ライフハックで人生の時間と集中力をとりもどそう
InformationWeek story on Merlin’s Macworld ‘08 presentation | 43Folders
ライフハック界のトリックスター、43Folders の Merlin が Macworld で公演を行なっていたそうです。その講演のまとめ記事が Information World に掲載されていて、ライフハックの本質を2ページで射抜いています。
彼は「7つの習慣」などといった、どちらかというと価値観や哲学的な自己啓発よりも即戦力を重視している人で、だからこそ GTD を信奉していると自分で認めています。
彼にしてみるとそうした「価値観」などの方法論はどこか催眠術みたいなもので、やる気にブースターをかけてはくれるものの、それは一瞬だけ気持ちがよくなる麻薬のようなもので、すぐに周囲から押し寄せてくる何百の雑用のせいで余裕を失うまでの間しか効力をもたないと考えているようです。
まず時間と、集中力(アテンション)を取り戻すこと。それがライフハックの至上命題だというわけです。
このことを説明するのに Merlin はユーモアをこめて「同僚が廊下で1万円をよこせといっても応じないだろうけど、なんで時間や集中力を奪ってゆくのには耐えられるの?」と口にしています。
「自分の中で『時間の価値』が低すぎると、間違いなく周囲の人や、周囲のものはあなたの時間と集中力を奪い去ってゆくんだ」
こうした状況は、多くの人がいまやナレッジ・ワーカーである事と関係しています。
ナレッジ・ワーカーは、どのように仕事を片付けるか、どのような時間の配分をするかが比較的自由であるかわりに、ブラックボックスとして機能することを期待されています。ボスやクライアントから注文がやってくる。彼らはあなたがそれをどのように実行しているのかには興味がない。そのかわり、時間通りに仕事が実行される事が期待されているわけです。
ナレッジ・ワーカーは多くのボスをもっているような状態でもあります。ボスやクライアント はあなたが他に多くの仕事をかかえていることなど知りません。自分の仕事に対して結果が迅速に与えられる事だけを望んでいる訳です。ナレッジ・ワーカーとしてあなたは、自分の時間と仕事を自己管理しないといけないのです。
答えはライフハック
時間と集中力を作り出す小さな習慣の連続で、トータルで見た生産性を上げてゆく習慣が必要だというわけです。講演のなかで Merlin はいくつかのハックに話をまとめています。
ハック1:自分と周囲のものとの関係をもう一度見直す:
この忙しさは上司のせいであるのと同じくらいに、自分自身で作り出したものでもあると考えます。そんなにテレビを見る必要はあるのか? RSS は? YouTube は? 「一つの事をしている間は他のことはできない」というオポチュニティ・コストを常に意識して、自分が取り込む情報やメディア、そして人間関係に至るまでを新しいルール作りで調整します。
ハック2:アクセス制御をする
誰が、何が、あなたの時間と集中力にどのタイミングでアクセスしていいのか、ルール作りをします。いわば、自分に対するアクセス制御というわけです。たとえばメールの自動受信は切り、午前中にメールは読まないようにする事もアクセス制御といえます。
** ハック3:周囲と新しい合意を作り出す**
だらだらとしたメールの書き方を改めたり、緊急連絡はメールではなく IM で行なうようにするなど、周囲の人との新しい合意形成を行なう事で、チーム全体の生産性を上げる事が可能になります。たとえば午前中は電話を控えめにし、集中する時間をつくる、などといったものです。
周囲との合意形成については、要求ではなく、相手の「イエス」を引き出す質問にすることが重要だともしています。たとえば子供を寝かしたいなら、「もう眠る?」と聞くのではなく、「どのパジャマを着たい?」と聞いた方がいいのと同じように、「会議を設定してください」というのではなく「会議をするなら何日の何時がいいか」と、相手を自分の方向へと突き動かす話術は有効だということです。
Merlin がウェイターとして働いていたときに同僚が教えてくれたトリックに、つねに「笑顔でうなづきながら話す」というのがあったそうです。「食事はよろしかったですか」(笑顔で頷きながら)「食後にチーズケーキはいかがでしょう」(笑顔で頷きながら)。
私自身はここまで「目先のこと」ばかりを考えていると、たいていその目先の事に埋もれてしまう人間なので、「価値観」や「目標」といったコンパスがないとやっていけないタイプです。でも毎日の瞬間瞬間を作っているのは「時間」と「集中力」なのだというのはまったく同感です。この二つがなくては、旗が立派でも船はどこにも行きません。
この視点はとてもすばらしいので今後もなんども振り返る事になるとおもいます。 発表のスライドはそのうちウェブで共有できるようにまとめている最中とのことですが、写真の形でなら公開中です。