ToDo リスト再考 (3) プロジェクトリストと ToDo

omnioutliner3.jpg 昨日まで ToDo リストについて考えてきて、さて次はコンテキストについて書き始めようかと思ったところで、どうしてもこれを書かないことは先に進めない悩ましい問題を思い出してしまいました。それは GTD でいうところのプロジェクト・リストと、ToDo リストが放っておくと混じり合ってしまうという悩みです。

GTD でいうところの「プロジェクト」とは「2つ以上のアクションをともなう作業」です。たとえば「会議の予定を決める」というタスクであっても、1. 参加者全員の予定と議題の確認、2. 部屋の予約, 3. 連絡メールの作成と送信、というステップに分かれている以上、それはプロジェクトであると考えます。この場合、「会議の予定決め」はプロジェクトリストにいれて忘れないようにしつつ、ToDo には実際の行動、たとえば「会議の議題と予定について A, B, C さんに電話」という明確なアクションをいれてゆくことになります。理想的には、プロジェクトリストから ToDo リストに加えるべきアクションを次々と生み出してゆき、もうアクションが作れなくなったら、プロジェクトは「完了」ということになるわけです。

…というのは机上の論理では美しいのですが、実際やってみるとプロジェクトリストの中に ToDo らしいもの、ToDo リストのなかにプロジェクトみたいなものが入り込み、さらにモヤモヤとした考え事の断片が両者に入り込んですべてが Inbox になっていってしまいます。これに対策はあるのでしょうか?

David Allen 曰く…

こまったときは原典をひもとけ、というわけで Getting Things Done: The Art of Stress-Free Productivity の7章 (p155) を読んでみると、こういうくだりがありました。引用しますと:

「プロジェクト」リストはやろうとしている作業の計画だとか、ディテールについて書いておく場所ではないし、優先順や緊急度でアレンジするように苦心するべきでもない。それは単にあなたにとって「完了した」という気がしないすべてのものの一覧表にすぎないのだ。 (中略) 覚えておかなくてはいけないのは「プロジェクト」を「実行する」ことはできないということだ。実行できるのはプロジェクトを完了にもっていくために必要なアクションの一つ一つだけだ。

本には「プロジェクトリストのこのように書け」という例は載っていませんので想像するより仕方がないのですが、David Allen はさまざまなインタビューで「気になることを安心して頭から追い出せるなら、腕に書くのでもいい」と方々で言ってます。重点は頭から追い出すことであって、プロジェクトリスト上でプランニングをすることではないということになります。つまり、プロジェクトリストは思い切って簡単にすることが重要だということになるみたいです。

もうひとつ気づいたのは、失敗したプロジェクトリストをみていると ToDo とおなじような文体で「○○を××する」ということがたくさん書いてある点です。**「〜する」というのはアクションを想定しているので、非常に ToDo っぽい印象を与ええるのです。**これがプロジェクトのリストを骨抜きにしている一因と考えることができると思います。

いま取り組んでいる一つの改善点は、こうしたToDo 臭く聞こえるプロジェクト名を、「達成すべき状況」を意識したものにしたり、あるいは「単なる呼称」にもってゆくことです(冗談みたいですが、おかげで私のプロジェクトリストには無駄にかっこいい「本棚2段目整理計画」だとか「事務書類作成プロジェクト」などという名称が飛び交っています。趣味が入りまくり)。

プロジェクトリストは一つ、ToDo は複数(重複あり)

目からうろこが落ちたのは、小山龍介氏の “Time Hacks!” (東洋経済新報社)の「ToDo リストは複数持つ」という項目でした。スケジュールや、「忘れもの」がないことを保証するプロジェクトリストは一カ所に集約されていることが必須ですが、それに対して ToDo リストは複数あったり、中身がある程度重複していてもかまわないという話でした。

氏はこれを ToDo に冗長性を持たせるという言葉で表現していて、なるほどと納得しました。たとえば忘れずに果たすべきアクションが「書類の提出」であるなら、ようはそのアクションを行うことが重要なのですから、完璧な ToDo を手帳であれ、オンライン上にであれ作ろうとして苦心するよりも、手元の Hipster PDA であれ、Google Calendar であれ、手のひらであれ、目につくところに重複して書いてでも忘れずにやってしまうことのほうが重要だということです。

ToDo が重複していたところで、一目で「あ、終わってるじゃんこれ」と気づくわけですので、それを消すのに1秒かかる程度で、問題はまったくないというわけです。この項目を読んだだけで、いままで理想の ToDo を探し求めていたのが「てきとうでいいのかあ」と軽くなりました(それ以外にも、この本は氏のハックで人生の質を良くしていこうとする前向きな考え方が随所に見いだされる好書です。ぜひおすすめします)。

というわけでちょっとまわりくどくなってしまいましたが、ToDo にいれるべきでないもの、アップデートで陥りやすい落とし穴、そして GTD のプロジェクトリストとの違いについてまとめてきました。明日は最後に、コンテキストの分け方と、Hipster PDA 上で作った ToDo について書くことにします。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。