いしたにさん、勝間さんの「Amazon KDP完全ガイド」イベントで心に火がついた
イベントで得られた情報でなく、意気に感じて心が高揚するイベントというのはちょっと久しぶりのことでした。
みたいもん!のいしたにまさきさん、勝間和代さんによる、『「個人出版」を語り尽くす! 『Amazon Kindleダイレクト出版 完全ガイド』出版記念トークイベント』に参加しました。
実は勝間さんのトークを拝聴するのは初めてだったのですが、評判通りの回転の速さとエネルギーで、最前列に座っていて肌感覚で一度くらい室温が上がったような気がしました。
イベントは Togetter にまとめられていますので、つぶやきの流れを追うだけでだいたいは把握できると思います。
リンク:「個人出版」を語り尽くす! 『Amazon Kindleダイレクト出版 完全ガイド』出版記念トークイベントのまとめ、これが勝間無双か!
しかし二人のトークには、ちょっとだけ見かけ通りではない部分が潜んでいます。表向きのいわゆる「勝間無双」の部分に目を奪われていると、その隙間に黙示されていた大事なポイントを見逃しかねないのです。### 10万字読んで5000字アウトプットする
その大事なポイントの部分にいくためにもまずイベントの流れを追いましょう。今回のイベントではいくつかハイライトがありましたが、次の写真がその一つです。
もともとこのスライドの中心には「KDP」という文字が入っていて、ブロガーと作家、ウェブと紙の交点に KDP が位置していることを意味していました。
そこにワンコイン文庫で新作を発表し続ける勝間さんの存在がすっぽりと収まります。なるほど、「勝間さん」というさまざまなコンテンツを生み出せる個人の活動がさまざまに広がるなかで、それを結びつける場所に KDP はあるといってもいいのです。
そう、これ。これなんだよ…。自分がプラットホーム化するということ #KDPGUIDE twitter.com/mehori/status/…
— M. E. Horiさん (@mehori) 2013年5月31日
この交点には誰の名前があってもよいわけですが、その人によって活動のバランスと、そのなかにおけるウェブや紙、KDPの意味合いが変わると読むわけです。
もう一つのハイライトはこちら、勝間さんによる「クオリティの高い文章を生み出すための方法」で、いわゆる一日に10万字をインプットし、5千字をアウトプットするというイン・アウトのバランスです。
ハードルが高いと思うかもしれませんが、インプットは本だけでなく、ブログなども含めてよいでしょうし、アウトプットはソーシャル・メディアへの書き込みも含んでいます。10万字というのは、最近の文庫だと150-170ページほどになりますね。1時間読書に当てる時間があるなら読む習慣のある人なら読める分量です。
ただこの話、「勝間さんはやはりすごい」「超人的でないと売れるKDP本なんて出せない」という文脈で読むと少し損かもしれません。
本当のクオリティの勝負
この話は、「10万字読め!5千字書け!話はそれからだ!」というマッチョな話と言うよりも、勝間さんがクオリティを維持するために実践していることを述べたに過ぎません。
KDPの場合は誰でも参入が可能であるため、企画の段階で振り落とす出版社の存在も、クオリティを高めるために助力してくれる編集者の存在も普通はありません。つまりクオリティの産出の責任は著者本人にすべてかかってくるのです。そのためにできることはなにか? という話なのだということです。
たとえばそれを望むなら、私も勝間さんと同じロジカルなクッキングの分野で本で出すことが可能です。「出版社が取り合ってくれない」という障壁はなくなっています。
そうすると、あとは内容とマーケティングの勝負。勝間さんとガチンコの勝負を挑むことが、今すぐできるのです。
勝間さんの「無双」はここでもクオリティで誰にも負けるつもりはないという意気込みであり、フィールドがフラットであるがゆえのファンティングポーズといってもいいでしょう。
それは本になるのか
KDPでもうひとつ破壊されたものが、「それって本にしていいの?」という判断基準です。
ツイッターのようなソーシャルメディアで「誰をフォローする?」という形で編集権が読み手に移ったように、なにをもって「本」とするのか? という判断は著者の側に移りました。これは凄まじく大きな意味があります。
先ほどの話題と並行しますが、以前は本は限られた作家や教養人や学者にしか出せませんでした。そして本の内容も学術論文がそうであるのと同じように、something newism、つまり重複なく人類の知的アーカイブへの追加がなされることを前提としたものでした。資源も人的リソースも希少でしたからね。
でもKDPではそのあたりの制限がありませんので、既存の「本らしさ」がなければいけないということもありませんし、他の人と同じテーマでも(剽窃でなければ)かぶること自体に悪いことはありません。
質疑応答 @mehori 「著者にとって編集権が出版社から自分のところにきた。何を本にするか、どこからどこまでを本にするか、一般の人はどこを落とし所にしたら良いか?」勝間「それは自費出版と同じ問題」「編集の問題?」「本当に良ければ自費出版させない売れるから」 #KDPGUIDE
— コグレマサトさん (@kogure) 2013年5月31日
このあたりをちょっとわかりにくい質問にしてみたのですが、勝間さんにはそれはコンテンツの問題とスパっと斬られました。つまりKDP本は本の抽象化なのではなく、コンテンツに対するパッケージングだという発想の転換は、大きな意味を持つといえるのです。
勝間さんのワンコイン本のタイトルも、どこかこれまでの出版物の境界線を押し広げるような、メルマガから拡張されたような場所を狙っていることがわかります。
逆に、テーマが自由である分、そのテーマを我が物とできるかは、商業出版以上の努力が必要ともいえます。無双には無双するだけの理由があるわけです。
まとめ
今回本当に良かったのは、勝間さんが実に楽しそうに、面白おかしく話しているのを目の前で聞くことができた点でした。
Togetterを読むだけでは、参加者の気圧された雰囲気がでているかもしれませんが、実に面白くて、楽しい話だったのです。
そしてKDPという分野で先行者として走る人が実践しているノウハウは、常にインプットに気を使い、アウトプットを心がけるという基本でした。
それをこうしてイベントであっさりと話して下さるのはなんという気前のよさなのか。「私はこうしていますが、みなさんはどうされますか?」という問いかけさえ行間に感じられて、帰ってからも私は少し興奮気味でした。
いしたにさんのKDP本を読み今日の勝間さんの話を聞いていると、KDPっちゅうのは「考えるな、書け」ということでしょうか。悩むならまずは出して世に問うて‥‥というのを繰り返した方がいいのかな、と。 #KDPGUIDE
— コグレマサトさん (@kogure) 2013年5月31日
そう! こういう球を投げてよこされたら応えないほうがどうかしています。やります、やりますとも。これは楽しくなってきた…!
というわけで、いしたにさん、勝間さんには楽しい、心に火のつくイベントをありがとうございました!
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