速読術の基本中の基本、頭の中の「音読」を抑える方法

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本を読むときに、頭のなかで音が再現されていませんか? 無意識に舌を動かしたり、のどの奥の方で言葉を紡ごうとしていませんか?

もしそうなら、Rapid Eye Movement とか、視線誘導法だとかいろいろな速読法すべてを投下したところで速度は向上しません。「声にならない音読」をやめることは、どんな速読の本にものっている「速読法の基本」ですね。

そうはいってもなかなかこの頭の中の声は消せないわけで、最近本家 Lifehackerの記事で「aeiou」を唱えることでこれを打ち消すとよいという話題が紹介されていました。あえて、無意味な文字列で口を忙しくさせておき、頭は言葉の意味を追い求めて疾走させるわけです。

これは英語では「aeiou」つまり「えーいーあいおーゆー」という発音の並びがあまり言語的な意味を為さないないからできることでもあります。もう一つの手法「1,2,3,4」を唱えるというのは、行を読むときのペースを作っているわけですね。ビートを刻んで、次第にそれを速くしてゆくという手法です。

Lifehacker.jp の記事はこれを訳して「あいうえお」を唱えるとなっていました。たしかに効果がありそうなのですが、日本語の特性上「あいうえお」という発音には「愛」や「上」という形で意味化できてしまう部分があるので人によってはむしろ心の音読を促進してしまうかもしれないなーと、老婆心ながらちょっと心配。

慣れてくればそんなこともないのですが、まだ慣れてない人のために、「無意味言葉」を使う手法と、舌を利用した方法について紹介しておきたいと思います。

「マントラ」と「舌ベロベロ」法

私が高校のときにおそわっていた心理学の先生は、ちょっとした楽しみに生徒に催眠術を施したりするとんでもない人でした。

その先生が速読について教えてくれたのは**「意味化できない呪文のような言葉」を唱えた方が効果がある**ということでした。

彼が紹介したのは「inger」(インガア)という催眠術用の無意味言葉でした。

実際、マントラのようなこの言葉を頭で唱えつつ目でページを高速にスキャンすると、音読をはるかに超えるスピードで読めたのでした。もちろん、無意味言葉の音と、読んでいる部分とが混じり合わないようになるまでに 30 分ほどの訓練期間は必要でしたが。

そうして口をもごもごさせているうちに発見したのは、口のなかで「ら、ら、ら」といってるように軽く舌を上下に動かしているだけでも同じように心の音読を抑制して、目のスキャンを高速化できるということでした。

私はこれを勝手に「舌ベロベロ」法という身も蓋もない呼び方でずっと続けてきました。

本を読むときいつも、ではありません。心のなかで「音読」を始めているな、ページあたりの読書スピードが通常よりも遅いな、と感じたときに、車を暖機させてから走らせるように行う儀式なのです。

心で無意識に始まっていた「音読」の声が静まり、読書スピードが高速になってきたら、舌を動かすのをやめ、目の動きだけに集中していきます。

でもスピードはすべての本で同じではない

こうした読書時の儀式がときおり必要になるのも、本の種類によって読書スピードは異なるからでもあります。

これはなかなかほとんどの速読書が語ってくれないところですが、いくら速読術でも、慣れない漢字や表現を高速で読めるようしてくれることはありません。

難しい言葉の多い古典ともなれば、おのずとその人の経験レベルにあわせた最適な「速読」スピードが決まってくるわけです。ビジネス書を一日200ページの速度で読めるからといって、「純粋理性批判」を同じ速度では読めません。読めると主張する人は、何か大切なものを忘れてる気がします。

それでもこの「心の音読」がある状態が最低速度の状態ですので、これを打ち消すだけでも、どんな本の場合でもある程度の速度向上がみこまれます。

こうしたテクニックで**「頭の中の音読」が消えてゆくと、その本の種類に最適なスピードが浮かび上がってきます。**まずはこのスピードを発見し、維持するだけでも、何もしないよりも相当速くなり、しかも理解度を下げずに読むことができます。

速く読めることが = 必ず良いこととは思わないのですが、「最低スピード」を向上させる方法としてこうしたテクニックを利用していただければと思います。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。