2020年はしばらく終わらない。柔軟性のある目標設定について

今年は新型コロナウィルスの影響もあり、多くの人の予定が阻まれ、思い通りに計画が進めらない、もどかしい一年でした。ほとんどの人は季節が暖かくなったらしたかったこと、行きたかった場所、会いたかった人とのイベントを我慢して、この一年を過ごしたはずです。

その一方で、在宅勤務で思いもよらない時間が生まれたり、外出の時間が減ったことで意外な場面で成果が出たという人もいるでしょう。 例えば私は計画していた旅行や取材がままならなかった反面、自宅で家族との時間が増えたこと、料理へのこだわりに目覚めたこと、VRなどの新しい趣味で楽しみを見つけられた一年になりました。

箇条書きのリストで行動可能な新年の目標をつくる

今年の始めに、投資家の藤野英人さんがFacebookでシェアしていたものを参考にして、箇条書きでアクションを取ることが可能な目標リストを作成して記事にしました。いま振り返ってみると、この奇妙な一年の現実そのままに、達成できたものとできなかったものにムラのある結果となりました。

  • 仕事
    • 論文を2つ出版する → △ 主著は一つの論文の出版にとどまった
    • 公募を出し続ける → ○ 新しい職場に採用された
  • 個人
    • 本の執筆を2冊おこなう → △「テレワーク大事典」をネタフルのコグレさんと共著した。もう一冊は企画段階
    • 睡眠時間を6時間確保する → ○ おおむねできた
    • 本を100冊読む → ◎ 大幅に上回った
    • 冬のコミケあるいは技術書典に本を出したい → × 未達成

これ以外にも、大きくなってきた上の子供の勉強のサポート,下の子供の興味を伸ばすことなど、手応えを感じることができたものと、家族での海外旅行のように諦めざるをえなかったものもありました。そして、当初このリストには加わっていなかった「ブログの静的サイト化」や「自作PCの作成」といったように、後から加わって実現できたものも多くありました。奇妙な一年にふさわしい、へんな成果といえるかもしれません。

しかしなんといっても、これまでのところ家族がみな健康に過ごせていることについては、感謝しなければいけません。こればかりは、どんな計画をたてようとも、注意を心がけても、最終的には確率的なものですので。

2020年はまだ終わらない

そんな2020年もようやく年末になり、あまりに多くのことがありすぎた一年を後にしたい気持ちはやまやまなのですが、現実的に考えると暦の上で2021年になったからといって、急になにかが変わるわけではありません。

市中の感染状況はむしろこれから本番を迎えそうな勢いで伸びつつあるのに、それに対する対応の見通しはたっていません。ワクチンがいつ接種可能になるのかも含めて、すべてが五里霧中です。現実的な意味において、しばらくのあいだ私たちは2020年が継続しているかのような影の中で過ごさなければいけないのです。

すると、来年の目標もそれを見越して現実的で、予想外なものに対して柔軟なものにせざるをえません。「本を書きたい」「仕事を成功させたい」といった目標は平時ならば私たちの努力次第である程度アウトカムを選択できます。しかし2020年の影のもとでは、それは楽観的にすぎます。

なので、一年の目標についても階層的に主目標・代替目標といったように柔軟に目先を変えられるようにしておくことが必要不可消すです。今年の苦しみは多くの場面で、選択肢がなかったことに起因したのですから、今度は未来をなるべく選べるようにしておくのが吉です。

その一方で、急な外出禁止や、自宅での作業が増える事態を想定して、学びたいこと、身につけたいことをリストアップするようにしておきましょう。その時間は思わぬ形でやってくるかもしれないからです。私の場合は、VRワールドやアバターを作成・改変するのに必要になるBlender / Unity の知識を身につけたいですし、パンデミックが収束してきたら行きたい国の言語を学んでおくといったように、仕込んでおきたい活動はたくさんあります。

こんな奇妙な数年はもう二度とやってこないでしょう。それを最大限生かし、反脆弱性の考え方で人生のバネにして、あわよくば伸びるための目標作りが必要になります。できるはずです。今年を生き延びた私たちならば。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。