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自分を変えて、世界を変えよう: J.D. Roth 基調講演 #WDS



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World Domination Summitで一番期待していたのが、実は最後の基調講演に登場した J. D. Roth です。

JD は借金だらけだったころに「少しずつ豊かになろう」をテーマに立ち上げたブログ、Get Rich Slowlyで有名なファイナンス・ブロガーです。本ブログでも何度か紹介しています。

私が JD の何が好きかというと、普通の人が心の豊かさを手に入れるためにできること、普通の人が自分を変えるためにできることについて一歩一歩、確実に書いている点です。その JD が「自分を変えること」をテーマに話すのですから、長年のファンとして注目せずにはいられません。

「僕は内向的で、スピーチ向きではないんだ」こう言いながら、緊張した面持ちで壇上に登場した JD は原稿にたびたび目を落としながらも、常にほほえみを絶やさずに話し始めました。

それは彼の人生の物語でした。

内向的な少年とナイフ

子供だった頃、シャイで人付き合いが苦手だった JD はいわゆる nerd (オタク、変わり者)の友人とばかり遊んでいました。それ自体はとても楽しく、コンピュータについて詳しくなったり、コミックを読みふけったり、友人と遊ぶといってもD&Dをするという日常でした。ああ、私とまったく同じですね(笑)。

彼はそんな自分を「普通」だと思っていましたが、周囲の人はそうは思いませんでした。時間がたつにつれて、クラスの中でも「変人」扱いされ、体育の時間には邪魔者扱いされ、学校にもってくるD&Dの本を揶揄されるようになりました。ああ、これも私とまったく同じですね…。

そんなある日、数学の授業の時間に後ろの座っている女の子がペンで何かを JD の背中に書き始めました。JD がやめろといっても、女の子はやめません。周囲の子はクスクスと笑うばかりです。

休み時間になり、洗面所にいった JD は背中を鏡で映しました。そこにはブロック体の大文字で “DICK” 「まぬけ」と書いてありました。彼自身は自分のことを普通だと思っていましたが、周囲は彼を「まぬけ」だと思っていたのでした。そしてその認識はしだいに JD 自身に沈み込みました。

この出来事があった日か、あるいは別の日だったか、トレーラーハウスの家に帰ってきた JD は食器台の引き出しを開いて鋭いナイフを見つけます。「これで自分を殺せば、すべてを終わらせることができる」。

幸いなことに、度胸が足りなかったので自殺をすることはありませんでした。しかしそのとき、一つの考えが彼の胸に宿りました。彼は「まぬけ」ではない。それは自分が知っている。でも周囲の人はそう思っていない。それならば自分を変えるんだ。

すべてに「イエス」という

高校に入った彼は、戦略的に自分の行動を変え始めます。ビジネス・クラスに参加し、演劇と合唱に参加し、サッカーとテニスを楽しむなど、やってきた機会に対してすべて「イエス」と答えるようにしました。

その時点で自分について不満に思っていることがあるなら、それをすべて入れ替えていったわけです。その結果、人生は面白くなりより幸せになったのでした。14歳で彼は自分のすべてをいったん作り替えてしまったのです。

転機は大人になったときもやってきました。仕事を持ち、結婚したころになって、JDはまた惰性で生きるようになりました。肥満になり、テレビをみるかゲームばかりをするようになり、見栄もあって買った新しい家とその修繕費で大きな借金をしてしまいます。

彼がお金に困っていることを知った友人が借金を減らすためのハウツー本を紹介してくれたのが変化のきっかけになりました。

短期間にこうしたハウツー本を十数冊読んだ彼はその知識と、それを適用した経験をブログ、Get Rich Slowly に書き始めます。彼の等身大の体験談と、自分の欠点をも包み隠さない真摯な書きぶりはすぐに人気を呼び:

  • 1年以内に、ブログの収入が本業に追いつきます
  • 18ヶ月で借金を全て返済してしてしまいます
  • 2年でブログ自体を本業にできるようになります
  • 3年で Get Rich Slowly を売却(現在もチーフライターとして参加してますが)

という変化が生まれます。しかし変化はそれだけにとどまりませんでした。

上記の金銭的な成功は偶然や幸運も作用したことでしょう。しかしそれ以上に、変化を期待して行動したことは、さらにさまざまなことを彼にもたらしました。体重を減らし、さまざまな国に旅行し、スペイン語を学ぶなど、「変化できる」という自信が行動を促すようになったのです。

近道のない、変化を生み出すための3つの方法

「でも僕の話はもういいだろう。問題は、君たちが自分を変えるための手伝いができるかどうかだ」そう言って JD は3つのルールを説明しました。

1. Power of YES

何かを変えようと思っても自信がなかったり、「もう少し準備しなければ」と恐れながら思っていた時期が JD にもありました。そんな彼の目を開いたのが舞台で即興のパフォーマンスをするインプロビゼーションについての本を読んだときでした。

即興で演じなければいけない俳優たちは、とにかく目の前の状況を受け入れて、そこからスタートしなければいけません。もうちょっと反応しやすい展開や、期待通りの受け答えをまっていたら、流れはそこで断ち切れてしまいます。

「周囲の人がいうことに YES ととりあえず答えたらどうなるだろうか?」「流れを断ち切るのをやめたらどうなるだろうか?」こう考えて、ライフルを撃つことからヨガを実践したり、移民にファイナンスについて講義したりといった活動をはじめられるようになったといいます。こうした小さな変化はやがて大きな変化を促すようになります。

まずは周囲からやってくる変化の種を受け入れるというわけですね。

2. Power of Focus

もちろん人はみな一日に24時間しかもっていません。全てのことを変えようと思っても、とても時間が許さないという場合が多いでしょう。そのためにも、基本中の基本ですが、「大きい石」の考え方と、Hell Yeah! ポリシーが大事になります。

「大きい石」とは、瓶に石を詰める際に細かいものから入れていたのではなかなか収まらないのに対して、まず大きな石から入れればすべてが収まるというメタファーです。重要事項をます最初に実行することで変化は加速します。

Hell Yeah! ポリシーとは、なにかを提案された際、ちょっとだけ面白いものと、「おっしゃああ!やってやるぜ!」という気持ちになれるなれるものの二つがあるなら、常に後者を選べという考え方です。

究極的には実践したことの量ではなく、最も効果的なものを変化できたかが結果につながるからです。

3. Power of Action

Talkerになってはいけない、と JD はいいます。Talkerとはすべてのものごとについてどうやら解決方法や計画があるみたいで、それについて周囲に話すことはしますが決して実践に移せない人のことを指します。Talkerはどんなにすばらしい計画があるかはたくさん語りますが、奇妙なことにその計画を実行には移しません。問われれば、さまざまな言い訳ばかりがかえってきます。

「そうだよ、長い間、僕は Talkerだったんだ」と JD は認めます。

でもどんなに小さなことでもいいから行動を始めれば、行動が行動を生み出してくれます。でもそれができるまでは Talker に過ぎません。「近道はないんだ、小さな赤ちゃんのような一歩から始めること、これがすべてだ」

自分を変えよう、世界を変えよう

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変化は多くの場合、周囲との戦いでもあります。世界は変わることを欲していません。あなたが一人が変わろうとすると、さまざまな抵抗があることでしょう。

しかしそれでも自分自身の考え方を、行動を変えることができた人には、自分自身の世界観自体が変わるという報酬がまっています。そこからは、さらにその変化を他の人に伝えてゆくべきだと JD は訴えます。

「世界には変わりたいと思っていても、さまざまな境遇にあってそうできないひとが大勢いる。自由意思でさまざまなことができる私たちはとても幸運なんだ」

たとえば JD は自分のファイナンスの知識を移民に伝えることで経済的に困っている人を助けることをしています。こうしたボランティア活動がスペイン語を学ぶきっかけとなって、さらに自分自身を変えてゆくわけです。

これらは小さなとりくみかもしれません。しかし確実に自分の周囲から少しずつ世界は変わり始めます。これがクリス・ギレボーのいう、World Domination でもあるのです。

内向的だった一人の少年の決心が、大人になった彼を導き、たとえささやかでも世界をかえてゆく。これこそ「人生」のハックとしての「ライフハック」じゃないでしょうか。

「友よ、『イエス』というんだ。集中し続けて、アクションをおこせ。自分を変えたなら、次は世界を変えよう」

■ 常識からはみ出す生き方
講談社特設ページ


著者について

堀 正岳

「人生を変える小さな習慣」をテーマとしたブログ、Lifehacking.jp 管理人として、仕事術、ライフハック、テクノロジー、文具、ソーシャルメディアなどについて執筆中。2011年アルファブロガー・アワード受賞。Evernote ライフスタイルアンバサダー。ScanSnapアンバサダー。この他のブログに、ライフ×メモ 、Climate+を運営しています。