[Books] デジタル・ワークスタイル

dws.jpg ワークスタイル・メモ の徳力さんの書かれた「デジタル・ワークスタイル」を読みました。

ライフハックについて紹介する本としてバランスよく、作業時間の改善、メールなどにかかる時間の無駄の節約、 デジタルツールを使うことで時間と場所を越えて仕事をこなす方法、そして RSS やソーシャルブックマークを利用して情報収集を効率的に行う方法などが歯切れのよい文章でまとめられています。

以前紹介したデジタル・ハック同様、基本がすべて上手に書かれているという印象です。

しかしこの本の本当の魅力はその副題、「小さなことから革命を起こす仕事術」にあると思いました。Part2 「小さな努力で最大限の成果を上げる」の前書きで著者は次のように書いています。

日々の作業を数々のライフハックで効率化することは、それ自体は重要なことだが、あなたが1日24時間という大事な時間を、作業にかけていることには変わりがない。問題は、作業の効率化によって浮いた時間を何に使うかだ。

…これからの時代を生き抜いていくためには、ただ単純に自分が与えられた作業を効率化していくだけではダメなのだ。[中略]あなたが時代の変化に翻弄される人間でいるのが嫌なら、自分が変化を作り出す側にまわるしかない。 非常に深い考察です。ライフハックは表層的には「いままで10しかできていなかった仕事を100にできたので嬉しい」、という仕事や日常のテクニックですが、しかし深いところではこうした時代に変革をもたらす < 革命> の旗手なのだと私も思います。

本の中でこの文章が Part2 の前書きに書かれているのはまったく理にかなっています。

というのはこの章で、著者は RSS などを利用した大量の情報の処理だけでなく、そうした情報に解釈や自分の判断を加えることを説いているからです。そしてブログなどを利用した情報の担い手となること、つまりは価値観の創出を行うことで、新しい視点をもったプロフェッショナルになることを読者にすすめているようです。

本をひらいて、知ってることばかりだな、と思ったウェブツールやライフハックの達人の方でも、ぜひこの視点で読んでほしいと思った一冊です。

テクニックの解説だけならウェブでいくらでも探せますが、こうした「声」はやはりブログや本の方がいいですね。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。