服につけておくだけで自動撮影を続けるライフログカメラ、Narrative Clip

身につけておくだけで30秒に一度自動的に撮影を続けてくれるライフログカメラ、Narrative Clipが先日届きました。Kickstarter での出資金を集めていた段階ではMemotoという名前だった製品ですね。

多少計画よりは遅れたものの、さまざまな製造上のハードルを乗り越え、大量生産のラインも稼働して、ちゃんと手元に届いてくれたことに感謝しています。ちゃんとうまくいっているKickstarterはこうした出資者との連絡も密になっていて、一緒に旅路を歩んできたような気持ちにさせてもらえるところも心地よいですね。

ではさっそく、届いたNarrative Clipをみてみましょう。### わくわくしながらNarrative Clipを開封

Narrative、発音でいうとナレーティブというのは、「話、物語」という意味以外に、「語り口、口調」あるいは台詞などの対話に対する「地の文章」という意味があります。

この最後の意味が Narrative の本質をついています。私たちが意識的にすること、交わす会話、記憶している事実に対する背景を成すように、Narrative は淡々と状況描写を30秒に一度撮影し続けます。

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そんな Narrative は大きさにして36mm四方、厚みは9mm、重さは20gとほとんど感じさせません。箱を開いてみても、入っているのは本体と短いケーブルのみ。

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手に持ったところがこちら。本体はそれなりに大きいのに対してカメラの部分が小さいので、カメラっぽくないのがいいですね。

隠し撮りをするつもりはありませんし、誤解をうけないように注意して付ける必要があるわけですが、わざわざカメラっぽさを前面に出して警戒されるデザインでもいけませんので、よいバランスがとれているといっていいでしょう。

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説明書もイラストで簡単になっています。本体にはスイッチなどは存在せず、上に向けている間は常に撮影が行われます。

撮影したくない場合は下をむけるか、ポケットやカバンのように暗い場所に入れれば、むだな撮影は行いません。

また、本体を指で軽く叩くと、その瞬間が撮影され、お気に入りに追加されます。

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本体は防水ではないものの、多少の雨なら問題なく動作します。こちらが正面をむいたところ。

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そしてこちらが背面。大きなクリップがついていますので服に安定して付くものの、落としてしまったという声もいくつか聞きますので、ひもをつけておくなどの工夫をしようかなと思います。

アプリとの連携が手軽さを生み出す

Narrative の手軽さを引き出しているのは、連携しているアプリです。Narrativeから吸いだした写真はクラウド上に保管され、iOSと Androidの両方がリリースされているこのアプリで閲覧します。

データの補完は初年度は無料で、2年目からは $9/月と多少高めの値段設定です。というのも、Narrativeから出てくるデータ量がなかなか膨大で、しかもそれを意味のあるログにするために自動で編集が行われているからです。

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アップロードされたデータはある程度のまとまりの時系列となり、まとまりごとに流れを再生したり、任意のフレームをカバー画像に選ぶことができます。

デフォルトだとこの再生は意味のなさそうな写真を除外することで枚数を減らしていますが、この “Trim Moment” を無効にするとすべての写真をみることができます。除外されたフレームも、ここで「お気に入り」に追加すればトリムしている場合に表示されるようになります。

写真の解像度は5Mピクセル。4:3のアスペクト比で、一昔前の携帯電話の画像のようです。

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もちろん選んだフレームを削除することも、SNS に送信することも、カメラロールに保存することもできます。

Narrativeが目指す8つのビジョン

さて、たしかにかっこいいカメラであり、アプリなのですが、Narrative Clipが目指しているもの、もたらそうと考えているものは何でしょう。

Narrativeのウェブサイトには、次のような8項目の、このカメラとウェブサービスが目指すべき方向性が明示されています。

  • Memory「記憶」:より多くのことを記憶できるようにする

  • Re-Experience「追体験」:自分の、そして他者の記憶をなるべくそのままに追体験できるようにする。

  • Surprise「驚き」:偶然撮影されている瞬間に多くの発見があります

  • Being Present「その場を楽しむ」:もっとも貴重な瞬間を写真を取るために費やさずに、それはNarrativeにまかせてしまう

  • Life improvement「生活改善」:毎日のルーティンを浮き彫りにして、改善の余地を可視化する

  • Preservation「保管」:日々の記憶を保管しておき、あとで見返すことができるようにする

  • Control「管理」:すべての写真にアクセス可能でありながら、利便性を保つ

  • Convenience「簡単さ」:ユーザーの手間を最小限に、これらを達成する

そして手にした Narrative とそのアプリは、おおむねこれを達成しているように思います。

たとえば上の左側の写真ですが、きっと家のどこかの写真なのですが自分ではいったいどこなのか見当もつきません。目には写っているのですが、意識していない風景なのです。ここには偶然性があり、記憶の立体化があり、追体験を越えたなにかがあります。

日本では10年もまえにブログみたいもん!のいしたにまさきさんらが手がけたライフスライスというプロジェクトが存在し、デジタルカメラでの自動撮影とその集約という面でノウハウがあったのですが、1. カメラの小型化の実現、2. クラウド技術の進歩、そして 3. スマートフォンの広がりという時代の変化によって、やっと万人に使えるライフログカメラが誕生したといえるでしょう。

問題はここからです。

今のところ、これらの画像は私の目でみることでしかその意味を再構成できません。しかしこの膨大な写真に、機械のメスが入るとどうでしょう。

いまの画像処理の技術を使えば、これまで出会った人の顔をすべてインデックス化することも可能でしょう。写っている被写体をある程度区別して人生の索引を作ることだってできるはず。

この情報の受け手は機械だけではありません。私の人生の膨大なデータは、いずれ私の子供たちに提供するつもりでいますが、親というものの存在を一人称的に知ることができる彼らにはどんな印象が残るのでしょうか?

ライフログは、これまで記録されずに否応がなく時に押し流されていた情報が自動的に蓄積してゆくところに独特の価値があります。でもその真価は、まだまだこれから問われないといけないものなのです。

でもまあ、そんなことはさておき、これは楽しいカメラです!

まずはしばらく、このNarrative Clipとともに過ごしてみて、この楽しさを味わってみようと思います。

p.s.

Narrative の動画も、このガジェットがもっているポテンシャルをよくまとめていますので、ぜひご覧いただければと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。