本棚に空きを作って、好奇心を入れ替える

先週末、仕事場である書斎にたまっていた荷物を片付け、冬の間に溜まった埃を本から払う機会がありました。

屋外に面した壁に寄り添った本棚は温度差のせいでカビがつきやすく、一部の大事にしていた本にシミがついているのを見つけては溜息をついていました。

こんなことになるのも、本が多すぎるからだ。置き場所がないからといって、こんなにも隙間なく本を詰めていれば、そりゃシミもつくし、カビもつくさと、もう少し早めに掃除をしなかったのを残念に思っているうちに、ちょっと「あれ」を久しぶりにやってみたくなりました。

空きを作る、遊びを作る

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注文してあった minikura book の箱を二つ取り出すと、少しだけ厳しい基準ですぐに必要になることがなさそうな本を選び出し、本棚に二つ、何も入っていない場所を作り出します。

選んだ本は写真で撮影し、Evernote にメモをとってから封印して月初に倉庫に送れるように用意します。

こうして久しぶりに開いた何もない空間には、気になった本をきままに買っては、書斎の一部として固定化するまえの、暫定の場所として活用します。

最近、こうした遊びの部分がなくて、書斎は過去に興味をもったものの倉庫にしかなっておらず、新しい好奇心が入り込む余地がなくなっていました。余白がなければ新しいものはなにも書き込めません。好奇心は次第に涸れてしまいます。

最近は電子書籍で本を買うことも多かったので、こうして書斎に手を入れる機会も減っていたのですが、電子書籍には電子書籍で、乱雑に本を積み上げる遊びがありません。

小さな電子リーダーにいっぱいに本が詰まっているのは便利なのですが、欲しいものがどこにあるのか探すのも大変な、息継ぎを我慢しているような苦しさも時折感じます。本棚に開いたなにもない空間は、そうした気持ちから開放されて本に触れ、眺めるためでもあるのです。

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ここは、整理の必要もなく本を置く場所ですので、届いた順に置いては取り出していきます。まず入れたのは、速水健朗さんの新刊「東京β: 更新され続ける都市の物語 」。オリンピックをにらみ、変化に注目して書かれた東京論。

これはいくつかすでに揃えてある江戸から明治期の東京の都市構造の話や、都市空間論の本と比較しながら読んで地理学の虫を満足させることができそうです。

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最近読み終えた本を置いて、読書ノートを作成しているものもあります。ロシア・シンボリズムの作家、ワレリイ・ブリューソフの短編集「南十字星共和国 」は表題作よりも現実と夢の境界線を問いかける「大理石の首」などが気に入っていて、その感想を書いているところでした。

本の解説には書かれていなかったのですが、この作家の最も有名な作品は16世紀ドイツを舞台にした「炎の天使」で、英語訳はオカルト文学扱いで奇妙な出版社から出ていること、プロコフィエフの同名のオペラになっていてApple Musicで聴き放題といったこと、あるいは作品の時代背景などを、Evernoteに書き加えておきます。

べつにすぐに役にたつわけではないのですが、なにかのときのために。幻想文学好きですし。

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電子書籍で読んでいたのに、どうしても紙のほうで読みたくて買い直した掟上今日子シリーズも、一冊だけここに。読み終わったら手放すかもしれませんが、まずは放り込んでおきます。

本棚に遊びの空間があると、急にいままで手にとったことのなかった本を入れて、好奇心も入れ替えてしまいたくなります。そのためにも、倉庫を使ってでも無理やり場所を作ってしまうのはおすすめです。

整理術については、もっと過激っぽいのですが勝間和代さんが新刊を出していますので、こちらも読んでのちほど紹介しようと思います。こちらは棚どころか、本棚そのものから消えてしまいそうではありますが!

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堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。