人生を簡単化すれば、どんな風にでも変わることができる。Zen Habits の Leo Babauta 基調講演 [WDS]
怒涛の勢いでかけぬけたポートランドの週末が終わり、なんとかアメリカから帰国しました。これからいくつかの記事でWDSの思い出を残していきたいと思います。
WDSには大勢の著名なブロガーや著者が登壇していましたが Zen Habits の Leo はそのなかでも最も楽しみにしていたスピーカーでした。
ちょっと昔話をすると、自分の処女作である情報ダイエット仕事術 が刊行されてしばらくしてからLeo の減らす技術 The Power of LESS の日本語訳が刊行され、小飼弾さんに同じブログ記事で紹介していただくといったこともあったので、ちょっとどころでなく意識しているブロガーでした。
あまり人前で話すことがないLeoが、WDSの聴衆の前で彼の人生の物語と、その方向性をかえた「習慣の力」について語ってくれました。
簡単化することで人生は変る
「ブログを始める前、俺は体重オーバーの、喫煙のやめられない、借金にくるしむ絶望する男だった」こんな言葉でLeoは驚くほど素直に数年前の自分を振り返ります。そんな人は大勢いると思うのですが、少なくとも彼にとっては「何かを変えなくては」と思うきっかけだったのです。
彼が始めたのは「毎日の習慣を少しずつ変える」という取り組みでした。たとえば毎日5分でいいので体を動かす、時間の使い方を見直して無駄なものを取り除く、こうした方法で「人生の簡単化」を行った結果、体重をコントロールできるようになったばかりか、マラソンを走り、禁煙を実行し、ベジタリアンの食習慣にシフトするといった大きな変化を生み出すことが可能になったのです。
習慣化のこつを彼はいくつかのポイントにまとめています。
-
トリガーを理解する: 目覚めるとコーヒーを飲む、会議が終わると同僚とタバコを吸う、というように、驚くほど我々の行動には自動化した部分がある。この「A のあとは B」と続く、A の部分、「トリガー」を避けることで習慣を壊す要因に対して先回りすることができる。
-
フィードバックを利用する: 運動がつらいなら、運動をしないことが「楽」というポジティブなフィードバックを与えてしまう。これに対抗するには、実行しないことが不可能なくらいに行動を小さくする(1分だけ外を歩くことから始める、など)のと、友人などを巻き込んで求める行動に正のフィードバックがかかるようにする
-
一度に一つの習慣にとりくみ、5分だけやる: たとえばランニングなら、15分走れるようであっても、5分しか取り組んでいない時期には5分で止めておく。一度に複数の習慣に取り組んだり、急に量を増やすとかならず失敗が待っている。
そして習慣を作りながら、人生を必要な部分だけにそぎ落としてゆきます。そうすれば、時間の余裕も、心の余裕もうまれるというわけです。
目標そのものもダイエットする
慣れるまでは、「一つの目標」を目指して習慣化をおこないますが、いま Leo が実践しているのはそもそも「目標自体をダイエットした人生」だそうです。なにか明確な目標を抱くのではなく、毎日やらずにはいられない行動だけを繰り返すところまでいけば、いわば「目的地のない、旅そのものが目的」の境地にまで人生を簡単化できると Leo は語ります。もっとも、この「No Goal」の状態は、彼もいま練習中なのだということでした。
Leoの語り口は、訥々として、技巧のない素朴なものでした。パンチラインの効いたスピーチに比べるとどこか物足りない風でさえありますが、でも彼が信奉する老子とはこのような人物であったことを思い出させます。「学を絶てば憂いなし」で始まる老子上篇の一節にはこのようなくだりがあります。
衆人は煕煕として太牢を享くるが如く、春に台に登るが如し。我は独り泊として其れ未だ兆さず。嬰児の未だ孩わざるが如し。累々として帰する所なきが若し。衆人は皆余り有るに、而るに我は独り遺えるが若し。我は愚人の心なるかな、沌沌たり。
まるで自嘲気味に老子は自らについて語っていますが、その実は小利口な世俗から離れて真実に生きる人の孤高の誇りがこの一節にはみなぎっています。
多くの人が「もっと夢を叶えよう」「もっとたくさんのものを手に入れよう」「もっといろいろなコトを実践しよう」と自らをインフレーションさせる方法で「自己実現」を図ろうとする中で、Leo のように自分にとって必要なものだけに減らしてゆくことでそれを実現する人はきっと少ないでしょう。
しかし実はそれが最も簡単な方法であり、実のところ唯一の方法でもあるのです。
人生をダイエットしてみませんか?