仕事の速さと「主体性」、そして職場の自由度

昨日の なぜか仕事が速い人の習慣 (The 21 増刊号) の記事では、仕事の速い人のインタビューにいくつかの共通点があるということを書きました。

ただ、あとで読み返してみると、この共通点そのものでさえ、一つのキーワードで一括りにできるということに気づきました。それは**「状況を主体的にコントロールする」**という取り組み方です。

残業をしないことを選ぶこと。スケジュールを先手を打って決めること。相手の期待に先回りしてゆくこと。これらは全て主体性の問題だといえます。

仕事を選ぶことはできない。周囲の環境を選ぶこともできない。でも、自分が周囲の環境にどのように対応するかは、選びとることが出来る。これが仕事の速い人にみられた、究極の共通項だったように思えます。

「主体性をもつ」というのは「7つの習慣」の第一の習慣、“Be Proactive” でもあるわけですが、よく主体性と周囲の環境とは関係しているようにとらえられることが多い気がします。今日はこの、主体性と職場の自由度について青臭いことを考えてみました。

環境は関係ない?

言葉通りの意味でとらえるなら「主体的である」ということは、周囲の環境によらず、自発的に仕事を定義して自分で実行できるということだと思います。よく私たちは「周囲の環境がよくないから、思い通りにいかない」ということを考えがちですが、それでは本来の意味での主体性ではないということになります。

proactivity-graph.png

右のグラフで言うなら、上の図のように、「職場の自由度が高ければ、自分ももっと主体的に行動できる」と捉えがちなわけですが、実際は本当の意味での主体性が発揮できているなら、下の図のようになるのかな、と思います。下の図は、職場の自由度に関係なく主体性を発揮できないひし形の人に対して、状況に関係なく主体性を発揮できる少数派を☆で示しています。

これは何もひし形の人を見下すための図ではなくて(私はきっと左から2番目のひし形です…)、発想の転換のために簡単化して描いているものです。つまり、主体性のレベルは周囲と関係なく本人の選択で好きに決められるのではないか? というつもりで描いています。

いやいや、でも環境は重要でしょう

でも実際にはそこまで理想的にはいかないのが現実で、主体性を発揮しているつもりで定時で帰ると仕事が増えていたり、締め切りを早めにクリアするともっと仕事を任されたりというのがありがちな状況なような気がします。

それで思い出すのが、以前トヨタ自動車について特集した NHK スペシャルで、**「自分の2世を作る」**ということを話されていた引退間際の技師の話です。自分一人でできるキャパシティは少ない、なのであえて自分のスキルを周囲に惜しげもなく提供して、周囲の人々をレバレッジする。すると、今度は自分の2世たちが自分のかわりに自分と同じ仕事ができるようになるので、余裕が生まれる分、部署全体、そして自分自身のキャパシティも増えてゆく、といった話だった覚えがあります(正確には違ったかも)。

この点を考慮して、下の図の☆の並び方は若干右肩上がりになっています。つまり、やっぱり職場が切羽詰まっていたらとても高い主体性をもった仕事人でも身動きできるスペースが少ない。でも周囲の主体性を高めることで自分自身のキャパシティも全体のキャパシティも増やせる、ということなのかな、と。

**全部机上の空論ですので、実践してみたいと思います。**これから5月末まで、月曜日は「第一の習慣」の日として、主体的な仕事の仕方についてネットを渉猟して集めたこと、あるいは自分で試してみたことについて書いてみようと思います。

さて、ひし形から☆になれるかな?

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。