Blog Action Day 2009: ながいながい時を意識する

future

一年後にあなたはどこにいるでしょうか? 5年後は? 10年後は? 50年後は?

世界はどんな場所になっているでしょうか? 100 年後は?、1000 年後は?、10000 年後は?

今年の Blog Action Day のテーマは「気候変動」です。ご存じのかたも多いと思いますが、地球温暖化と気候変動は私の専門ですので、詳しい研究の話題を紹介しようと思ったらいくらでも可能なのですが、しかしそれよりも大事で、書いておきたいと思ったのが、実は「仕事」「生活」「人生」にも応用できる「時間スケール」の考え方です。

スケールが変われば、問題も変わる

最近、地球温暖化は「小休止」してるのではないかといった報道が著名なニュースサイトでも耳にするようになりましたが、どれも「時間スケール」を無視して誤解を広めているようにみえるのが気になります。

たとえば今年の夏は冷夏でしたが、1年程度の冷夏がやってきても地球が寒冷化しているわけではありません。今よりもずっと温暖化が進んだ世界でも、毎年の気温の揺らぎは存在します。暑いなりに、「今年は比較的涼しかった」という年はかならずやってくるのです。

こうした揺らぎは10年から数十年規模でも存在します。研究者の間では、「地球寒冷化? そりゃ寒冷化してるさ! 過去数十年で 13 回くらい」というジョークもあるくらいです。この程度のゆらぎは、長い目でみた温暖化を否定するものではないのです。

地球温暖化はどの時間スケールかというと、もっと長い、数十年から 100 年といった物差しではじめてはっきりと見えてくる現象といわれています(目を閉じなければ兆候はすでに無数に見えてますが)。**スケールが違えば、問題の見え方は変わってきます。**使っている物差しの目盛りを明らかにしないと、こうした話はすべて意味を失ってしまうのです。

あなたの視点の「時間スケール」は?

同じことは仕事や、人生でもいえます。私たちは「今」しか見えませんので、「今」を利用して未来を予測しようとしますが、短期のデータを使って未来を予測するのは地球温暖化でなくても、危険なことです。

非常にながい時間を意識したいと思ったとき、私は以前も紹介した Long Now Foundation の「10000 年時計」の記事をよく見返します。この時計は最低限のメンテナンスで 10000 年の間時を刻めるように材料、機械部分、そして文字表示にまで気を遣われています。10000 年後の言語が変化していることも想定してわかりやすいマニュアルを作成することも考えられています。

「10000年動く時計を設計しよう」というゴールを定めるといろんなことがみえてくるように、「20 年後に○○の状態でいよう」という目安と定めると未来は急にはっきりと見えてきます。1年、5年、10年といった時間が、なんだか手に届くような近さで想像できるようになってくるのです。

同じことを、50 年、100年、1000年と増やしていって、きっと私という人間の記憶が消えさった後のことも想像を広げると、砂浜の砂一粒程度でいいので、何か残せるもの(あるいはゴミのように、残すべきでないものの不在という形で残せるもの)はないかと考えが広がっていきます。

荒れ狂っている「今」を逃れて、ながい時間を意識する、まさにそうした気持ちを引き出すためにこの時計は制作されているのです。

ながい時間を意識して、今を生きる

同じ Long Now Foundation で温暖化について行われた Saul Griffith 氏の講演が、単純な計算で、いまわたしたちの地球がおかれている状態を解説していて示唆に富みます。

いまの私たちの生活を支えている17 テラワットという膨大なエネルギーはその多くが石油を燃やすことで作られています。このすべてをクリーンエネルギーでまかなうとした場合、現在の太陽電池ならオーストラリアほどの面積を割かなくてはいけません。

こうしたクリーンなエネルギーに投資し、エネルギーの消費を抑えた社会を作らなくてはいけない時期は、まさに「今」です。ふだんの生活でリサイクルをしたり、ちょっとでも省エネを心がけるのは、決してむだなことではなくて、こうした社会をつくるための反復運動なのだと私は前向きに考えています。

100 年というスケールで起こる気候変動は一個人が考えたり、引き受けるには大きすぎる問題かもしれません。しかしだからこそ、地球上のすべての個人の力を集めなくてはいけないのだともいえます。

自分の人生の 10 年後を見据えるのと同じ勇気をもって、地球の 100 年後を見据えて、「今」行動しませんか?

p.s.

Lifehacking.jp では以前からブログ収益の 10% をマイクロファンディングの Kiva (リンク先は私の貸し付けリストです)、Twitter 上での活動で有名になった Mara 国立公園 (ライオン画像可愛い!)、そしてユニセフなどの募金にあてています。

今考えているのは、これをもう一段階踏み込んで自分のカーボン・フットプリントをなるべく相殺できないかという活動です。CarbonPass などで手軽にオフセットを購入することもできますが、もうちょっと能動的な何かがないか模索しようと思ってます。CarbonPass は自分のカーボン・フットプリントを簡単に計算できるので参考なりますよ。

「iPhone 情報整理術」の売り上げの一部もこうした取り組みに利用させていただいて、Lifehacking.jp のフットプリント・ゼロを目指したいと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。