卒論を書いた学生が入社までにすべきこととは?

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某 N 大で働く私ですが、今年も卒論、修論にがんばってきた学生さんたちが、まとめにかかっています。先日の論文提出日には、おおぜいの学生さんと、手伝っている先輩たちが廊下を走ってコピー機に向かう姿が見られました。

本当におつかれさまでした。これだけ首尾一貫したものを制作したのは初めてという人も多いでしょう。内容は関係ありません。これだけのものが「できた」ということ自体が賞賛に値します。おめでとう

でもこれでいきなり暇になって、日常から急に張りつめていた空気が抜けてしまい、「次になにをすればいいのだろう?」と考える人もいるかもしれません。以前、「世の中甘くないぞ! 社会に出る前に学んでおくべき12のこと」でまとめたような、ボスとの話し方や、会話術を練っておいた方がよいのでしょうか? 入社してから同期の人たちを抜いてスキルアップするために資格試験の勉強などを始めた方がいいのでしょうか?

生き延びる力

これらも大事だとは思いますが、今日の記事のために題材を探しにウェブ上を検索し回っていて、多くの人が異口同音に話していたこと、それは**「サバイバル力」、つまりは「一人で生き残るすべを身につけてほしい」**というものでした。

みなさんはこれまでずっと親御さんや、学校というシステムに守られていました。よっぽどの事が無い限り、世界はみなさんの味方で、みなさんを守るシステムはあなたを排除しないように守ってきてくれていたのです。それは悪い事でもなんでもなく、みなさんの成長にとって必要なことだったのです。

社会に出れば今度は別の組織に入るわけですが、ここは必ずしもあなたを守ってくれるとは限りません。いずれは、その組織をしょって立つのはあなた自身です。そのためには、まずあなた自身が一人で生き延びられる力を身につけている必要があります。そう、一人で立つべきときがきたのです。

問題が生じても一人で解決できる力。目的地に向かって一人で進む事ができる力。どうすればよいかわからないときでも、信じ、思い込み、もう一歩を踏み出せる力。こうした前向きな力を「サバイバル力」といってもいいでしょう。

どうしたらこうした「サバイバル力」が身に付くのか? と聞かれるかもしれませんが、たいていの人はもう身につけています。それが教育やサークル活動の隠れた意味だったからです。ただ、それをどう世の中に適用すればいいのか、道筋が見えていない場合が多いというだけだと思います。

並べてみると、なんでもないことがサバイバル力を養うヒントになります。

  • 海外旅行で生き残る術を試す: 卒業旅行であなたの「サバイバル力」を試してみましょう。なにも危険な場所にいったり、無理をする必要はありません。たった一人で、自身のない英語で道を聞きながら、目的地に向かって突き進んでみるというだけでもあなたの生存力を大きく成長させるでしょう。

  • やったことのないバイトに挑戦: 会社に必要なスキルを身につける時間は十分にあります。それよりも自分の見識を広めた方が得だと思う人は、就職先と違った業種のアルバイトをしてみると、いきなり視界を広げることができます。

  • ボランティアに身を投じる: いまではボランティアもウェブで探せます。無償で何かをすることは、どんなにお金を積んでも得られないものを教えてくれる可能性が大です。

  • 趣味を1ランク上まで磨いてみる: 働きだすと、なかなか大量に時間を投じて趣味の腕を磨くのは難しくなります。これまで身に付かなかった楽器のテクニックや、スポーツの成績を、この1、2ヶ月で磨けば、社会人になってから続けるときでも下地ができていますので楽になります。趣味は人生の宝となってあなたの「生き延びる力」を下支えするでしょう。

ようするに、卒業旅行もけっこうだし、遊んでいるのでも大丈夫。ただ、「生き残る力を養っているか?」という視点があるといいな。それだけの話です。

いわゆる「普通の就職」をしなかったし、卒業旅行にもいったことがない私が、にわかに寂しくなってきた研究室の一角で考えた事ですが。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。