられるサービスにSpringpadがあります。私はEvernoteエヴァンジェリストみたいな活動をよくしていますので「Springpadはライバルなんでしょう?」と聞かれたことがありますが、べつにそんなことはありません。
二つは方向性は似ていても、使い方も、対象ユーザーもまったく異なるサービスだと思うからです。これもよく聞かれるDropboxとEvernoteの違いと似ていますね(笑)。
そこでまだまだユーザーの少ないSpringpadをEvernoteと比較してその強みと弱みを見てみたいと思います。
Evernoteは長期記憶、Springpadはワーキングメモリ
SpringpadはEvernoteと違ってスケジュール、タスク、書籍、製品などといった定形のデータを扱う機能にすぐれています。これだけではピンとこないと思いますので、本の情報を取り込んでいるところなどを動画にしてみました。
SpringpadのiPhoneアプリを試してみる from mehori on Vimeo.
これを見るだけで「Evernoteとはなにかが違う」と思われた方も多いと思います。SpringpadはEvernoteと競合している部分もありますが、保存できる情報の質が違うので「Evernoteキラー」にはなり得ません。この2つを対立軸で説明している記事をよくみかけますが、これは両方のサービスに対して誤解を生む結果になっていると思います。
Evernoteが生の情報をクリップして、タグやノートブック、ノートブックスタックといった高度な整理を可能にするのに対して、Springtabは予め決められた「本」「ワイン」「レストラン」「レシピ」といった情報をキャッチすることを得意とします。
また、Evernoteがより長期的で自由な情報の蓄積に便利な「長期記憶」なのに対して、Springpadはすぐに役立つ、自分のライフストリームを記録する「ワーキングメモリ」の役割を担っているといってもいいでしょう。
Springpadを使い始める
EvernoteとSpringpadの違いはそこだけにとどまりません。実際に使ってみると、むしろ違う場所の方が多いことに気づくはずです。
まずSpringpadのアカウントを取得して最初にすることは、いくつかノートブックを作成することです。これは画面上の「+」アイコンから行います。
次に、動画で示したようにiPhoneや検索を利用して記録したい情報を取り込んでいきます。とりあえずは本の題名などで感じを掴んでみるといいでしょう。
取り込まれた情報にはEvernoteのようにタグを付けることもできますが、注目したいのはそれ以外に「フラグ」「アラート」「星評価」「所有しているか否か」といった情報を加えることができる点です。
なぜこうした情報を加えられるかというと、SpringpadはツイッターやFacebookのように、ユーザーをフォローすることで広がるソーシャルネットワークの側面をもっているからです。
友人をフォローしていたら、その人の所有物や、チェックしたもののストリームをみることができます。そして気になるものがあるなら「Spring」ボタン(Facebookの「いいね!」に相当)を押したり、自分のノートブックに取り込むことができます。
ここでとても重要な事実が。Springpadの情報の多くはEvernoteと違って共有されることを前提としています。本やワインの情報は、デフォルトでフォロワーに見えるようになっていますので、不都合な場合は設定で変更しなければいけません。追記:コメントでご指摘をうけましたが、現在ではデフォルトでシェアはされないそうです。シェアする場合も、タイプごとに細かく設定できますので本はないしょだけど、自分のワイン遍歴は公開といったきめ細かいことができます。
もう一つ、面白い機能に Board という、ノートブックに含まれた情報やメモ、地図、付箋を自由にならべてホワイトボードのように利用するモードも存在します。参考資料などを机のうえに並べている感覚で使えます。
Springpadにむいた情報
以上、Springpadの特徴を理解するために機能の一部分をざっと紹介しましたが、これだけでもこのサービスがEvernoteとまったく質が異なるものだとおわかりいただけると思います。
Springpadは、単純にいってしまえば「ちょっとしゃれたウィッシュリスト」の機能が多く、本棚のデータベース、ワインのデータベースといったように、定形の製品やレストランなどのデータを軸に広がります。
Evernoteは任意のファイル、任意のページを、任意な形で保存できるので自由度が多い反面、ユーザーの側に「このように活用したい」というイメージがないと利用価値が減ってしまう傾向にあります。
一方、Springpadにも苦手な面が多々あります。もともとの機能がウィッシュリストに近いので、メモアプリとしての側面は弱いのが現状ですし、日本語の検索もうまくいかないことがよくあります(「日本の若者は不幸じゃない」の書名の「若者」で検索してもヒットしないなど)。
Evernoteと違って専用のクライアントがなく、ウェブからしかアクセスできない点も利便性からマイナスとなります。このことは、ScanSnapなどからファイルを自動で送れないことも意味しています。
このようにまったく異なる、お互いに一長一短のあるサービスですので、今後とも2つが競争しながらユーザーにとって便利な記憶のサービスの地平を広げてくれることを期待しています。
補遺:SpringpadからEvernoteへ
EvernoteにはSpringpadのように自動でウェブから書名や価格情報などを拾ってくれる機能はありませんが、SpringpadのデータベースをHTMLでアウトプットし、そのページをクリッピングすれば手数は多いものの、Springpadの情報をEvernoteに移行することができます。
p.s.
これをチェックしていて気づいたのですが…。
Springpadで追加された本などの製品のURLには、たとえばAmazonなら自動的に Springpad社のアフィリエイトコードが追加されるようになっていて、編集は不可能になっています。細かいことですが、気になる人は気になると思いますのでご注意ください。