「時間が見える」というのは「時間の物差し」ができること

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今週の火曜、シゴタノ!に「まるで時間が目に見えるようになる Mac のアラーム・アプリ3種」という記事を寄稿したのですが、ここではなぜタイマー・アラームを使うことが仕事の効率化につながるかは自明のこととして触れていませんでした。

でも記事をアップしてから、タイマーを用いた時間効率化を「時間が見えるようになる」と表現したことについては説明が必要だなと再考していました。

ここでいう「時間が見えるようになる」というのは、時間に対する感覚が鋭くなると言い換えてもよいものです。

時計で正確な時間経過を測らずに行動すると、私たちは「あと10分ほど」「あと30分ほど」といった、あいまいで、かつちょっと長めの区切りをもうけるようになります。それは「あと1分」や「あと30秒」というのは、感覚として短すぎて、あっという間に過ぎてしまうような気がしてしまうからです。

こうしたせいもあってか、Google Calendar のデフォルトの挙動が 30 分刻みなのは有名な例だと思います。

それに対して、常日頃タイマーをセットしていると「あと2分」と「あと3分」が区別できるようになってきます。冗談ではなく、時間の物差しの目盛りが短くなったように「あと2,3分」ではなくて、2分でできることと、3分でできることをより分けられるようになるのです。

こうした時間感覚を意識できるようになると、割とずぼらな私のような性格でも作業が自然と加速してくるという不思議な効果が得られます。というのは、「このタスクを 2、3分でやろう」ではなく、「このタスクを 100 秒でやろう」という見積もりと実行のサイクルが回せるようになるからです。

これは決して「無理をすることを覚える」というのではありません。100秒で足りなかったなら素直に 200 秒にシフトしてよいのです。ただ肝心なのは、100 秒で済むことを「2、3分でやろう」と考えていると、パーキンソンの法則のせいで常に3分で行うようになってしまい、その分無駄が生じてしまうという、この一点に尽きます。

タイマーのアプリや、ポケットタイマーがあるなら、練習としてぜひ計測してもらいたいのが以下の3つです。毎日、いったいどれだけの時間を使っているのかを意識できると、それだけでメリットが多くあります。

  • **メール処理の開始時間・終了時間: **メール処理は「思った以上に時間がかかった」という作業の代表例でしょう。2,3日でいいので、この時間を計測するだけでも、自分のメールの処理スピードが把握できて改善の糸口が見えてきます。

  • **ToDo に取りかかった時間と、完了させた時間:**これがけっこう大事です。ちゃんとやることをリストにしていても仕事が先送りされている状況を調べてみると、簡単な作業の中に不可能なくらい難しいタスクが混じっていてそれがネックになっていることがあります。タイマーをつけるか、あるいは経過時間をはかることで、「あれ? 1時間過ぎたのにリストを2項目も達成できていないぞ」といった可視化ができれば、ToDo をみなおすきっかけになります。

  • **情報を集めるためにブラウザを開く前に、15分タイマーをセット:**私だけかもしれませんが「情報集めをしよう!」とブラウザに向かうときになぜか心が浮き浮きしているのは、どこかで「さあ、時間制限なしに気が済むまでネットで情報集めをする時間の始まりだ!」という後ろ向きな喜びが生まれているような気がします。いつまでかかるかわからない仕事、見通しがつかないものであればこそ、「10分」「15分」といった細かい単位で区切りをもうけて作業をした方が進捗が、あるいは停滞している様子が数字で把握できるようになります。

先ほどから Minuteur は3度アラームをならしていて、「そろそろ原稿用紙3枚くらい出来ていると調子いいよ」とやんわりと教えてくれました。現時点での文字数は 1723 文字ですので、普段のペースよりも 40% ほど早く書いている計算です。

毎日こうした数字を測るのはたいへんですが、時々思い出したときに2,3日「自分は今何にどれくらい時間を使っているのだろうか」、「自分の時間の目盛りはどのくらいなのだろうか?」とレビューしてみると多くの改善点が見つかって楽しいです。

タイマーアプリや、キッチンタイマーをもっている人は、ぜひ一度試してみて下さい。

堀 E. 正岳(Masatake E. Hori)
2011年アルファブロガー・アワード受賞。ScanSnapアンバサダー。ブログLifehacking.jp管理人。著書に「ライフハック大全」「知的生活の設計」「リストの魔法」(KADOKAWA)など多数。理学博士。