Evernote がもっている、Googleをも凌ぐアドバンテージ

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先日、来日していた Evernote CEO の Phil や、Evernote ジャパンの CFO 外村氏らと会食する機会を得ました。日本での伝説が始まった、あの豚組しゃぶ庵に、もう一度というわけです。

私は本当に幸運なことに、ちょうど Evernote が日本で広がり始めたタイミングでたくさんの記事を書いていたこともあって(例1, 2, 3, 4, 5)2009年10月のこの会に招待していただいていました。それから先のたくさんのコラボレーションがすべてここを起点に始まったので、非常に感慨深い一夜です。

Phil にとっても、日本というマーケットは Evernote の方向性を決める上でとても大切なようです。セコイヤ・キャピタルから5000万ドルの投資をうけ、新しい成長のビジョンを思い描いているであろう時期に、足元を固めてもう一度ユーザーやブロガーと話す機会を設けるというのは、当たり前のようでいてなかなか珍しいことではないかと思いました。

そこで Phil がシェアしてくれた話がとても感慨深いものだったのと、もしかして Evernote って自分が思っていた以上にすごいものなのではないかと思い始めたので、紹介したいと思います。### それは1億人が必要としている機能か?

1000万人のユーザーを獲得した Evernote の次の目標はさら多くの人に長期的に安定して利用してもらえるサービスをつくることにあると Phil はいいます。

それを意識するために現在、Evernote 社内には「それは1億人が利用するか?」という標語が掲げられているそうです。

小手先の新機能を追加するのは楽ですが、そうした機能はある人には便利な反面、別の人を疎外することになりかねません。そのことを意識するための標語なのだそうです。

これとともに、Phil は「Evernoteを100年間生き残る会社にする」という目標を掲げています。数年スパンで考え、Google のように大きな企業に買収されることを目標とする会社も多い中、これは珍しいことといっていいでしょう。

この「100年続く会社という考えは、日本から学んだことなんだ」と Phil はいいます。「私たちの抱く『第二の脳を作る』というビジョンを支持してくれる人が大勢いるからこそ、私たちは長く愛されるサービスを作ろうと思っている」

Evernote を影ながら支持してきてよかったなあと思う一言です。

Evernote がもっている独特なアドバンテージ

Phil と会話をしていて気づかされたのは Evernote がもっている独特なアドバンテージについてでもありました。それはある意味、Google にも匹敵するものなのです。どういうことなのか、図でご説明します。

Evernote google

ここで緑の円は、個人がウェブに向かって発信している情報だと考えてください。ブログ、ウェブページ、ツイッターのつぶやき、なんでもいいです。

Google の役割はこの情報をすべてクロールして、意味のある形に整理することです。なので、周囲に点線で示したようにすべての外向きの情報を集めようとします。

しかし、ウェブに出ているものだけが、個人個人が大事に思っている情報ではありません。むしろ、そういった個人の興味や価値観に近いデータはEvernoteの中に記憶として保存されていて、Googleはそれがブログの記事やつぶやき、あるいは地図上のチェックインといったアクションになって初めてクロールできるわけです。

つまり、情報の集積点という意味では Evernote も Google も同じなのですが、ベクトルの向きが逆なのですね。そして**Evernoteは個人のデータの根っこにいるのに対して、Googleは行動の結果しか見えていない分、そこに遡及する方向でしかたどりつけません。**考えてみると、Google+ のようなサービスも、こうした「ユーザーの手元に近いデータ」を求めてのことなのかもしれません。

もちろん、もう一つの違いは、Google は集めた情報を活用して広告などを作れるのに対して、Evernote は仕組み上データはプライベートなものですのでそれはできないという点です。

しかし、ユーザーが自らアクションを起こす場合はその限りではありません。EvernoteからGoogle+やFacebook、ツイッターに情報を共有する場合には、Evernoteと他のサービスはうまく連携して、ユーザーに利便性を与えつつ収入を得る仕組みをつくれるわけです。ここに、Evernote と万能共有サービス Google+ が連携する機運が高まっているのではないかと私は思いました(Phil が言ったわけではありません。私の妄想です。念のため)。

情報がもっと個人の手元から発信され、ネット上のコミュニケーションが濃密になっている、このタイミングで Evernote Trunk Conference があるのはきっと偶然ではないはず! と何かがささやいています。

というわけで、それを見に行きたいと思います。いきなりですが8月、サンフランシスコに飛んでこの目で確認しに行きますよ!

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。